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長期収載品から後発品へのシフト促すZ2ルール、支払側は厳格化を要望―中医協・薬価専門部会

2015.11.5.(木)

 2016年度の次期薬価制度改革において、長期収載品の薬価をどう考えていくべきか―。こうした議論が、4日に開かれた中央社会保険医療協議会の薬価専門部会で行われました。

 国は「長期収載品から後発医薬品へのシフト(置き換え)を進めよう」と考え、2014年度の前回改定で新たな仕組み(いわゆるZ2)を導入しましたが、これをどのように見直していくのか注目が集まっています。

11月4日に開催された、「第110回 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会」

11月4日に開催された、「第110回 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会」

後発品への置き換え率に基づき、長期収載品の価格を引き下げ

 新薬の開発から時間が経過し特許が切れると、後発品が上市され始めます。後発品の価格は先発品(長期収載品)の6割や5割に設定されるなど、低く設定されます(関連記事はこちら)。これは、「同一成分で安い価格の製品」である後発品へのシフトを促すためです。

 この「後発品へのシフト」を促す方策は、長期収載品の価格設定にも盛り込まれています。従前は、「初めて後発品が出現した場合に、長期収載品の価格を下げる」(いわゆるZ)という仕組みが設けられていました。

 さらに2010年、12年度の改定では「後発品への置き換えが十分に進んでいないことに着目した特別の薬価引き下げ」も行われました。

 しかし、2014年度の前回改定で「さらなる後発品への置き換えを進める」ために、Z2という新たなルールが設けられ、従前のZルールは廃止されました。

 このZ2は、通常の市場実勢価格に基づいた引き下げとは別に、「後発品への置き換え率に着目して、長期収載品の価格を更に引き下げる」というルールです。具体的には後発品が出現してから5年以上経過した長期収載品について、次のように価格の更なる引下げを行います。

▽後発品への置き換え率が60%以上であれば、更なる引き下げは行わない(通常の、市場実勢価格に応じた薬価引き下げのみ)

▽置き換え率が40%以上60%未満の場合には、更に1.5%引き下げる

▽置き換え率が20%以上40%未満の場合には、更に1.75%引き下げる

▽置き換え率が20%未満の場合には、更に2.0%引き下げる

2014年度の前回薬価制度改革で導入されたZ2、後発品への置き換え率を指標にして、長期収載品の薬価を更に引き下げる仕組み

2014年度の前回薬価制度改革で導入されたZ2、後発品への置き換え率を指標にして、長期収載品の薬価を更に引き下げる仕組み

Z2の対象品目例

Z2の対象品目例

 Z2に対しては、「後発品への置き換えには、先発品(長期収載品)メーカーは関与できない」との批判もありましたが、中医協では診療側・支払側の双方がこれを支持し導入されたという経緯があります。

 ところで今般、安倍内閣が決定した骨太方針(経済財政運営と改革の基本方針)2015では、後発品の数量シェアを、現行の「60%以上」から、「2017年央に70%以上、2018から20年度末までのなるべく早い時期に80%以上」とすることが定められました。これを受け、厚労省は「Z2の基準値(置き換え率と、引き下げ幅)をどのように考えていくべきか」という論点を提示したのです。

 4日の薬価専門部会では、Z2 の見直しについて具体的な議論は行われませんでしたが、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は「後発品のシェア拡大目標の達成に向けて、皆で努力する必要がある。目標値が70%、80%と引き上げられた以上、Z2もそれを踏まえて設定する必要がある。また置き換え率20%未満の部分は2%引き下げのままでよいのだろうか」と述べ、置き換え率と引き下げ幅を厳しく設定すべきとの見解を披露しました。

 ちなみにZ2によって、2014年度に310億円の医療費適正化効果があったことや、これは従前のルールよりも大きな効果であることが厚労省から紹介されています。

Z2の導入によって、310億円の医療費適正化効果が生じた

Z2の導入によって、310億円の医療費適正化効果が生じた

基礎的医薬品の価格を支える新ルール導入の可能性

 薬価制度改革に向けて、製薬メーカーサイドは「基礎的医薬品の安定供給」を支える仕組みの創設を求めています。

 薬価は、市場実勢価格との乖離を埋めるため、原則として2年毎に引き下げられます。このため開発されてから極めて長い期間が経っている医薬品の価格は非常に低くなり、中には「採算割れ」となる製品も出てきます。

 この製品が、現在の医療を支える上で極めて重要である場合には、製造の継続が望まれますが、製薬メーカーは経営面も考慮しなければなりません。

 現在は、「最低薬価(それ以上は価格を引き下げないという基準価格が剤形ごとに設定されている)」「不採算品再算定(一定の基準を満たした場合、薬価を引き上げる)」というルールによって医薬品の価格を下支えしていますが、メーカーは「より安定した価格下支えルールを設けてほしい」と強く要望しています。

薬価を下支えする仕組み(1)、一定の要件を満たした医薬品について価格を引き上げる(不採算品再算定)

薬価を下支えする仕組み(1)、一定の要件を満たした医薬品について価格を引き上げる(不採算品再算定)

薬価を下支えする仕組み(2)、剤形ごとに、これ以上は価格を引き下げないといる最低ラインを引いている(最低薬価)

薬価を下支えする仕組み(2)、剤形ごとに、これ以上は価格を引き下げないといる最低ラインを引いている(最低薬価)

 4日の薬価専門部会では加茂谷佳明専門委員(塩野義製薬株式会社常務執行役員)から、▽長期間にわたり医療現場で使用▽有効性、安全性プロファイルが明確▽医療現場からの継続供給の要望▽薬価改定により価格水準が相対的に低下▽採算性の観点から継続的な供給維持が困難―といった特徴を持つ基礎的医薬品について「薬価上の措置が必要」との提案が行われました。

製薬メーカーサイドは、一定の要件を満たした基礎的医薬品について、価格を下支えする新ルールを導入するよう強く求めている

製薬メーカーサイドは、一定の要件を満たした基礎的医薬品について、価格を下支えする新ルールを導入するよう強く求めている

 この点について、支払側の幸野委員は「採算のとれた品目の利益で、不採算な品目のコストをカバーするべきではないか」との考えを示し、新ルール導入に反対との主張をしましたが、診療側の松原謙二委員(日本医師会副会長)や中川俊男委員(日本医師会副会長)らは「医療上欠かせない医薬品については何らかの対応が必要である」と述べ、加茂谷専門委員の要望に一定の理解を示しています。

 基礎的医薬品に対する新たな価格下支えルールは、2014年度の前回改定でもメーカーから要望されていましたが、時間切れで導入が見送られました。16年度の次期改定に向けては、診療側の理解もあり、新ルール導入の可能性が出てきました。

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