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コロナ禍で「2020年度にDPC病棟等の在院日数が延伸してしまった」が、21年度には再び「短縮」—中医協総会(2)

2023.3.23.(木)

新型コロナウイルス感染症の影響で「2020年度にはDPC病棟などで在院日数の延伸」が見られたが、2021年度には再び「短縮」してきている。ただし、病床利用率は依然として低い水準のままである—。

プログラム医療機器の円滑な保険適用、適切な評価(機能区分・償還価格設定)に向けてワーキンググループを設置し、専門家に検討を仰ぐ―。

2024年度の次期診療報酬改定で「選定療養の拡大」が必要ないかどうかについて、医療関係団体や学会からの意見募集を行う—。

3月22日に開催された中央社会保険医療協議会・総会では、こうした報告設けました(同日に行われた2022年度の前回診療報酬改定の結果検証に関する記事はこちら)。

2020年度、コロナ禍でDPCの在院日数が「延伸」したが、21年度に再び「短縮」

DPC/PDPSのような包括支払方式では、支払額が固定されているため、「不必要な在院日数延伸を行なわない」「不必要な検査を行わない」「不必要な投薬を行わない」というコストカットが「利益を大きくする」ために必要不可欠となります。このため「診療の標準化・効率化」が期待できる一方で、「粗診粗療が生じはしないか」という懸念が常に付きまといます。

そこで厚生労働省は、DPC対象病院・準備病院等に対して詳細な診療データの提出を求め、これを集計・分析し毎年度公表しています【退院患者調査】。この集計・分析結果等を中医協で評価し、「経営(利益)のみを追求し、粗診粗療が生じていないか」「医療の質が下がっていないか」を確認しているのです。

今般、中医協に2021年度の退院患者調査結果が報告され、例えば次のような状況が明らかになりました。

(1)在院日数について、2019年度までは短縮を続けていたが、2020年度に延伸。その後、21年度には再び短縮した

(2)病床利用率については、2020年度に大きく落ち込み、21年度にはわずかに上昇したものの、19年度までの水準には戻っていない

2021年度のDPC退院患者調査結果1(中医協総会(2)1 230322)



(3)「入院患者に占める救急搬送患者の割合」に大きな変化はないが、「1施設当たりの救急搬送患者数」は2019年度までと比べ、20・21年度には若干少なくなっている

2021年度のDPC退院患者調査結果2(中医協総会(2)2 230322)



(4)▼退院時転帰(治癒・軽快)の割合▼計画外再入院の割合—などには大きな変化なし

2021年度のDPC退院患者調査結果3(中医協総会(2)3 230322)



このうち(1)については、様々な見方ができます。例えば「新型コロナウイルス感染症患者を受けるため、2020年度には在院日数がやむを得ず長くなってしまう」ということも考えらますが、一方で「コロナ禍で病床利用率が低下したため、在院日数を延伸してベッドを埋めているのではないか」と見る識者も少なくありません。ただし、2021年度から再び在院日数短縮方向に動いていることは好ましいと言えるでしょう。

また(2)では「入院医療が平時に戻っていない」ことを再確認できます。「コロナ患者を受け入れるために空床を確保する」「コロナ患者に手厚い医療を提供するために、一部病床を閉鎖し、そこに配置していた看護師等をコロナ病床に集約化する」「コロナ患者対応のために『待てる予定入院』を延期する」など、様々な理由で病床利用率は落ち込んでおり、2021根に入ってもコロナ禍前の水準には戻っていません。

またとくに(4)からは「医療の質が低下していない」ことが一定程度確認できます。

2022年度以降の状況も見ながら、中長期的に「DPC病棟において医療の質が低下していないか、粗診粗療が生じていないか」を確認していくことになります。

なお、退院患者調査の詳細データは厚労省サイトに近く掲載されます。

プログラム医療機器の保険適用・評価に関する専門ワーキングを設置

3月22日の中医協総会では、保険医療材料等専門組織(保険医療材料の機能区分や償還価格などの原案を作成する専門家の集まる)の下に「プログラム医療機器等専門ワーキンググ ループ」を設置し、そこで▼プログラム医療機器等の評価に関する技術的な事項▼プログラム医療機器等のチャレンジ申請(使用実績を踏まえ、より償還価格の高い機能区分への再評価を求められる仕組み)の評価の妥当性に関する事項▼プログラム医療機器等に関する技術的な助言—などを検討する方針が厚生労働省保険局医療課医療技術評価推進室の中田勝己室長から報告されました。

疾病の診断・治療を目的としたプログラムの開発により、アプリや人工知能(AI)を使用したプログラム医療機器(SaMD)が続々と登場しています。従前の「いわゆる診断機器、治療機器」と異なる特性を持っているため、2022年度の前回材料価格制度改革において次のような評価方針が固められました(関連記事はこちら)。

▽メーカーからプログラム医療機器の保険適用希望書が提出された場合、他の医療機器と同様に保険医療材料等専門組織で製品の特性を踏まえて評価する(▼技術料に平均的に包括して評価する▼特定の技術料に加算して評価する▼特定の技術料に一体として包括評価する▼特定保険医療材料として評価する―)

▽プログラム医療機器には「医師の診療をサポートし、より少ない医療従事者で同等の質を確保できる」ものなどがあり、評価に当たっては医師の働き方改革の観点を念頭に置きつつ「施設基準等への反映」も含めた評価を検討する

▽チャレンジ申請の対象に含める

▽診療報酬の【医学管理等】の部(いわゆるBコード)に「プログラム医療機器を使用した場合の評価」に係る節を新設する(例えば【投薬】(Fコード)に「第1節 調剤料」「第2節 処方料」「第3節 薬剤料」といった「節」が設けられており、【医学管理等】にもこうした「節」を設けることになる)

▽プログラム医療機器を使用した医療技術も「先進医療」として保険外併用療養費制度の活用が可能であること、保険導入を前提としておらず「患者の選択による」ものについては選定療養の仕組み(個室料金などと同様に実費徴収を可能とする仕組み)の活用がありうる旨を明確にする



また、1月18日の中医協総会では、2024年度の次期診療報酬改定に向けて、こうした方針をより具体的に「プログラム医療機器の評価」(機能区分や償還価格)の中に盛り込んでいくために「専門ワーキング」を設けることを決定(関連記事はこちら)。

こうした点を踏まえ、中田医療技術評価推進室長は上記の「プログラム医療機器等専門ワーキンググループ」設置を報告。3月(3月23日から議論開始)から夏頃まで議論を進めて意見を取りまとめ、2024年度改定の中に盛り込むことになります。

プログラム医療機器の保険適用・評価を検討する専門ワーキングを設置(中医協総会(2)4 230322)



なお、プログラム医療機器の評価に関して、厚労省医薬・生活衛生局長医療機器審査管理課の中山智紀課長は「プログラム医療機器の2段階の薬事承認制度」導入に向けた検討を行う方針を明らかにしています。

疾病の診断補助医療機器においては、▼対象疾病と関連する生理学的パラメータを測定する機能を保有していることをもって「第1段階の薬事承認を受ける」▼その後、広く医療現場で使用される中で(薬事承認が得られなければ医療現場で使用されない)臨床的意義(当該疾病の診断補助)に関するエビデンスを構築し「第2段階の薬事承認を受ける」(変更承認)—という2段階の薬事承認を行う仕組みが2017年から準備されています(PMDAサイトはこちら(医療機器の「臨床試験の試験成績に関する資料」の提出が必要な範囲等に係る取扱い(市販前・市販後を通じた取組みを踏まえた対応)について))。

プログラム医療機器についても「2段階の薬事承認」制度を検討へ(中医協総会(2)5 230322)



有用な医療機器ながら、いきなり「疾病の診断補助を行える性能を証明せよ」と求めることが酷な場合もあるためですが、プログラム医療機器にもこうした課題を持つものが少なくないと考えられます。しかし、このルールを「プログラム医療機器」に適用することは現時点では難しい(現在は診断補助機器を念頭に置いた記載となっている)ことから、中山医療機器審査管理課長は「当該ルールをプログラム医療機器にも適用できるような内容に通知を見直せないか」を検討。上記の新設される専門ワーキングでの議論も踏まえてルール見直しが行われる見込みです(当然、2024年度の材料価格制度改革にもルール見直しが反映される見込み)。

有用なプログラム医療機器について、薬事承認→保険適用がより円滑に進むことが期待されます。

選定療養を拡大する必要が内科、医療関係団体や学会等から意見募集

また3月22日の中医協総会では、2024年度の次期診療報酬改定に向けて「選定療養の拡大」に関する意見募集が開始されることが報告されました。

選定療養は、快適な療養環境を求める患者の要望に応えるために、「保険診療と保険外診療を組み合わせ」を認めるものです。例えば▼特別の療養環境(個室などの差額ベッド)▼予約診療▼時間外診療▼大病院の紹介状なし患者に対する初診・再診▼180日超の入院(入院料が減額され、その減額分を患者から徴収可能)▼制限回数を超える医療行為―などが選定療養として認められています。

厚生労働省保険局医療課の眞鍋馨課長は、医療関係団体や関係医学会、国民から広く「新たな選定療養」要望を募り(2023年3月から)、中医協に示す(2023年夏以降)考えを提示しました。

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