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消費税率10%時には、精緻なデータに基づく介護報酬のプラス改定が必要―介護事業経営調査委員会

2016.4.18.(月)

 消費税率が10%に引き上げられ、介護報酬プラス改定での対応となった場合には、精緻な調査を行った上でデータに基づいた改定を行ってほしい―。

 こういった要望が、15日に開かれた社会保障審議会・介護給付費分科会「介護事業経営調査委員会」で関係団体から出されました。

 調査委員会は21日にも関係団体から意見を聴取し、消費増税対応について検討していく考えです。

4月15日に開催された、「第18回 社会保障審議会 介護給付費分科会 介護事業経営調査委員会」

4月15日に開催された、「第18回 社会保障審議会 介護給付費分科会 介護事業経営調査委員会」

消費税率引き上げによる事業者の負担考慮し、2014年度はプラス改定で対応

 公的介護保険サービスについては、保険診療と同じく、消費税は非課税とされています。このため、介護事業所や施設が物品を購入する際などに発生する消費税は、利用者に転嫁できず、介護事業所・施設の負担となっています。

 この点は財務省・厚生労働省も認識しており、消費税率の引き上げ(5%→8%)が行われた2014年度には、特別の介護報酬プラス改定が行われました。

 現時点では、来年(2017年)4月に消費税率が10%に引き上げられる見込みです。この引き上げに備えて介護給付費分科会は、関係団体から▽2014年度のプラス改定の補填状況▽10%に引き上げられる場合の対応―に関する意見を聴取することを決定しました(関連記事はこちら)。

 15日の調査委員会では、第1弾として(1)全国社会福祉法人経営者協議会(2)民間介護事業推進委員会(3)全国特定施設事業者協議会(4)日本医師会(5)認知症の人と家族の会―の5団体から意見を聴取しています。

介護報酬と合わせて、区分支給限度基準額の引き上げも要望

 (1)の全国経営協は、8%への引き上げ対応について「2014年度改定で概ね担保されている」と評価したものの、「施設整備に係る消費税負担」について補助金対象部分を除いて法人負担になっている可能性があると指摘しています。

 また10%への引き上げ時には、▽課税支出割合に応じた介護報酬の上乗せ▽食費・居住費の基準費用額の引き上げ▽区分支給限度基準額の引き上げ▽施設・設備整備について建築費上昇分の反映―を行うよう求めています。

 

 (2)の民介協は、10%への引き上げ時に、▽介護報酬の上乗せ▽区分支給限度基準額の引き上げ▽地域支援事業での対応―を行う要望しています。特に介護報酬の上乗せにあたっては、介護事業所・施設の経営実態を分析する際に改めてヒアリングを行うことや、法人の種別(営利・非営利)に応じた慎重な検討を行うよう求めました。

 さらに地域支援事業については、「介護予防給付に相当するサービスについては、介護報酬と同様の上乗せ、市町村独自サービスについても適切な対応」を行ってほしいと求めています。

 

 (3)の特定協は、物件費などについて消費増税によって「損税」(消費税を利用者に転嫁できないことによる介護事業者の負担)が生じることを改めて強調。その上で、▽介護報酬の引き上げ▽通常の特定施設と地域密着型の特定施設、短期利用の一体的な扱い(同一単価とする)▽地域区分単価の人件費割合の見直し(現在の45%から70%への引き上げ)―をすべきと要望しています。

 また将来的には介護保険サービスにも消費税を課税した上で、ゼロ税率(消費税率をゼロ%に軽減する)とすることも検討すべきと求めました。

 

 (4)の日医は、8%への引き上げ対応について、「事業者によって費用構造は異なるため、補填状況に関する実態調査をすべきであった」と指摘。さらに、「消費増税対応のプラス改定部分が、2015年度の通常の介護報酬改定後にどのように存在しているのか、10%に引き上げられる前に整理することが必要」と強く訴えています(関連記事はこちら)。

 例えば、居宅介護支援(ケアマネジメント)について、要介護1または2の利用者については、2015年度改定前は1日につき1000単位に設定されていました。ここに消費増税対応の2015年度プラス改定が行われ、1005単位となっています(5単位の引き上げ)。さらに2016年度の通常の介護報酬改定によって1042単位に引き上げられました(認知症加算などの包括化)。

 日医の鈴木邦彦常任理事は、例えばこの「5単位」(消費増税対応分)が、2016年度の1042点の中で、どのように存在しているのか(5単位分は消費税対応として純粋に把握されているのかどうか)を明確にすべきと主張しているのです。

 また10%への引き上げ対応については、▽施設サービスにおける基準費用額などについて、物価や光熱水費の変動を踏まえた見直し▽区分支給限度基準額の引き上げ▽医療保険との整合性を踏まえた「高額投資」に関する状況の把握(関連記事はこちら)―を実施すべきと求めています。

 

 (5)の認知症の人と家族の会は、利用者の視点から消費増税対応について意見を述べており、具体的には▽介護報酬の引き上げ▽区分支給限度基準額の引き上げ―を実施すべきとしています。

 

 いずれの団体も、消費増税に介護報酬改定で対応する際には、「精緻な調査を行い、そのデータに基づいた適切な配分を行うべき」との考えを示しています。

 なお、21日にはヒアリング第2弾として、▽全国小規模多機能型居宅介護事業者連絡会▽日本看護協会▽日本介護支援専門員協会―から意見を聴取します(書面の提出となる可能性もあり)。

施設サービスの基準費用額の引き上げを求める声も

 ところで、全国経営協や日医が引き上げを求めている「基準費用額」とは、国が定めた「施設における標準的な食費・居住費」のことです。市町村民税課税世帯以外では、基準費用額と一定の利用額との差額が、国から介護保険施設に給付されます。

 この基準費用額について、物価や電気・水道などの公定料金の変動を勘案し、適切な水準にしてほしいとサービス提供側は要望しています。

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