熊本地震で被災した介護事業所など、2016年4月分の介護報酬を「概算請求」可能に―厚労省
2016.5.6.(金)
平成28年熊本地震では、介護事業所や介護施設も数多く被災しています。このため厚生労働省は2日に、介護報酬などの請求事務について特別の取り扱いを行うことを決めました。
具体的には、一定の要件を満たした介護事業所・施設では2016年4月分の介護報酬を「概算請求」することを認めるとともに、通常の請求を行う場合であってもレセプトの提出基準を一定程度猶予することにしています。
目次
過去のサービス実績をベースに、被災前後の請求額を推計
概算請求とは、「過去の支払実績」に当該月(今回は2016年4月)の診療実日数を掛けたもの請求する方法です。ただし、支払額が実際に提供した介護サービスに基づく金額とは異なる(確定する)ため、この請求方法はごく限定的にしか認められません。具体的には、次のいずれかの介護事業所・施設に限定されます。
(1)平成28年熊本地震で、サービス提供記録などを滅失・毀損した事業所など
→(a)2016年4月14日以前のサービス分を概算請求することが可能
(2)災害救助法適用地域に所在し、2016年4月15日以降にサービス提供を行った事業所など
→通常請求が困難な場合には、2016年4月15-30日のサービス分を概算請求することが可能
概算請求を選択する場合には、原則として5月13日までに届け出を
概算請求を選択する場合には、やむを得ない事情がある場合を除いて、5月13日までに熊本県国民健康保険団体連合会に届け出ることが必要です。
提出期限の遅れた分についは、翌月以降の請求となります。
地震直後のサービス分については、利用者数の増加などを考慮
概算請求を行う場合、請求額は次のように計算します。(1)の「診療録滅失」などに該当するものの、(2)にある災害救助法適用地域に所在しない事業所などでは、概算請求にあたり「罹災証明書」「罹災届出証明書」も併せて提出することが必要です。
【(1)に該当する場合】
●(2015年12月-2016年2月の介護報酬等支払額) / 91(※) × 14
【(2)に該当する場合】
●(2015年12月-2016年2月の介護報酬等支払額) / 91(※) × 16 × (1+0.012+0.05)】
(2)では、被災した要介護者などを多く受け入れていると相当されるため、過去のサービス提供実績にプラスアルファが行われています。
ところで、2015年12月以降に新規指定を受けた介護事業所などでは、上記の計算式のうち「91」(これは当該機関の稼働日数を意味する)に代えて、「事業開始日から2016年2月29日までの合計日数」を分母とします。
被災地の介護事業所など、通常請求の場合でも期限を5月13日に延長
災害救助法の適用地域の所在する介護事業所などでは、通常請求を行う場合でも2016年4月サービス分のレセプトについて提出期限が「5月13日」に延長されます。これに間に合わない分は、翌月以降に請求することになります。
介護報酬における施設基準などの特例も準備
ところで厚労省は、介護報酬に関する次のような特例も例示しています。被災者の受け入れにより、一時的に算定基準を満たせない場合でも、通常の介護報酬算定を可能とする計らいです。また、これらは「例示」であり、他にも柔軟な取り扱いが可能となることを厚労省は明確にしています。
●認知症専門ケア加算(各サービス共通)、訪問リハビリ・通所リハビリの「社会参加支援加算」、通所介護・通所リハビリの「中重度者ケア体制加算」、通所介護の「認知症加算」、介護予防通所介護・介護予防通所リハビの「事業所評価加算」、介護老人福祉施設の「日常生活継続支援加算」
→今般の災害などやむを得ない事情で新規利用者の受け入れなどを行った事業所では、加算の要件の算出の際「当該利用者数などを除外」して構わない
●介護予防通所リハビリ
→今般の被災などで休業し、利用者に対してケアプランに基づく適切な利用回数が提供できなかった場合には、当該利用者について「日割り計算」を行う
●介護老人保健施設、介護療養型医療施設
【被災地の施設】→被災前に施設基準を満たしていれば、災害などやむを得ない事情で要介護者を入所・入院させたことで施設基準(介護老健施設サービス費Iの在宅復帰率やベッド回転率、要介護4・5割合、喀痰吸実施率、経管栄養実施率など)を満たせなくなっても、当面の間、直ちに施設基準の変更を届け出る必要はない
【被災地以外の施設】→災害などやむを得ない事情で要介護者を入所・入院させた場合には、施設基準(介護老健施設サービス費Iの在宅復帰率やベッド回転率、要介護4・5割合、喀痰吸実施率、経管栄養実施率など)について、当面の間、被災地から受け入れた入所者・入院患者を除いて計算してよい
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