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社会医療法人、認定取り消されても一定の場合には収益事業の継続可能―厚労省

2016.4.5.(火)

 今年(2016年)9月から医療法人を巡る規定がいくつか見直されます。例えば、社会医療法人について認定が取り消された場合でも、一定の要件を満たせば収益業務の継続が可能になるほか、社員総会や理事会などの設置規定が明確にされ、さらに合併・分割に関する規定が整えられます。

 厚生労働省はこのほど、次のような通知を発出し、医療法人を巡る規定の見直しを整理しています。

(1)「医療法人における事業報告書等の様式について」の一部改正について(厚労省サイトはこちら

(2)医療法人の機関について(厚労省サイトはこちら

(3)医療法人の合併及び分割について(厚労省サイトはこちら

(4)社会医療法人の認定要件の見直し及び認定が取り消された医療法人の救急医療等確保事業に係る業務の継続的な実施に関する計画について(厚労省サイトはこちら

隣接する都道府県で事業展開する場合、社会医療法人の認定を簡素化

 まず(4)の社会医療法人については、認定人要件の見直しが行われます。具体的には、「2以上の都道府県で病院・診療所を開設している場合であって、医療の提供が一体的に行われているものとして一定の基準に適合するもの」については、すべての都道府県知事ではなく、当該病院の所在地の都道府県知事だけで認定可能となります。

 この場合「一定の基準」は次のように定められました。

▽病院・診療所の所在地のそれぞれの都道府県の医療計画において、当該病院・診療所の所在地を含む地域における医療提供体制に関する事項を定めている

▽当該医療法人の開設するすべての病院、診療所、介護老人保健施設が、当該病院の所在地を含む2次医療圏および当該2次医療圏に隣接した市町村・特別区に所在する

▽当該医療法人の開設するすべての病院、診療所、介護老人保健施設が相互に近接している(概ね10km圏内に所在し、自動車で概ね30分以内で到達が可能)

▽当該病院が、その施設、設備、病床数その他の医療を提供する体制に照らして、当該診療所(隣接市町村に所在するものに限る)における医療の提供について基幹的な役割を担っている(当該病院の病床数が当該診療所の病床数の10倍以上で、患者の状態に応じて、当該病院または当該診療所の受診を容易に選択できる地理的環境にある)

2以上の都道府県で病院・診療所などを展開する医療法人が社会医療法人になろうとする場合、一定の要件(近接など)を満たせば認定手続きが簡素化される

2以上の都道府県で病院・診療所などを展開する医療法人が社会医療法人になろうとする場合、一定の要件(近接など)を満たせば認定手続きが簡素化される

 また、社会医療法人の認定を取り消されても、「救急医療等確保事業に係る業務の継続的な実施に関する計画が適当である」旨の都道府県知事の認定を受けた場合には、収益業務の継続が可能になります(関連記事はこちら)。

 さらに、この認定を受けることで、「課税対象となる累積所得金額からその計画に記載された救急医療等確保事業に係る業務の実施に必要な施設、および設備の取得価額の見積額の合計額を控除できる措置」を講じるなどして、課税の繰り延べが行われます。

 これらの見直しにより、社会医療法人への認定申請に向けたハードル(天災などで実績要件を満たせず取り消されてしまうと、認定期間内に生じたであろう法人税などを一括で支払わなければならない)が下がるので、医療法人が経営戦略を考える上での選択肢が広がると言えそうです。

医療法人のガバナンス強化に向け、社員総会や理事会などの機関規定を整備

 (2)は医療法人のガバナンスを強化することが狙いです。「社員総会」「理事」「理事会」「監事」といった機関を設置することや、各機関の権能や手続き(例えば定款の変更や写真の入社・除名には社員総会の議決が必要であること、社員の議決権は1人1口であることなど)を明確にしています。

 骨格を見てみると、株式会社でいう株主総会に当たる「社員総会」で、取締役に当たる「理事」の選任・解任を行います。医療法人の最高意思決定機関となります。なお、医療法人が財団である場合には、社員総会ではなく「評議員会」が設置されます。

 理事は理事会を開き、▽医療法人の業務執行の決定▽理事の職務執行の監督▽理事長の選任・解職▽重要な資産の処分・譲り受け▽多額の借財―などの業務を行います。

 なお集合体である理事会が具体的な業務執行を行うのは現実的ではないので、理事の中から理事長を専任し、法人を代表するとともに業務の執行を行います。

 また、法人の業務が適正に行われているかを監査する「監事」を設置し、不当な行為などがある場合には差し止めを行い、また社員総会で意見を求められた場合には説明を行います。

医療法人の最高意思決定機関である「社員総会」(財団では評議員会)が「理事」を選任し、法人の業務を遂行させる(理事会で決定し、執行は理事長)。監事は理事の業務を監査し、適宜、社員総会に報告するなどする。

医療法人の最高意思決定機関である「社員総会」(財団では評議員会)が「理事」を選任し、法人の業務を遂行させる(理事会で決定し、執行は理事長)。監事は理事の業務を監査し、適宜、社員総会に報告するなどする。

医療法人の合併・分解、総社員の同意や都道府県知事の認可が必要

 (3)は、医療法人の合併・分割に関する規定を整理するものです。

 A医療法人とB医療法人が合併して、AまたはB医療法人とする場合(吸収合併)やC医療法人とする場合(新設合併)、各医療法人の「総社員」の同意が必要となります。また財団医療法人では、寄付行為(社団法人で言うところの定款)に「合併が可能である」旨の定めがあり、原則として理事の3分の2以上の同意がある場合に合併が可能です。

 また、合併に際して、合併後の法人の主たる事務所が所在する都道府県知事の認可も必要となります(認可がなければ効力は生じない)。認可にあたって、知事は都道府県医療審議会の意見を聴取しなければいけません。ちなみに効力は「登記」によって発生することが明確にされました。

 A医療法人の事業を分割して、A医療法人と既存のB医療法人に引き継がせる場合(吸収分割)や、A医療法人と新設したB医療法人に引き継がせる場合(新設分割)についても同様で、A医療法人の「総社員」の同意が必要となります。財団医療法人でも、寄付行為に「分割が可能である」旨の定めがあり、原則として理事の3分の2以上の同意がある場合に分割が可能です。

医療法人の分割のイメージ

医療法人の分割のイメージ

 都道府県知事の認可(医療審議会の意見聴取の上)が必要な点も同様です。

 なお、合併・分割では債権者の保護が重要になります。例えばA医療法人に1億円の売掛金がある企業X社があったとします。X社はA医療法人に相当の資産があることから売り掛けを認めていたのですが、「A医療法人がAとBに分割し、資産はすべてB法人に帰属することになった」という場合、X社が1億円の売り掛け金回収が難しくなることも考えられます。

 そこで今般の通知では、債権者を保護するために▽財産目録と貸借対照表の作成▽債権者からの合併・分割に対する異議申し立て―といった規定なども整理しています。

いわゆるホールディングカンパニー型法人の創設は2017年4月施行予定

 なお、今般の医療法人制度の見直しは、昨年(2015年)9月に公布された「医療法改正」に伴うものです。

 改正医療法では、このほかにも▽「地域医療連携推進法人」の創設(いわゆる非営利ホールディングカンパニー型法人として議論されていたもの)(関連記事はこちらこちらこちら)▽貸借対照表・損益計算書の作成と公認会計士などによる監査などの義務化―といった見直しも規定しており、これらは来年(2017年)4月施行が目指されています(関連記事はこちら)。

新たに創設される地域医療連携推進法人(いわゆる非営利ホールディングカンパニー型法人として議論されてきた)のイメージ

新たに創設される地域医療連携推進法人(いわゆる非営利ホールディングカンパニー型法人として議論されてきた)のイメージ

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