Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
GemMed塾 看護モニタリング

医療・福祉分野の活性化によって、地域経済の活性化・地方創生を―日医総研

2016.5.9.(月)

 医療・福祉分野は、経済波及効果において電力事業よりも高く、雇用創出面において他産業よりも突出して高いなど、今後も国内需要が確実に見込める。医療・福祉の活力を高めることで、地域の活性化にもつながる―。

 日本医師会総合政策研究機構は、このほど公表した日医総研ワーキングペーパー「地方創生にむけて医療・福祉による経済・雇用面での効果」の中で、こういった見解を強調しています(関連記事はこちら)。

医療・福祉分野、経済波及効果・雇用創出効果が極めて高い

 総務省は、日本国内で1年間(通常)にどれだけの財・サービスの産業間取り引きが行われたかを「産業連関表」として公表しています。いわば、各産業がどれほどの経済・雇用創出効果を持っているのかを示すものと言えるでしょう。

 それによると、2011年時点で、医療・福祉分野の国内生産額は60兆3000億円、従業者数は629万6000人となっており、いずれも全産業分野の4位となっています。

2011年の国内生産額を見ると、医療・福祉分野は高い水準にあることが分かる

2011年の国内生産額を見ると、医療・福祉分野は高い水準にあることが分かる

 ある産業で発生した需要が、その産業に止まらず、別の産業の生産にどれほど波及しているか(2次波及までに限定)を見ると、医療分野・経済分野は建築分野や公共事業に近い、非常に高い水準となっていることが分かりました。「ライフライン産業である電力事業よりも高い」点に日医総研は着目しています。

医療・福祉分野の経済波及効果も高い水準にあることが分かる

医療・福祉分野の経済波及効果も高い水準にあることが分かる

 次に「ある産業に1の雇用需要が生じたとき、他の産業も含めてどの程度の雇用が誘発・創出されるのか」を見ると、医療・福祉全体では0.17、医療では0.12、介護では0.28となっています。他の産業と比べてみると、特に介護分野で突出して高いことが分かります。

医療・福祉の給与水準は減少傾向

 また、総務省の労働力調査によれば、2014年における医療・福祉分野の就業者数は757万人で、就業者全体の11.9%を占めています。

 その一方で医療・福祉分野の1人当たり平均月間現金給与総額は減少傾向にあり、大きなシェアを占める医療・福祉分野の減少が、就業者全体の給与を押し下げていると日医総研は見ています。

医療・福祉分野の給与水準は減少傾向にあり、これが全産業の給与水準を押し下げているのではないかと日射総研は分析している

医療・福祉分野の給与水準は減少傾向にあり、これが全産業の給与水準を押し下げているのではないかと日射総研は分析している

 医療・福祉分野の給与動向は、診療報酬・介護報酬に大きな影響を受けます。ここで「診療報酬・介護報酬は、他産業の給与水準と、医療・介護分野の給与水準との格差を是正する役割がある」ことを考慮すれば、「医療・福祉分野の給与が下がる」→「全産業の給与が低迷する」→「診療報酬・介護報酬が引き上げられない」→「医療・福祉分野の給与も上がらない」という悪循環に陥っているのではないかと日医総研は分析しているのです。

かかりつけ医の地域偏在も進む

 さらに日医総研では、地域における診療所の整備状況を分析。それによると「オールジャパンでは診療所は増加傾向にあるが、青森県、山口県、徳島県、島根県、鳥取県などでは過去15年間に減少傾向にある」ことが分かりました。これは「身近な医療機関である診療所」、ひいては「かかりつけ医・主治医」の地域偏在が拡大していることを意味しています。日医総研では、「市町村ベースでは地域偏在がさらに顕著である」点も指摘します。

青森県や山口県、島根県、鳥取県などでは、過去15年間に診療所数が減少している

青森県や山口県、島根県、鳥取県などでは、過去15年間に診療所数が減少している

全国には、診療所数が1ないしゼロの市町村が少なからずある

全国には、診療所数が1ないしゼロの市町村が少なからずある

 我が国では、先進諸国に比べてがん検診などの受診率が低いにもかかわらず、がんが早期に発見される割合が高いことが知られており、この背景には「身近なかかりつけ医が総合的な健康管理を行っているのではないか」との指摘もあります。

 こうした「医療・福祉が雇用の重要な受け皿になっている」「かかりつけ医のいる診療所が減っている市町村もある」といった状況を勘案し、日医総研では「医療・福祉の活力を高めることが、地域経済の活性化、地方創生にもつながる」と強く訴えています。

【関連記事】
医療・介護への財源投入は、雇用創出や経済発展にも寄与する―日医総研
16年度の社会保障費は6700億円増、診療報酬の大幅マイナス改定の可能性も―厚労省16年度予算概算要求
財政審、診療報酬本体引き下げ提言、社保費の伸びを5千億円弱に
消費税アップの負担増「診療報酬対応に限界」-日病協調査、「税制改正で抜本対応を」

診療報酬改定セミナー2024