「負のスパイラル」断ったデータ分析、大改革の具体策を国内がん医療にも
2016.4.7.(木)
「提供している医療は本当に良いものなのか」「より良い医療を提供するための具体策は」――。岩手県立中央病院の望月泉院長は、現場の努力も虚しく、経営難に喘いでいた当日を振り返ります(詳細は『岩手県中央病院、累損57億円からの大改革―「医療・経営の質」高めたデータ分析』)。
「負のスパイラル」を断ち切った要因の一つは、「ベンチマーク分析」でした。累損57億円から奇跡の大改革を支えたベンチマーク分析に大きな期待と感心を寄せる望月氏は今、このソリューションを広めて、国内のがん医療の質向上を目指しています。その活動の軸となるのが、国内のがん拠点病院の有志たちが集まって誕生した「CQI(Cancer Quality Initiative)研究会」(最新の会合情報はこちら)です。
会員数100医療機関を突破
CQI研究会は、参加施設の診療プロセスについてDPCデータなどを用いて分析し、病院間比較を行った結果をフィードバックすることで、各種改善活動を促しています。完全会員制の組織で、取り扱うデータは、会員間に限り、病院名を明かして分析します。そのため、参加病院がさまざまな診療プロセスで競い合いやすい環境となっており、質の改善に向けた情報やノウハウの共有の場となっています。分析はGHCが担当しています。
岩手県中では、手術の術前・術後の平均在院日数、画像や注射など医療資源投入量などの重要指標を、全国平均や優秀な他病院の数値とベンチマークし、比較・検討することを通じて改善してきました。明確なデータに基づく改善活動は、医師の理解も得やすく、現場のモチベーションを向上させ、全体的な医療の質向上にも直結することを確認してきました。こうした改善活動が、より多くのがん拠点病院で実施されることが、CQI研究会の大きな目標の一つです。
直近の第11回CQI研究会では、会員数が108医療機関に達しました。代表世話人を務める望月氏は、「日本のがん医療をリードする立場にあるがん拠点病院の多くが当研究会に参加し、がん医療の改善のポイントを共有し合うことは、がん拠点病院を任されるものとして、大変意義あること」と、さらなる有志の参加を呼びかけています。
第12回CQI研究会、参加締め切り迫る!
8月27日に開催される第12回CQI研究会では、胃がんと乳がんをメインテーマに、サブテーマに食道がんを取り上げます。がん臨床指標アンケートも実施し、米国で普及している臨床指標の軸での分析も実施します(詳細は『高品質ながん医療を行う米国の病院が参加する「QOPI」とは』)。また、会当日はこれまで以上に会員間での活発なディスカッションに重きを置いた運営を試みます。
新規会員に対しては、前回の会合から導入した「CancerDashboard」を引き続き無償配布します(詳細は『開発責任者が語る、がん分析ツールを開発して無償配布するたった一つの理由』)。「CancerDashboard」は、GHCが「改善のポイントが瞬時に分かる」をコンセプトに開発した次世代型病院経営支援ツール「病院ダッシュボード」の一部機能を、がん医療の分析用にカスタマイズしたソフトウエアです。開発責任者の井口隼人マネジャーは、「データ分析を簡単に、かつ、無償ツールで実施することができるようになれば、CQI研究会の活動をさらに推進するための一助になり得る」と話しています。
第12回CQI研究会の参加締め切りは、4月26日(火)です。自病院のがん医療の質向上はもちろん、国内のがん医療の質向上にご興味がある全国のがん診療連携拠点病院の関係者の皆様は是非、参加をご検討いただければと思います(申し込みページはこちら※既存会員の申し込みも必要です)。