入院期間が長いほど患者満足度は下がり、病院規模が小さいほど自宅療養できない患者が増える―2014年受療行動調査
2016.3.24.(木)
病院の外来を受診した患者の満足度は58.3%、入院患者の満足度は67.5%で、入院患者では入院期間が長くなるほど満足度が下がる―。
患者がこのように感じている状況が、厚生労働省がこのほど発表した2014年の「受療行動調査(確定数)」から明らかになりました(速報はこちら、厚労省サイトはこちら)。
また、医師から退院の許可が出た場合、「自宅療養が可能」と考える患者は54.2%に止まり、病院の規模が小さくなるほど「自宅で療養できない」と考える患者が多くなることも分かりました。
受療行動調査は、患者をターゲットとして「受療の状況」や「医療への満足度」などを調べるもので、3年に一度実施されています。今回は、2014年の状況が公表されています(10月21-23日のうち1日が調査対象期間)。
まず外来患者の医療への満足度を見てみると、58.3%が満足と感じていますが、4.8%は不満に感じていることが分かりました。1996年以降、全体として5-6割が満足と感じています。
病院の種類別に「満足」と感じている外来患者の割合を見ると、▽特定機能病院65.3%▽大病院(500床以上、特定機能病院と療養病床を持つ病院を除く)60.7%▽中病院(100-499床、同)56.5%▽小病院(99床以下、同)57.3%▽療養型病院(療養病床を持つ病院)57.4%―となっており、病院の規模が小さくなると若干、患者の満足度が下がる傾向にあります。
「不満」の原因としては、「診療までの待ち時間」が最も多く27.6%に上っています。このほか「診療時間」8.3%、「医師との対話」6.7%、「診療・治療内容」6.0%などとなっています。
では、診療までの待ち時間はどの程度なのでしょうか。全体では、▽15分未満25.0%▽15-30分未満24.1%▽30-1時間未満20.4%―が多くなっていますが、▽3時間以上1.9%▽2-3時間未満4.5%―というケースもあります。病院の種類別に見てもさほど大きな違いはありません。
統計表(政府の統計サイトはこちらとこちら)から、「診療までの待ち時間」と「不満」との関係を見てみると、当然のことながら「待ち時間が長くなるほど不満」と感じる患者が多くなります(1時間半以上では半数以上)。ただし15分未満の待ち時間でも11.1%の患者が「不満」と感じていることも分かりました。
もっとも病院の外来が混雑する理由の1つに「患者の大病院志向」があります。今年(2016年)4月からは紹介状なしに大病院外来を受診した場合、初診では5000円以上、再診では2500円以上の患者特別負担が義務化されますが、これにより患者の外来受診動向がどのように変化するのか、あわせて「待ち時間」と「満足度」がどのように変化するのか注目したいところです(関連記事はこちら)。
また中規模・小規模の病院では、外来予約患者の割合が大病院に比べて小さい(特定機能病院では91.1%、大病院では86.5%、中病院では73.2%、小病院では43.0%)ことから、「予約システム」などを導入することで患者の待ち時間を短縮し、満足度を高められる可能性が高いと考えられます。
入院患者の医療への満足度に目を移すと、全体では67.5%が満足と感じていますが、4.2%は不満と答えています。
病院の種類別に「満足」と感じている患者の割合を見ると、▽特定機能病院76.8%▽大病院72.7%▽中病院68.6%▽小病院65.7%▽療養型病院64.4%―となっており、やはり病院の規模が小さくなるほど、患者の満足度が下がる傾向にあります。ただし、年を追うごとに患者の満足度は上がっていることも分かります。
「不満」の原因としては、「食事の内容」が最も多く13.6%。このほか、「病室・浴室・トイレなど」9.3%、「医師との対話」6.2%、「病室でのプライバシーなど」6.0%などとなっています。
また入院期間別に満足度を見てみると、「医師による診療・治療内容」や「医師以外の病院スタッフの対応」については、入院期間が長くなるほど下がっていますが、「食事の内容」については入院期間と満足度に顕著な傾向がない(入院期間が長くなるとわずかに満足度は下がる)ことも分かりました。ただし、厚労省の統計表からは、年を追うごとに「食事への不満」は減少しています。
なお「食事への不満」は、病院の規模が大きくなるほど高いという結果も出ており、大病院では一考すべきでしょう。
次に、「医師から退院の強化が出た場合に、自宅での療養が可能かどうか」を見てみましょう。
全体では「自宅療養が可能」と考える患者は54.2%に止まり、25.9%は「自宅療養不可」と考えています。
自宅療養不可と考えている患者に対して、「どのようなサポートがあれば自宅療養できるか」を聞いたところ、「入浴や食事などの介護」が最も多く41.8%、次いで「家族の協力」35.7%、「車椅子やベッド(療養に必要な器具)」28.4%などが多くなっています(複数回答)。介護保険や、新たな地域支援事業(市町村事業、介護予防や要支援者への訪問・通所介護など)をより積極的に活用することが重要です。
病院の種類別に見ると、自宅療養不可の患者は▽特定機能病院9.0%▽大病院10.8%▽中病院15.6%▽小病院19.5%▽療養型病院39.6%―となっており、規模の小さな病院と介護事業所や市町村との密接な連携がこれまで以上に必要と言えます。また、2016年度の診療報酬改定では、退院支援に向けた評価を充実しており(退院調整の要件を厳格化した退院支援加算1の新設など)、これらがどのような効果を出すのかにも注目が集まります。
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