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DPC改革案に特段の反論は出ず、ただし一部委員からDPCの是非を問う声も―中医協・基本小委

2015.11.20.(金)

 DPC評価分科会がまとめたDPC制度改革案(中間とりまとめ)は、複雑すぎて良し悪しが判断できないので、分かりやすく整理しなおすべきである―。11月20日に開かれた中央社会保険医療協議会の診療報酬基本問題小委員会では、こういった指摘が診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)から出されました。

 中川委員は、このほかにも「DPCでは、出来高よりも不適切な請求が多いと指摘されている。実態を明確にする必要がある」といった指摘も行っています。

11月20日に開催された、「第178回 中央社会保険医療協議会 診療報酬基本問題小委員会」

11月20日に開催された、「第178回 中央社会保険医療協議会 診療報酬基本問題小委員会」

DPC分科会の改革案、一部注文は付いたが特段の反論は出ず

 DPC制度改革については、中医協の下部組織である診療報酬調査専門組織・DPC評価分科会で検討が行われ、11月16日には中間とりまとめが行われました。見直し項目は多岐にわたりますが、ポイントを上げると次のとおりです(関連記事はこちら)。

(1)II群(大学病院本院並みの医療を提供する病院群)の要件に、内科系学会社会保険連合の提唱する「特定内科診療」(重症脳卒中、髄膜炎・脳炎、急性心筋梗塞、劇症肝炎など25疾患)の診療実績を加える

(2)機能評価係数IIについて、「新たに『重症患者への対応』を評価する指標を加える」「後発医薬品指数の上限値を現在の60%から70%に引き上げる」などの見直しを行う

(3)入院期間III(平均在院日数を超えた入院)の期間を延長するとともに、点数を引き下げる

(4)「持参薬」の取り扱いは現行を維持し、脳血管疾患、糖尿病、肺炎に患者の重症度を評価する「CCPマトリックス」を試行導入する

 このうち(1)の、内科をも考慮したII群要件について、診療側の万代恭嗣委員(日本病院会常任理事)は「高く評価できる」と賛意を示しました。万代委員は(2)の「重症患者への対応」について、「医療機関にとっても、国民にとっても、どういった理由で資源投入量などに差がつくのか分かるように導入してほしい」との注文も付けています。

 また同じく診療側の松本純一委員(日本医師会常任理事)は、(4)の持参薬について「入院契機傷病に用いることは認められないが、それ以外の傷病に用いることを原則認めるべきである」と指摘しました。このテーマは、2016年度以降も引き続き検討されます。

 一方、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は、(2)の後発品指数について「70%への引き上げはもちろん、目標値が80%に引き上げられることを見据え、上限値も早期に80%に引き上げるべきである」との見解を示しています。

 なお、今回の見直し案の中には「EF統合ファイルに重症度、医療・看護必要度(以下、看護必要度)の生データを記載する」という項目も含まれています。この点について、万代委員は「必ずEF統合ファイルで提出しなければならないとなればレセコンの改修など大きな負担が発生する。例えば、現在の生データのままで提出できるにすれば円滑な導入が可能であろう」と提案しています。この点、厚労省保険局医療課の眞鍋馨企画官は「例えば、データ提出を行う病院側の状況も勘案し、時間を置く(経過措置を設ける)ことも有り得る」とコメントしています。

 このように、DPCの見直し内容について個別具体的な異論・反論は特段出されていません。今後、DPC分科会で細部を詰め、改めてDPC改革案が中医協・基本小委に提示される見込みです。

診療側の中川委員、DPC導入の是非を問うべきと主張

 DPC改革案に対し、個別の異論・反論は出ていませんが、診療側の中川委員は、見直し案を報告した小山信彌分科会長(東邦大学医学部特任教授)や厚生労働省に対し厳しい指摘を行っています。

 まず中川委員は「見直し内容が複雑かつ広範であり、中医協委員の中にも理解できる人が何人いるのか疑問だ。見直し案への賛否は表明しない。分かりやすく整理して再提出せよ」と要望。これに対し眞鍋企画官は「軽重を付け、分かりやすく提案できないか検討したい」と答えるに止めました。

 また、中川委員は「DPCでは、出来高に比べて不適切な請求(例えばアップコーディング)が多いとの指摘がある。実態を明確にして、厳正に対処すべきであろう」と指摘。この点、眞鍋企画官は「個別症例の情報をそれほど把握しておらず、『傾向』でしか掴めないという限界がある」と理解を求めています。

 このほかにも中川委員は厳しい指摘を行い、DPC分科会の小山分科会長や眞鍋企画官との間で次のようなやり取りがありました。

●中川委員「出来高からDPCに移行することで、どれだけ収入に差が出るのか調べて検討するべき」

○小山分科会長「DPCと出来高の差は出せるが、仮にDPCが高くなったとして、それが良いのか、悪いのか、DPC分科会で検討すべきテーマであろうか?」

●中川委員「DPC分科会の委員は、DPCの当事者がほとんでである」

○小山分科会長「SEや、支払担当者、学識者もおり、DPCの当事者がほとんどではない」

●中川委員「私の認識と違うが、分科会でDPC病院の収入だけを上げようという議論になっているのではないか」

○小山分科会長「分科会では『頑張っている病院は評価しよう』という議論をしており、医療費の配分に関する議論しかしていない(DPCの医療費シェアを上げることは分科会の所掌ではない)」

●中川委員「皆に分かりやすいような議論を行ってほしい」

 

●中川委員「現在の退院時転帰における『治癒』『軽快』などの定義では、正確にDPC導入の影響を評価できない、と分科会は判断したようだ。では、これまでの報告にあった『DPC導入の悪影響はない』という評価はどうなるのか」

○小山分科会長「導入から10年程度が経ち、医療の状況が変わっている。例えば、かつては抜糸するまで入院していたが、今は抜糸は外来で行う。また機能分化も進んでいる。こうした点を踏まえて定義の見直しが必要と考えた」

●中川委員「私はDPCによる在院日数短縮が医療内容を変えたと思っている。本当に外来での抜糸が良いのだろうか。医学的な検証も必要であろう。治癒が減少している(関連記事はこちら)原因は、定義の問題ではなく、DPC制度が在院日数の短縮とそれに伴う病床回転率の向上を迫っている点にあると考えている。真摯に、DPC制度の導入が良いのか、改めて考える必要がある」

 

●中川委員「看護必要度について中医協総会で見直しの議論をしている最中だ。そうした中でデータ提出の方向だけを固めるのは拙速ではないか」

○眞鍋企画官「看護必要度の見直し論議に影響を与えるつもりはない」

●中川委員「看護必要度データを収集し、どのように見直せば、7対1病床をどの程度減らせるという分析もできてしまう。データ収集は慎重に行うべきである」

 

 DPC改革についても、最終的には中医協で決定されるため、今後、どのような議論が行われるのか要注目です。

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