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GemMed塾 看護モニタリング

特定機能病院の承認要件に「病院長の選任」に関する規定が盛り込まれる可能性も―大学病院ガバナンス検討会

2016.3.17.(木)

 大学附属病院の病院長選出方法について透明性をより高めるとともに、医療安全を第一に考えるような意思決定を可能にするためには、どのような体制を敷けばよいのか―。こういった検討が、厚生労働省の「大学附属病院等のガバナンスに関する検討会」で進められています。特定機能病院の承認要件に関係するテーマとなる可能性もあります。

 16日に開かれた検討会では、▽がん研究会▽千葉大学医学部附属病院▽東京慈恵会医科大学附属病院―のそれぞれで、現在、どのようなプロセスで病院長が選出されているのか、病院のガバナンスはどうなっているのかといった点についてヒアリングが行われました。

3月16日に開催された、「第2回 大学附属病院等のガバナンスに関する検討会」

3月16日に開催された、「第2回 大学附属病院等のガバナンスに関する検討会」

がん研究会では、外部から利用者の視点で医療安全管理を監視

 この検討会は、東京女子医大や群馬大学附属病院で生じた医療事故を重くみて、「大学附属病院のガバナンス改革をいかに行うべきか」を議論するために設置されました(関連記事はこちらこちらこちら)。具体的な検討テーマは、▽病院としての適切な意思決定を行うための体制▽管理者の資質や選任方法―など。16日の会合では、次の3氏から意見を聴取しました。

(1)草刈隆郎構成員(がん研究会理事長)

(2)山本修一オブザーバー(千葉大学医学部附属病院長)

(3)森山寛オブザーバー(東京慈恵会医科大学名誉教授)

 (1)の草刈構成員によると、がん研究会では次のようなガバナンス体制が敷かれています。

▽一般企業の株主総会に当たる「評議員会」:外部の評議員20名で構成され、理事(病院長も理事の1人)・監事・会計監査人の選任・解任を行う権能を持つ

▽一般企業の取締役会に当たる「理事会」:常勤の理事7名と非常勤の理事(外部理事)14名、さらに監事4名で構成され、代表理事・業務執行理事の選定・解職、重要な使用人(病院長など)の選任・解任を行う権能を持つ

▽一般企業の執行役員会に相当する「経営会議」:理事(病院長も理事の1人)、名誉院長、副院長、研究本部長などで構成され、副院長、院長補佐、病院診療科部長、経営本部部長などの選定・解職を行う権能を持つ

▽経営会議の下に、「経営本部」(総務部や財務部、人事部、医事部など)、「病院本部」(がん研有明病院)、「研究本部」(がん研究所、がん化学療法センター、ゲノムセンター)が設置される

▽病院長の下に安全・倫理・施設担当の副院長が置かれ、さらに医療安全担当の院長補佐が設置される。院長補佐は「医療の質」や「院内感染対策」「医療安全管理」などの委員会を統括する

がん研究会のガバナンス体制、評議員会が理事を選任し、うち1名が病院長となる。医療安全については理事長直轄のチーフコンプライアンスオフィサー(外部者)が設定されている

がん研究会のガバナンス体制、評議員会が理事を選任し、うち1名が病院長となる。医療安全については理事長直轄のチーフコンプライアンスオフィサー(外部者)が設定されている

 ここから病院長は「外部の評議員によって選出される」ことが分かります。

 また医療安全については、院長補佐が統括する委員会が設置されますが、そこには理事長直轄のチーフコンプライアンスオフィサーが出席します。チーフコンプライアンスオフィサーは医療職ではなく、いわば患者・利用者の視点で委員会に出席し、会議の内容に不明点や一般には分かりにくい部分があれば、随時質問するといいます。草刈構成員は「がん研究会の外にいる方が、医療安全確保に向けて目を光らせている」と強調しました。

 なお、がん研有明病院の院長に任期はありませんが、「理事の任期(2年)」「定年(70歳)」が定められているため、「最も長く病院長を務めた方で5年ほど、通常は3年ほどである」と草刈構成員は説明しています。

大学附属病院長の選任、外部者が入った選考会議を求める意見

 (2)の山本オブザーバーからは、千葉大病院の状況とともに、国立大学附属病院長会議の考え方が説明されました。

 千葉大病院では、病院規定に基づいて「附属病院長は、医学研究院から推薦された複数の候補者の中から、学長が任命する」ことが紹介されました。病院長は病院の管理・運営に関する業務を統括する責務を負い、その中には当然「医療安全の確保」も含まれます。

 ところで、大学附属病院長には、強力な「経営力」と「マネジメント力」が求められます。附属病院は他の研究機関に比べて格段に規模が大きく、厳しい経営環境の中で「利益」を生み出さなければならないためです。後者について山本オブザーバーは「大学附属病院は、いわば『利幅の小さい』高難度医療を提供しながら、あわせて研究・教育を実施しなければならない」点を強調し、極めて経営が難しい状況を訴えました。

 さらに山本オブザーバーは、大学附属病院のガバナンス強化に向けて、次のような点を病院長の選任・任命手続き(内部規則)に盛り込むことが必要と訴えています。近く、国立大学附属病院長会議から提言として取りまとめられる模様です。

▽医学教育・医学研究・高度医療を担う大学附属病院の病院長として求められる必要な資質・能力の明文化

▽病院長の職務・権限の明確化

▽病院長選考を複数候補者の下で実施

▽病院長の選考過程の透明化を図るため、広くステークホルダーの意見を反映させるよう「病院長選考会議」を設置

 山本オブザーバーは「大学附属病院長の選任は、選挙と学長の任命とのいずれの方法によってもメリットとデメリットがある。要は透明性を確保するために、外部の人間が入った選考会議を設けることが重要ではないか」と説明しました。

 なお、およそ半数の国立大学附属病院では、専任の医療安全管理部教授(医療ゼネラルリスクマネジャー)を採用し、医療安全管理体制を強化を図っていることも紹介されています。

大学附属病院長を補佐する体制の強化も重要

 (3)の森山オブザーバーは、私立医科大学附属病院のガバナンス体制に関するアンケート調査結果(途中経過)や慈恵会医大病院の状況に合わせて、ガバナンス強化に向けた考え(私見)を披露しました。

 アンケート調査からは、私大附属病院では▽病院長サポート体制の強化医療安全管理体制を強化するための認証制度創設▽処遇の拡充―などが必要と感じていることが浮かび上がってきました。また、山本オブザーバーと同様に「高コストの教育・研究を行いながら、病院経営を行うという厳しい環境にあり、支援や診療報酬による手厚い手当が必要」と森山オブザーバーも訴えました。

 また森山オブザーバーは「私見」と断りながらも、「病院長の選出方法は指名・選挙のいずれでもよく、ガバナンスが利き、実効性のある運用しやすい体制や方策の構築が重要」と指摘。さらに院長を補佐しる仕組みを内部で強化することが重要とも強調しています。

塩崎厚労相は「選挙による大学病院長の選出」に違和感

 検討会では、こうした意見を踏まえて今夏をめどに意見を取りまとめる予定です。

 ところで、塩崎恭久厚生労働大臣は、昨年(2015年)11月の「大学附属病院等の医療安全確保に関するタスクフォース」で「多くの大学病院では病院長を選挙で選んでおり、これでは医療安全を最優先にした、継続したリーダーシップには必ずしもつながらないのではないかと感じている」と述べています。例えば、検討会で「大学附属病院に置いて、病院長の選任方法はこうあるべきである」旨の意見が取りまとめられた場合、その選任方法が特定機能病院の承認要件の1つとなる可能性もあり、今後の議論に注目が集まります。

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