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診療報酬改定セミナー2024 看護モニタリング

肥満者のほうが健康リスクが高く、その内容も複雑―健保連調査

2016.6.24.(金)

 2014年度に特定健康診査を受診した326万4499人が抱える健康リスクを見てみると、肥満でない人(全体の63.1%)よりも肥満の人(全体の36.9%)のほうが、生活習慣病治療薬を服用していたり、特定保健指導の受診勧奨レベルに達している人の割合が多い。また肥満者ではより複雑な健康リスクを抱えている―。

 このような状況が、健康保険組合連合会(健保連)が22日に公表した「健診検査値からみた加入者(40-74歳)の健康状態に関する調査分析」から明らかになりました(健保連のサイトはこちら)。

血圧・脂質・血糖に限ると、肥満者の3割以上が生活習慣病治療薬を服用

 健保連ではデータヘルスに積極的に取り組んでおり(関連記事はこちらこちらこちら)、今般、2014年度に特定健康診査(40-74歳を対象とする、いわゆるメタボ健診)を受診した326万4499人を対象に、どのような健康状態にあるのかを分析しています。

 まず全体像を見ると、全体の63.1%に当たる206万人強が「非肥満」、36.9%に当たる120万人強が「肥満」と判断されています。「肥満」の判断基準は、▽内蔵脂肪面積が100平方cm以上、またはBMI25以上▽腹囲が男性85cm以上、女性90cm以上―などとなっています。

 非肥満者では、血圧・脂質・血糖の3つの健診項目が基準範囲内となっている人が最も多く非肥満者の51.2%、ついで「保健指導基準値以上」24.9%、「服薬投与」13.3%、「受診勧奨基準値以上」10.6%という状況です。

 これに対し、肥満者では、基準範囲内となった人の割合は18.2%と最も少なく、「保健指導基準値以上」29.2%、「受診勧奨基準値以上」21.1%、「服薬投与」31.4%となっています。

肥満者と非肥満者で、▽血圧▽脂質▽血糖―の3項目に関するリスク保有状況を見ると、肥満者のほうが高リスク保有者が多いことが分かる

肥満者と非肥満者で、▽血圧▽脂質▽血糖―の3項目に関するリスク保有状況を見ると、肥満者のほうが高リスク保有者が多いことが分かる

 保健指導基準値は、血圧では「収縮期130mmHg、拡張期85mmHg」、脂質では「中世脂肪150mg/dL、HDLコレステロール39mg/dL、LDLコレステロール120mg/dL」などと設定されており、また受診勧奨基準値は、血圧では「収縮期140mmHg、拡張期90mmHg」、脂質では「中世脂肪300mg/dL、HDLコレステロール34mg/dL、LDLコレステロール140mg/dL」などと設定されています。名称どおり、保健指導基準値を超える検査結果が出た場合には特定保健指導の対象となり、受診勧奨基準値を超えるレベルにある人には医療機関の受診が勧められます。

特定健診は、検査結果の値によって保健指導レベルや医療機関の受診勧奨レベルに分けられる

特定健診は、検査結果の値によって保健指導レベルや医療機関の受診勧奨レベルに分けられる

 このように肥満者では、そうでない人に比べて健康リスクの高い人の割合が圧倒的に高いことが改めて明確になっています。

肝機能を加えて健康リスクを見ると、肥満者の65%超が治療が必要なレベル

 また血圧・脂質・血糖に肝機能を加えた4項目の健康診査結果を見ても同様で、次のように肥満者のほうが健康リスクの高い人の割合が多いことが分かります。

▽非肥満者:基準範囲内26.6%、保健指導基準値以上34.9%(A1)、受診勧奨基準値以上38.5%(B1)

▽肥満者:基準範囲内6.0%、保健指導基準値以上28.9%(A2)、受診勧奨基準値以上65.1%(B2)

肥満者と非肥満者で、▽血圧▽脂質▽血糖▽肝機能―の4項目に関するリスク保有状況を見ると、肥満者のほうが高リスク保有者が多いことが分かる

肥満者と非肥満者で、▽血圧▽脂質▽血糖▽肝機能―の4項目に関するリスク保有状況を見ると、肥満者のほうが高リスク保有者が多いことが分かる

肥満者のほうが、健康リスクが複雑な傾向

 では、肥満者は具体的にどのような健康リスクを抱えているのでしょうか。

 保健指導基準値以上の人(前述のA1とA2)について見てみましょう。肥満者の保健指導基準値以上者(A2)では、「脂質」に関するリスクを抱える人が最も多く22.1%、次いで「脂質と肝機能」のリスク保有者10.4%、「血糖と脂質」のリスク保有者9.9%となっています。

 逆に非肥満者の保健指導基準値以上者(A1)では、「脂質」のリスク保有者が圧倒的に多く37.7%、次いで「血糖」リスク11.9%、「血圧」リスク8.8%という状況です。

 ここから「肥満者では、複数の健診項目についてリスク(複雑なリスク)を抱える人が多い」と言えそうです。

保健指導対象レベルである人の健康リスクを、肥満者と非肥満者で比較すると、肥満者のほうが複雑(複数項目)であることが分かる

保健指導対象レベルである人の健康リスクを、肥満者と非肥満者で比較すると、肥満者のほうが複雑(複数項目)であることが分かる

 

 また、受診勧奨基準値以上の人(前述のB1とB2)を見てみると、肥満者(B2)では、「脂質」に関するリスク保有者が最も多く33.9%、次いで「血圧」リスク15.3%、「血圧と脂質」リスク10.9%となっています。

 非肥満者(B1)では、「脂質」のリスク保有者が最多で54.4%、次いで「血圧」リスク17.8%、「血圧と脂質」のリスク8.1%と続いています。

 この結果からも、「肥満者の健康リスクは複合的である」ことが伺えます。

治療対象レベルである人の健康リスクを、肥満者と非肥満者で比較すると、肥満者のほうが複雑(複数項目)であることが分かる

治療対象レベルである人の健康リスクを、肥満者と非肥満者で比較すると、肥満者のほうが複雑(複数項目)であることが分かる

血圧・血糖・肝機能は7割弱が正常レベルだが、脂質は3割強にとどまる

 次に、肥満者・非肥満者のいずれでも健康リスクのトップを占めている「脂質」について、少し詳しく見てみましょう。

 基準値範囲内の人は37.7%と最多ですが、「保健指導基準値」以上30.3%、「受診勧奨基準値」以上32.1%となっており、「正常の人と指導レベルの人、治療レベルの人が3分の1ずつ」と言えそうです。他の健診項目である「血圧」「血糖」「肝機能」については、正常の人(基準値範囲内)の割合が7割弱であることと比べると、脂質に関するリスク保有者が著しく多い事がわかります。

血圧・血糖・肝機能比較して、脂質に関しては健康リスク保有者の割合が著しく高い

血圧・血糖・肝機能比較して、脂質に関しては健康リスク保有者の割合が著しく高い

 被保険者・被扶養者別、年齢階級別に、脂質に関するリスクの程度を見ると、55-64歳の被扶養者で受診勧奨基準値以上(治療が必要なレベル)の人が多く、逆に40-49歳の被扶養者では基準値範囲内(正常なレベル)の人が多いことがわかりました。

 一方、被保険者では年齢が上がるに連れて基準値範囲内の人が若干増加していくことも分かりました。

 リスクの状況が被保険者(さらにどのような業種で働いているのか)か被扶養者か、年齢はどの程度なのかによって異なることから、ヘルスケア対策なども変えていく必要がありそうです。

被保険者・被扶養者別、年齢階級別に脂質に関する健康リスクを見てみると、「40歳代の被扶養者」ではリスク保有者が少なく、一方、50歳代の被保険者や60歳代の被扶養者ではリスク保有者が多い

被保険者・被扶養者別、年齢階級別に脂質に関する健康リスクを見てみると、「40歳代の被扶養者」ではリスク保有者が少なく、一方、50歳代の被保険者や60歳代の被扶養者ではリスク保有者が多い

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