人工呼吸器の装着や、喀痰吸引・経管栄養が必要な障害児、必要な支援を受けられるような体制整備を―厚労省・内閣府・文科省
2016.6.13.(月)
日常生活を営むために医療が必要な障害児に対して、適切な保健、医療、福祉、教育を提供するために、地方自治体が関係機関と緊密な連携をとり、必要な体制整備を行ってほしい―。
厚生労働省、内閣府、文部科学省は3日、都道府県知事らに宛てて、こうした内容を求める連名の通知「医療的ケア児の支援に関する保健、医療、福祉、教育等の連携の一層の推進について」を発出しました。
「保健、医療、福祉などの関係者が連携して支援」する体制の整備、自治体に努力義務
医療・医学の進歩に伴い、NICU(新生児特定集中治療室)に長期間入院した後に、引き続き「人工呼吸器」や「胃瘻」などを使用し、また喀痰吸引や景観栄養などの医療的ケアを受けながら在宅生活を送る児童(以下、医療的ケア児)が増加しています。
政府は、こうした児童に適切な医療・福祉サービス、教育などが提供されることが重要と考え、今般、児童福祉法を改正。具体的には、「人工呼吸器を装着している障害児」や「日常生活を営むために医療を要する状態にある障害児」に対して、適切な保健、医療、福祉その他各関連分野の支援を行う機関と地方公共団体が連絡調整を行い、必要な措置を講じるよう努力することを求めています(改正法第56条の6第2項)。
今般の通知では、この規定が施行(3日)されたことを受け、地方公共団体が具体的な取り組みを行うにあたっての技術的助言を行っています。
まず医療関係については、訪問診療・訪問看護などの「小児在宅医療」体制を整備することが重要となります。
すでに第6次医療計画(2013-17年度)の策定にあたって、厚労省は「一般小児を担う医療機関では、小児病棟やNICU、PICU(小児集中治療室)などから退院するにあたって、施設を含めた生活の場で療養・療育が必要な小児に対して支援を行う」ことや、「退院支援から生活の場における療養支援、急変時の対応、看取りまで継続して医療が行われるよう、関係機関の信頼関係が醸成されるよう配慮する」ことを示しています。今般の法改正に当たり、この点を再確認することが必要です(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
なお2014年6月から順次施行されている「医療介護総合確保推進法」に規定された『地域医療介護総合確保基金』(いわゆる「新たな財政支援」制度)を活用して、こうした小児在宅医療を含めた居宅医療提供体制の整備を進めることが可能です(関連記事はこちら)。
また保健担当者は、▽低出生体重児(未熟児)の届け出▽新生児の訪問指導▽乳幼児健診―などを通じて、医療的ケア児を把握した場合には、保護者に「こうした支援が受けられますよ」といった必要な情報提供を行い、あわせて関係部局との連携をとることが必要です。
さらに障害福祉担当者は、▽障害児福祉計画を活用した医療的ケア児への支援体制確保▽医療的ケア児を受け入れられる短期入所や障害児通所支援などの確保―に努めることが求められます。
このほか、医療的ケア児の保育・教育ニーズに応えるために「保育所・幼稚園への看護師などの配置」「学校への看護師などの配置」「看護師要請過程における、医療的ケア児を含む障害児の特性を学ぶ機会の確保」を図ること、「地域での保健、医療、福祉、教育などの関係者が協議する場の設置と、定期的な開催」「医療的ケア児への支援をコーディネートする者の育成」なども進めることが必要となります。
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