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医療・介護への財源投入は、雇用創出や経済発展にも寄与する―日医総研

2016.4.20.(水)

 社会保障への財源投入は、医療・福祉分野での新たな雇用創出、従事者の処遇改善、介護離職防止や子育て支援、消費拡大にもつながり、経済成長にも寄与していく―。

 日本医師会総合政策研究機構は、15日に公表した日医総研ワーキングペーパー「2016年度の社会保障関係予算と診療報酬改定および経済成長の関係」の中で、このような提言を行いました。

社会保障費をどのように賄うか、財源の確保が大きな課題

 2012年に野田佳彦内閣が閣議決定した社会保障・税一体改革大綱の中では、消費増税の方針が固められるとともに、「国分の消費税収は全額、社会保障目的税化する」ことが明確にされました。

 現在、消費税率8%のうち、国分は4.90%(消費税収の61.25%)ですが、10%に引き上げられた時点で国分は6.28%となる予定です。

消費税収の配分を見ると、税率引き上げに伴って国分の割合が高まる仕組みとなっていることが分かる

消費税収の配分を見ると、税率引き上げに伴って国分の割合が高まる仕組みとなっていることが分かる

 しかし2016年度予算では消費税収(国分)は13.4兆円に止まっており、28兆円に上る社会保障4経費(医療、年金、福祉、少子化)を賄うには大幅に不足しています。この不足分は他の一般財源で賄われていますが、日医総研は「消費税収の目的税化からは、『社会保障費はすべて消費税収で賄う』との解釈も成り立つ。今後も他の財源を活用できる保証はない」と指摘しています。

2016年度予算では、社会保障4経費が28兆円に上るの対し、消費税収(国分)は13.4兆円に止まっている

2016年度予算では、社会保障4経費が28兆円に上るの対し、消費税収(国分)は13.4兆円に止まっている

 また診療報酬改定について、消費増税のある年(例えば2014年度改定)では社会保障の充実分(10%に引き上げた場合には、引き上げ分5%のうち1%程度相当)を改定財源に充当することが可能ですが、消費増税がなければ改定財源を他から捻出しなければなりません。

消費税率が10%になった場合、従前の5%からの「5%引き上げ分」のうち1%程度が社会保障の「充実」に充てられる見込みである

消費税率が10%になった場合、従前の5%からの「5%引き上げ分」のうち1%程度が社会保障の「充実」に充てられる見込みである

 これまで薬価の引き下げ分を、診療報酬本体の引き上げに充当してきましたが、財務省はこれに強く異論を唱えています。

 さらに、現在、消費税率10%への引き上げは2017年4月に予定されていますが、通常の診療報酬改定年には当たらないため、増収分を医療機関経営のいわゆる「真水」に充当することもできません。

2017年4月に消費税率が引き上げられたとして、2018年度の診療報酬・介護報酬同時改定の直接財源とはならない

2017年4月に消費税率が引き上げられたとして、2018年度の診療報酬・介護報酬同時改定の直接財源とはならない

 こうした状況を俯瞰し、日医総研は「新たに追加すべき社会保障充実財源をどう確保するのかが課題である」と強調しています。

とりわけ介護分野、対個人サービスや建設分野よりも雇用創出の力が強い

 一方で日医総研は、社会保障、とりわけ医療・福祉分野は「産業」としてわが国の中で大きなポジションを占めている点を指摘します。2011年の総務省「産業関連表」では、医療・福祉の国内生産額は60兆3000億円で、商業や対事業所サービス、対個人サービスに次ぐ(あるいは匹敵する)分野となっています。

医療・福祉分野は、雇用・生産の両面から見て、重要な「産業」であることが分かる

医療・福祉分野は、雇用・生産の両面から見て、重要な「産業」であることが分かる

 また雇用面でも医療・福祉は重要分野となっています。「ある産業に1単位の需要が生じたとき、どの程度の雇用が誘発されるのか」を示す雇用誘発係数を見ると、医療・福祉は0.17、医療は0.12、介護は0.28なのに対し、対個人サービスは0.22、建設は0.20、商業は0.16などとなっており、とりわけ介護分野の雇用を創造する力・可能性が大きなことが分かります。

介護分野の雇用創造力は極めて大きいことがわかる

介護分野の雇用創造力は極めて大きいことがわかる

 こうした点を踏まえ、日医総研は「社会保障への財源投入は、医療・福祉分野での新たな雇用創出、従事者の処遇改善、介護離職防止や子育て支援、消費拡大にもつながり、経済成長にも寄与していく」と訴え、今後も社会保障に安定した財源を供給するよう提言しています。

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