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GemMed塾 新制度シミュレーションリリース

がん治療と仕事を両立するため、事業所は時差出勤や時間単位有給などの環境整備を―厚労省ガイドライン

2016.2.26.(金)

 がんや心疾患、糖尿病、難病など継続的な治療が必要な疾病にかかった労働者が、治療と仕事を両立できるよう、事業者は時間単位の休暇制度や時差出勤制度を導入するなど環境整備を行ってほしい―。

 厚生労働省は23日に、こういった内容を柱とする「事業場における治療と職業生活の両立支援のためのガイドライン」を公表しました(厚労省サイトはこちら)。

糖尿病患者の約8%は仕事のため、適切な治療受けられず

 日本人の死因第1位は依然として「がん」ですが、治療技術の進歩によりもはや「不治の病」ではなく、「長く付き合う病気」に変化しています。このため、がんと診断されたからといってすぐに退職しなければならないわけではなく、働きながら治療を行える環境の整備が求められています。

 ところで、がんに限らず、疾病に対する本人、職場の理解不足などにより「診断=離職」となるケース、逆に「仕事などが忙しく十分な治療を受けられない」というケースは少なくありません。例えば、「糖尿病患者の約8%は、仕事や学業が忙しく通院を中断している」ことが、2013年の厚生労働科学研究で明らかになっています。

 こうした点を重視して厚労省は今般、仕事と治療の両立を支援するための「ガイドライン」を取りまとめたものです。対象となる疾病は、▽がん▽脳卒中▽心疾患▽糖尿病▽肝炎▽難病―など「反復・継続した治療が必要となるもの」です。また雇用形態に関わらず、すべての労働者が対象になっています。

短時間勤務や在宅勤務などの体制も重要

 ガイドラインでは、まず事業所に対して次のような「治療と職業生活を両立できるような環境」を整備するよう求めています。

(1)事業者として「治療と職業生活の両立支援に取り組む」に当たっての基本方針や対応方法などの事業場内ルールをすべての労働者に周知する。

(2)当事者や同僚となり得るすべての労働者、管理職に対して、「治療と職業生活の両立に関する研修」などを通じた意識啓発を行う

(3)労働者が安心して相談・申出を行えるよう「相談窓口」を設置し、申し出が行われた場合の情報の取り扱いなどを明確にする

(4)両立支援に関する制度・体制などを整備する

 このうち(4)の制度・体制については、具体的に▽時間単位の年次有給休暇▽傷病休暇・病気休暇▽時差出勤制度▽短時間勤務制度▽在宅勤務(テレワーク)▽長期休暇後の試し出勤制度▽労働者から申し出があった場合の対応手順―などを整備してはどうかと提案しています。

がん患者に対してメンタルヘルスにも十分な配慮を

 またガイドラインでは、特に治療と仕事との両立が難しいと考えられる「がん」について、特に留意すべき事項をまとめています。

 がんの5年生存率は1993-96年の診断では53.2%でしたが、2003-05年診断では58.6%に向上しています(関連記事はこちら)。また、主ながん種の平均在院日数は2002年には35.7日でしたが14年には18.7日とほぼ半減。化学療法(抗がん剤などによる治療)や放射線療法を外来(つまり通院)で受けながら仕事を続けるケースが増えています(関連記事はこちら)。

 厚労省の調べによれば、2010年時点で仕事を続けながらがん治療のために通院している人は、男性は約14万4000人、女性は約18万1000人、合計32万5000人と推計されています。

 具体的に留意すべきは、次のような点です。

▽手術を受ける場合には、労働者が「入院期間」「合併症」「制限すべき動作」などを主治医に確認し、必要に応じて事業者に情報提供することで、職場復帰までの期間を見積もることができる。ただし個人差がある点には十分留意すること

▽化学療法を受ける場合には、労働者が「入院が必要か否か」「治療期間」「副作用の内容と程度」などを主治医に確認し、必要に応じて事業者に情報提供する

▽放射線療法を受ける場合には、労働者が「治療スケジュール」を主治医に確認し、必要に応じて事業者に情報提供する。倦怠感などの出現には個人差が大きいため、労働者から体調不良の申し出があった場合には、事業者が柔軟に対応することが望ましい

▽メンタルヘルス不調に陥ることもあるので、事業者は産業医や保健師、看護師などの産業保健スタッフなどと連携して、適切に配慮することが望ましい

▽同僚や上司などには、必要なものに限定した上で可能な限り情報提供し、理解を得ることが望ましい

 

 なお、このような両立支援の実行についてガイドラインは次のような手順や支援プランを示しています。

治療と職業生活の両立支援の進め方

治療と職業生活の両立支援の進め方

治療と仕事の両立を支援するプラン、職場復帰支援プランの例

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