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緩和ケアの施設間格差の是正や、緩和ケア研修会の受講推進を―緩和ケア推進検討会

2016.4.12.(火)

 緩和ケアチームや緩和ケア外来の実績について、がん診療連携拠点病院間でも格差が大きなことから、他施設との交流や実習を伴う実地研修の実施が必要ではないか。また、緩和ケア研修会について「受講率9割以上」という目標を達成するために、単位型研修や関連団体の認定医制度との連携などを図るべきである―。

 厚生労働省の緩和ケア推進検討会は、8日に公表した報告書の中で、こういった提言を行っています。

 第3期のがん診療連携推進基本計画の中でも、緩和ケアの推進は継続して重要事項になるため、今後の具体的な方策などが注目を集めます(関連記事はこちら)。

第3期がん対策推進基本計画に向けた提言

 わが国のがん対策は、概ね5年を1期とする「がん対策推進基本計画」に沿って進められています。現在、第2期の基本計画(2012-16年度)が動いており、第3期基本計画の策定に向けた検討が本格化しています(関連記事はこちら)。

がん対策基本計画の概要、(1)がん予防及び早期発見の推進(2)がん医療の均てん化の促進など(3)研究の推進など―の3点を基本施策に据えている

がん対策基本計画の概要、(1)がん予防及び早期発見の推進(2)がん医療の均てん化の促進など(3)研究の推進など―の3点を基本施策に据えている

 第2期基本計画の中では、「がんと診断された時からの緩和ケアの推進」が重要な柱の1つとなっており、厚労省は「緩和ケア推進検討会」を設置して具体的な方策を検討しています。

 検討会は2013年8月に第2次中間取りまとめを行い、そこでは(1)がん診療連携拠点病院に緩和ケアチーム、外来緩和ケア体制、緩和ケア体制(都道府県拠点病院のみ)の整備(2)拠点病院が中心となった緩和ケア研修会の開催と、がん医療に携わるすべての医療従事者の研修受講―などを提言。これらは拠点病院の指定要件にも盛り込まれました。

緩和ケア推進検討会の第2次中間取りまとめ(2013年8月)

緩和ケア推進検討会の第2次中間取りまとめ(2013年8月)

 検討会では、今後策定される第3期基本計画に向けて、現状の課題を整理した上で更なる緩和ケアの推進に向けた提言を行っています。

緩和ケアチームなどは設置されているが、実績には拠点病院間で格差も

 前述のように拠点病院には、緩和ケア体制の整備が義務付けられています。具体的には、「緩和ケアチームを設置し、週1回以上、定期的な病棟ラウンド・カンファレンスを実施、苦痛のスクリーニングや症状緩和に努める」「都道府県拠点病院では、緩和ケアセンターを設置し、定期的ながん看護外来や地域の医療機関などと連携した月1回程度のカンファレンス実施」などが必要です。

がん診療連携拠点病院の新たな指定要件に、「緩和ケアチームの設置」や「苦痛のスクリーニングの実施」「緩和ケア研修の受講促進」などが盛り込まれている

がん診療連携拠点病院の新たな指定要件に、「緩和ケアチームの設置」や「苦痛のスクリーニングの実施」「緩和ケア研修の受講促進」などが盛り込まれている

 この点について、検討会が実地調査を行ったところ、▽緩和ケアチーム・緩和ケア外来について、施設間で実績の格差が大きい▽緩和ケアセンターが「地域連携部門と連携して主体的な活動を行う」までには至っていない▽苦痛のスクリーニング結果やがん患者の療養生活の質に関する評価までは行っていない―という課題が浮上してきました。

 このため検討会は、▽他施設との交流や緩和ケア病棟・拠点病院などにおいて「実習を伴う実地研修」の実施▽地域連携の積極的な推進▽外部評価者が参画したピアレビュー(拠点病院間における相互評価)などによる質の総合的な評価―などを行うべきと提案しています。

苦痛のスクリーニング、「診断時からの実施」に向けた体制整備が課題

 また拠点病院には、「がん診断時から身体的・精神的・社会的苦痛のスクリーニングを外来・病棟で行う」「緩和ケアチームと連携し、がん患者の苦痛を迅速かつ適切に緩和する体制を整備する」ことが求められています。

 しかし、人員不足などのため、「診断時からのスクリーニング」を実施できている拠点病院は少数派なのが実際です。

 そこで検討会では、▽スクリーニング実施体制の整備をどう図っていくかを検討する▽がん看護専門看護師や認定看護師、これらを補助する事務職員の確保をどう図るか―を検討するとともに、「スクリーニングの好事例」に関する情報提供を推進することを提案しています(関連記事はこちら)。

緩和ケア研修会、2017年6月までに主治医・担当医の9割受講を目指す

 一方、拠点病院には緩和ケア研修会を実施することが求められており、「初期臨床研修2年目から研修終了後3年目までのすべての医師」がすべて研修を修了するという目標が立てられています。

 しかし、2014年9月1日時点で、研修会を修了した医師の割合は33%に止まっています。検討会では「2017年6月までに、がん患者の主治医・担当医となる医師の9割以上が研修会の受講を完了させる」という目標を新たに立てました。

 さらに検討会では、▽単位型研修▽学会などの認定医制度との連携―など受講しやすい環境づくりにも配慮することを要望しています。

緩和ケアへの正しい理解・普及に向け、医学生などへの教育も重要テーマ

 ところで緩和ケアは、前述のとおり「がんと診断された時」から実施することが必要です。早期の介入が、がん患者の予後を向上させるという研究結果も出ているためです。

緩和ケアとは、「がんと診断されたときから」すべての患者に対し、すべての医療従事者が提供するものである

緩和ケアとは、「がんと診断されたときから」すべての患者に対し、すべての医療従事者が提供するものである

早期から緩和ケアを実施することで、がん患者の生命予後が改善するという研究結果がある

早期から緩和ケアを実施することで、がん患者の生命予後が改善するという研究結果がある

 しかし、一般国民のみならず医療従事者にも「緩和ケア」の正しい理解が浸透していないという現状があります。

 こうした状況が緩和ケアの推進を阻んでいる面もあることから、検討会では▽医師・薬剤師・看護師からの「正しい緩和ケア」の説明▽緩和ケアの普及啓発用ポスターの積極的な配布▽緩和ケア研修修了者へのバッジ配布▽医学生・臨床研修医はもとより、看護学生・薬学生・看護師・薬剤師などへの緩和ケアに関する教育・研修▽学校教育の中でのがん専門医やがん患者の活用―を積極的に推進していくことを強く要望しています。

緩和ケアの地域連携に向け、コーディネーターや訪問看護師の育成を

 さらに検討会では、「施設間での格差是正に向けた、共通の疼痛指標の活用」や「施設間連携を進めるために、コーディネーターの育成や多職種による情報共有、緊急緩和ケア病床の確保、緩和ケアを提供できる訪問看護師の育成」なども提言しています(関連記事はこちら)。

 ちなみに共通の疼痛指標として、「がん診療連携拠点病院におけるがん疼痛緩和に対する取り組みの評価と改善に関する研究」班は、(1)11段階の痛みの強さ(NRS:Numeric Rating Scale、患者自身が0から10段階で痛みを評価)(2)11段階の痛みの及ぼす生活への指標(NRS)(3)5段階の痛みに対する医療者の対応(POS:Palliative Outcom Scale、医療従事者が評価)(4)5段階の看護師から見た痛みの度合い(POS)―の4指標が提案されています。

 また今後の検討課題として、▽拠点病院における緩和ケア提供(緩和ケアセンターの運営や苦痛のスクリーニング実施体制など)▽拠点病院以外の医療機関における緩和ケア提供体制▽すべての医療従事者が基本的な緩和ケアを身につけるための方策―についても検討する必要があるとも訴えています。

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