総合診療医と精神科医を配置した「認知症専門病棟」を整備せよ―日慢協・武久会長
2016.7.1.(金)
身体合併症を伴う認知症患者に適切な入院医療を提供するため、総合診療医と精神科医が共同診療する「認知症専門病棟」を整備する必要がある―。
日本慢性期医療協会の武久洋三会長は、30日の通常総会後に開いた記者会見で、このような構想を述べました(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
削減される精神病床を一般・療養病床に転換し、「認知症専門病棟」を整備
高齢化が進展する中で認知症患者も増加しており、厚労省は「2025年には約700万人(65歳以上高齢者の約5人に1人)になる」と推計しています。
政府もこの点を重視し、新オレンジプランを2015年1月に策定し、認知症対策を進めています。しかし、認知症や精神病床については次のような課題があると武久会長は指摘します。
▽高齢の認知症患者は、多くの身体合併症を伴っているが、現在の認知症治療病棟など精神病床には、現実的には精神科以外の医師配置が少なく、十分な治療が行えていない
▽家族・認知症患者本人には「精神病院には入りたくない」という思いがある
一方、「精神科医療の機能分化と質の向上等に関する検討会」は2012年6月に、「機能分化や、入院患者の地域移行を進め、結果として精神病床は減少する」旨の報告書をまとめています。つまり将来的に精神病床は削減の方向にあると言えます。
こうした状況を総合的に踏まえて武久会長は、(1)削減される精神病床を一般・療養病床に転換し、「認知症専門病棟」とする(2)総合診療医(内科)と精神科医の共診とする―都の構想を打ち出しました。
また(1)については、「精神病床から一般・療養病床(認知症専門病棟)への転換」のみならず、「療養病棟から認知症専門病棟への転換」も進めることで、患者・家族が安心して入院でき、適切な治療を行うことができると強調しています。
診療報酬上の『認知症治療病棟入院料』を算定する病床は、2013年7月1日時点で3万4500床弱ですが、武久会長は「認知症専門病棟は、その倍(つまり7万床程度)は整備する必要がある」と見通し、早期の整備を厚労省に提言していく考えです。
武久会長はじめ、現執行部体制を継続
ところで、日慢協は30日に通常総会を開催し、2018年度の同時改定(診療報酬と介護報酬)に向けて、▽武久洋三会長▽中川翼副会長▽安藤高朗副会長▽池端幸彦副会長▽清水紘副会長▽松谷之義副会長―を再任し、現執行部体制を継続することを決定しました。
武久会長は、「日慢協は、病院経営の安定を目指す団体ではない。医療の質向上を目指す学術団体として提言していく」との考えを強調しています。
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