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GemMed塾 2024年度版ぽんすけリリース

がん診療連携拠点病院の医療安全に関する要件を厳格化すべき―がん対策推進協議会

2015.12.7.(月)

 がん対策の加速化に向けて、「がん検診の受診勧奨の継続把握」「医療保険者が提供するがん検診の実態把握」「ニコチン依存症に対する禁煙治療の保険適用拡大」)「たばこ税率の引き上げ」「肝炎に対する抗ウイルス治療の患者負担軽減」「緩和ケアチームの質の向上」「がん診療連携拠点病院の医療安全に関する要件の見直し」などを行うべきである―。こういった提言を、厚生労働省の「がん対策推進協議会」が3日にまとめました。

 がん診療連携拠点病院の要件については、厚労省のタスクフォースでこのほどまとめられた「特定機能病院の承認要件の見直し」を参考にすべきと提言されており、より厳しい基準が検討されることになりそうです。

 政府が2015年内にも策定する「がん対策加速化プラン」に反映されることになります。

がん対策の加速化を安倍首相が指示

 わが国のがん対策は、がん対策推進協議会がまとめた「がん対策推進基本計画」に沿って進められ、現在、2012-16年を対象とした第2期基本計画に基づいた施策が動いています。

がん対策基本計画の概要、(1)がん予防及び早期発見の推進(2)がん医療の均てん化の促進など(3)研究の推進など―の3点を基本施策に据えている

がん対策基本計画の概要、(1)がん予防及び早期発見の推進(2)がん医療の均てん化の促進など(3)研究の推進など―の3点を基本施策に据えている

 協議会が、第2期基本計画の進捗状況について中間評価を行ったところ、最大目標である「2015年までに、75歳未満のがんの年齢調整死亡率を20%減少させる」の達成が困難な状況が明らかになりました。

 安倍晋三首相はこうした事態を重く見て、「がん策を加速化させるプランを策定する」よう塩崎恭久厚生労働大臣に指示しました。塩崎厚労相は年内にがん対策加速化プランを策定することとしており、今般、協議会が提言を行ったものです。

塩崎恭久厚生労働大臣は、(1)予防(2)治療・研究(3)共生―の3本を加速化プランの柱とすることを決定

塩崎恭久厚生労働大臣は、(1)予防(2)治療・研究(3)共生―の3本を加速化プランの柱とすることを決定

がん検診を充実し「避けられるがん」を防げ

 協議会は、「遅れているために加速が必要な分野」と「加速することで死亡率が減少する分野」に絞って、短期集中的に実行すべき具体的政策を提言しています。

 まず、「避けられるがんを防ぐ」ことが何よりも重要であるとし、(1)がん検診(2)たばこ対策(3)肝炎対策(4)学校におけるがん教育―という予防分野への提言を行っています(関連記事はこちら)。

 (1)の検診に関しては、「がん検診について、受診勧奨の方法や制度管理などを継続して把握する」「健診受診率だけでなく、精密検査受診率などにも目標値を設定する」「各市町村のがん検診受診率・がんの死亡率・受診率向上に向けた取り組みなどを比較可能な形で公表する」「検診対象者、市町村それぞれの特性に応じて、行動変容を起こすためのインセンティブ・ディスインセンティブ策を導入する」「かかりつけ医・薬剤師による受診勧奨を進める」ことなどが提案されています。

 また職域でのがん検診の重要性に鑑みて、「職域で保険者が提供するがん検診の実態把握」や「ガイドラインの策定」を早急に行うよう求めています。

 (2)では、「喫煙率の低下が思うように進まないことが、死亡率減少のハードルになっている」との指摘があることから(関連記事はこちら)、「たばこ税率の引き上げ」や「ニコチン依存症に対する禁煙治療の保険適用拡大」)などを行うよう訴えました。

 (3)の肝炎対策の推進は「肝がんの約75%が、肝炎ウイルスの持続感染に起因する」との研究結果を重く見た上での提言で、具体的には「抗ウイルス治療に係る患者負担の軽減による重症化予防」「肝炎ウイルス検査の初回精密検査・定期検査費用の助成充実」などが必要としています。

標準的治療の再検証や、拠点病院の安全体制整備が必要

 がんに罹患した患者にとっては、効果的な治療方法の開発が最も重要でしょう。この点について協議会では、(i)ゲノム(遺伝子)医療(ii)標準的治療の開発・普及(iii)情報提供(iv)小児・AYA世代のがん・希少がん対策(v)研究―の各分野において、どういった項目を短期集中的に進めるべきかを示しています。

 (ii)の標準的治療については、がん診療連携拠点病院においても実施にバラつきがあるのが実際です。ただし、協議会では「高齢者や他の疾患を持つ患者に対する標準的治療の有効性・安全性の検証は十分ではない」ことや、「地域の医療提供体制が異なる中で、標準的治療を全国で実施できるかどうかの検証も十分ではない」ことを指摘。都市部と地方部では検査や治療機器の整備状況が異なります。例えば放射線治療1つをとっても、治療機器を整備している病院までのアクセスも都市部と地方部では異なるためです。

 こうした状況から、次の4点の提言を行いました。

▽標準的治療の医療現場での運用などの実態調査、標準的治療の実施に影響を与える因子の分析を行う

▽標準的治療が、高齢者や他疾患を持つ患者にも有効かつ安全なものか検証する

▽標準的治療が、地域の医療提供体制を考慮したものか検証する

▽特定機能病院の承認要件見直しなどを参考にしつつ(関連記事はこちら)、がん診療連携拠点病院などで備えるべき医療安全に関する要件の見直しを行う

特定機能病院において医療安全管理体制を強化(内部統制の強化、外部監査の強化)するとともに、医療法に「特定機能病院には高度な医療安全管理体制が求められる」旨の理念規定を置くことになった

特定機能病院において医療安全管理体制を強化(内部統制の強化、外部監査の強化)するとともに、医療法に「特定機能病院には高度な医療安全管理体制が求められる」旨の理念規定を置くことになった

医師や看護師に対する緩和ケア研修の充実を

 また「慢性期疾患」であるがんに罹患した場合、治療はもちろん、治療後の長い期間にわたる「共生」が必要となります。治療方法が進化する中では、この点の重要性がますます高まります。

 そのため協議会では、▽就労支援▽支持療法の開発・普及▽緩和ケア―について具体的な提言を行いました。

 このうち緩和ケアについては、緩和ケアチームの質を上げるために「緩和ケアチームの診療機能が高いチームが、他院の緩和ケアチームのメンバーを受け入れて実地研修を行う」ことや「苦痛のスクリーニング事例集などを作成して、医療現場に普及させる」「がん診療に携わる医師への緩和ケア研修会の受講を促進する」「緩和ケアに関するガイドブックの改訂を進める」「終末期の医療・介護サービスの実態を分析する」「訪問看護ステーションなどの看護師を対象とした緩和ケア研修を実施する」よう訴えています。

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