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がん拠点病院の緩和ケア体制、「精神的苦痛緩和の専門職配置」「放射線科・麻酔科との連携強化」など進めよ―がん緩和ケア部会

2022.4.19.(火)

今年(2022年)7月にがん診療連携拠点病院等の指定要件見直しが行われるが、緩和ケア体制を充実させるために、例えば「精神的苦痛を緩和するための専門資格保有者配置が望ましい」「疼痛緩和にはオピオイド投与以外にも放射線治療・神経ブロックなどの手法があることの周知徹底」「外来緩和ケアの充実」などに事項を盛り込んではどうか―。

4月13日に開催された「がんの緩和ケアに関する部会」で、こうした内容の提案事項が概ね固められました。今後、中川恵一座長(東京大学大学院医学系研究科特任教授)と厚生労働省とで文言の最終整理を行い、がん診療連携拠点病院等の指定要件見直しを議論する「がん診療提供体制の在り方に関する検討会」や「がん診療連携拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループ」に提案内容が報告され、そこでの議論を待つことになります。

豪州PCOCに倣い、本邦でも「緩和ケア患者登録システム」構築が望まれる

我が国の死因第1位を独走する「がん」を克服するため、予防・治療・共生・研究・基盤整備といった諸施策は、概ね5年を1期とする「がん対策推進基本計画」に沿って進めることとなっています。現在、2018-22年度を対象とする第3期計画が稼働しており、今後、2023年度からの新たな第4期がん対策推進基本計画策定に向けた議論が本格化します。

また、「日本全国のどの地域に住んでいても、優れたがん医療を受けられる体制を整える」(均てん化)という方針の下、我が国では、▼高度ながん医療を提供する「がん診療連携拠点病院」等▼小児特性に踏まえた高度がん医療を提供する「小児がん拠点病院」等▼ゲノム解析結果を踏まえて適切ながん医療提供を目指す「がんゲノム医療中核拠点病院」等―の整備が進められています。

がん医療は高度化(例えば新たな医療技術の開発・普及など)し、患者ニーズも多様化しており、がん医療を取り巻く環境は絶えず変化します。このため「がん診療連携拠点病院」等の指定要件についても定期的に見直すことが求められます。▼成人拠点・小児拠点では4年に一度▼ゲノム拠点では2年に一度―見直すこととされ、現在、厚生労働省の検討会・ワーキンググループで要件見直し論議が進められ、今年(2022年)7月に新要件が設定される見込みです(関連記事はこちら(がん診療提供体制検討会)こちら(がん診療連携拠点病院等について)こちら(がんゲノム医療中核拠点病院等について)こちら(小児がん拠点病院))。



そうした中で「緩和ケア」に関する要件(がん診療連携拠点病院等における「緩和ケア」体制等の要件)に関しては、緩和ケアの専門家で構成される「がんの緩和ケアに関する部会」(以下、緩和ケア部会)で見直し案を検討。今般、次のような見直し案が概ね固められました。

【がん診断時】
(1)「全てのがん患者に対し、がん相談支援センターの周知が行われるよう、告知を行う場面 や、Patient Flow Management(PFM)に組み込むなどのシステム化を図る」ことをがん拠点病院等の指定要件に盛り込む

【がんの治療期の緩和ケア提供体制】
(2)「全てのがん患者に対して苦痛の把握と適切な対応がなされるよう、▼自施設における仕組みを検討・改善する場を設置し、その詳細を定める▼自施設において苦痛が十分に把握されているかについて、患者からPRO(患者報告アウトカム)を用いる等によりフィードバックを受け、それを踏まえて自施設において組織的な改善策を講じるなどのPDCAサイクルを確保している―」ことをがん拠点病院等の指定要件に盛り込む

【がん治療期の専門的な緩和ケア提供】
(3)「精神症状の緩和に携わる医師には、精神心理的な苦痛の緩和に関する専門資格を有する者であることが望ましい」旨をがん拠点病院の指定要件に盛り込む

(4)「緩和ケアチームに▼薬剤師▼相談支援に携わる者―をそれぞれ1人以上配置している」ことをがん拠点病院の指定要件に盛り込む

(5)「緩和ケアチームは、院内をラウンドなどにより『依頼を受けていないがん患者』も含めて苦痛の把握に努め、必要に応じて、主体的に助言や指導等を行っている」ことをがん拠点病院の指定要件に盛り込む

(6)「難治性疼痛に対する神経ブロック等について、▼自施設における連携等の対応方針を定める▼自施設で実施が困難なため外部医療機関と連携して実施する場合は、その詳細な連携体制を確認しておく▼ホームページ等で、神経ブロックの実施者や連携医療機関名等、その実施体制について公表する―」ことをがん拠点病院の指定要件に盛り込む

(7)「自施設の医療従事者に対し、緩和的放射線治療の院内での連携体制について周知し、患者の紹介等について連携する医療機関に周知する。ホームページ等で、自施設における緩和的放射線治療の実施体制等について公表する」ことをがん拠点病院の指定要件に盛り込む

(8)「自施設の患者に限らず、他施設でがん診療を受けている、または受けていた患者についても緩和ケア外来で受け入れる。神経ブロックや緩和的放射線治療等の専門的な疼痛治療が必要な患者の受け入れを含め、緩和ケア外来への患者紹介について地域医療機関に対して広報等を行う」ことをがん拠点病院の指定要件に盛り込む

【ほか】
(9)「地域で緩和ケアを効果的に提供するための体制について、地域医療機関や在宅療養支援診療所等と検討する場を設置する。緩和ケアチームが地域医療機関や在支診等から定期的に連絡・相談を受ける体制を確保し、必要に応じて助言等を行う」ことをがん拠点病院の指定要件に盛り込む

(10)「緩和ケアセンターは、都道府県と協力する等により、県内の各拠点病院等が緩和ケア提供体制の質的な向上や、地域単位の緩和ケアに関する取り組みについて検討できるように支援を行う」ことをがん拠点病院の指定要件に盛り込む



がんは「死の病」ではなくなってきていますが、一般患者にとって「がん」と診断を受けることは非常に大きなストレスとなります。このため、告知段階から「身体的および精神的な苦痛」を除去することが極めて重要であり、がん拠点病院等に緩和ケア体制をさらに一歩前に進めてもらうことを求めるものと言えるでしょう。



このうち(2)は「緩和ケアに関する患者登録システムの構築」も視野に入れていると言えます。オーストラリアではPCOC(Palliative Care Outcome Collaboration、ピーコック)とよばれる患者登録システムを構築。そこでは、がんに限らず「死亡症例の25%、専門的緩和ケアを実施した症例の80%」について、▼患者の症状▼患者による疼痛等の評価結果(自己評価)▼家族・医療従事者による疼痛等の評価結果(第三者評価)―が登録されます。その登録データをもとに、「他施設とのベンチマーク」を行い「自施設の取り組みの改善」につなげています(PDCAサイクルが回転している)。これにより、例えば「重度、中程度の痛み」が「軽度以下」になった患者の割合が、徐々に向上しているという具体的な成果も上がっています。診療の質向上には「ベンチマーク」が欠かせません。

豪州PCOCの概要(がん緩和ケア部会1 220413)

PCOCの収集データ(抜粋)(がん緩和ケア部会2 220413)

PCOC構築後、痛みの軽減効果が出ている(がん緩和ケア部会3 220413)

PCOCでは、自施設の緩和ケア状況を他施設とベンチマーク可能(がん緩和ケア部会4 220413)



我が国でも、日本緩和医療学会が、このPCOCに倣ったパイロットスタディを実施。緩和ケアに積極的に取り組む8施設において、318名の患者を対象にデータの登録を行いました。

その結果、「患者自身が体調を把握し、自己効力感が高まった」「医療者が患者状態を包括的に把握できるようになった」とのメリットがあることが分かりましたが、一方で「データを登録する医療従事者の負担が大きい」「評価を受ける患者の負担も大きい」というデメリットも判明しました。また「嘔吐」や「気がかりな事項への対応」といった点で緩和ケアチームが相当程度機能している一方、「家族の不安・患者の不安の解消」「抑うつの解消」といった点では緩和ケアチームの機能が十分に発揮されていない状況も明らかになっています。

今後、日本版PCOC構築に向けて「医療者・患者の負担軽減のために、登録データ内容の厳選などを行っていく」考えを木澤義之構成員(筑波大学附属病院教授、日本緩和医療学会 理事長)は明らかにしています。このデータをもとに「緩和ケアの質向上に向けて、どこに力を注ぐべきか」もより明確になってくると考えられます。

緩和ケアチームの介入による1週間後の項目別効果(がん緩和ケア部会5 220413)

精神的苦痛の緩和に向け「専門資格保有者の配置が望ましい」との要件を盛り込んでは

また(3)は、現在の指定要件では「精神症状の緩和に携わる医師」に関し、専門資格に関する規定はないところ、「精神心理的な苦痛の緩和に関する専門資格を有する者であることが望ましい」旨の規定を行ってはどうかという提案です。「望ましい要件」の付加により、全国の拠点病院において「専門資格保有者による精神症状の緩和」が進み、より緩和ケアの質が高まることを小川朝生構成員(国立がん研究センター先端医療開発センター精神腫瘍学開発分野分野長)や林和彦構成員(聖マリアンナ医科大学客員教授)、前川育構成員(元NPO周南いのちを考える会代表)らは強く期待しています。

ただし、「地域によっては精神科の専門資格保有者が限られ、精神科医の負担が過重になることも予想される」(木澤構成員)、「まず都道府県拠点病院や大学病院などにおいて望ましい要件として盛り込み、段階的に拡充していってはどうか」(林構成員)といった意見も出ています。親組織において「要件化した場合の地域医療への影響」や「段階的導入」などを具体的に詰めていくことになりそうです。中川座長は「放射線領域の要件についても、当初は『望ましい要件』を設置。それにより放射線科医が増加し、段階的に『要件』へと充実させていった経緯がある」ことを紹介し、「医療現場、医師養成現場との歩調を合わせた要件の充実」が重要である旨を強調しています。

関連して「身体症状の緩和に携わる医師」要件について、現在は「専門資格保有者が望ましい」との規定がありますが、「5年程度の経過措置を置いたうえで、専門資格保有者配置を義務化すべき」との意見も出ている点に注目も集まります。

疼痛緩和、オピオイド処方以外にも放射線治療・神経ブロックなどの選択肢もある

また、(6)(7)は「がん患者の疼痛緩和」に関する放射線治療・神経ブロックの重要性を強調するものと言えるでしょう。

「がん緩和ケアガイドブック」では、薬物治療のステップに関わらず、患者に対して疼痛の有無、その内容を確認し「放射線治療・神経ブロックを検討する」ことを推奨しています。この点に関連して、中川座長と小川構成員が「がん診療に携わるすべての医療者」に宛てた「痛みへの対応」パンフレットを作成。そこでは、▼疼痛緩和の選択肢は「オピオイドの処方」だけでなく、「緩和的放射線治療」や「神経ブロック」などもあること▼患者・家族に疼痛緩和の選択肢はさまざまある旨を積極的に情報提供すべきこと▼医師等に疼痛緩和の手法に関する理解を促し、認知度を向上性させるべきこと―などが簡潔にまとめられています。

疼痛緩和には放射線治療・神経ブロックという選択肢もある(1)(がん緩和ケア部会7 220413)

疼痛緩和には放射線治療・神経ブロックという選択肢もある(2)(がん緩和ケア部会8 220413)

疼痛緩和には放射線治療・神経ブロックという選択肢もある(3)(がん緩和ケア部会9 220413)

緩和ケア外来の充実に向けて、様々な手法を検討すべき

他方、(8)の緩和ケア外来については、一部施設において「年間の新規診療症例数が10件未満」である状態が続いていること、中には「年間の新規診療症例数がゼロ」のところもあることなどを踏まえて、「緩和ケア外来の地域医療機関への積極的なPR」など緩和ケア外来の充実を提案するものです。

緩和ケア外来の稼働が不十分な施設もある(がん緩和ケア部会6 220413)



がん拠点病院においては、自施設のがん患者はもちろん、他施設でがん治療を受けている患者、過去にがん治療を受けていた患者も含めて「専門的な疼痛管理」などに取り組むことが期待されます。

この点、拠点病院の指定要件に盛り込むことだけでなく、「診療報酬での対応」(木澤構成員)や「外来化学療法への要件化」(橋口さおり構成員:聖マリアンナ医科大学緩和医療学主任教授、日本麻酔科学会代議員、関連領域検討委員会委員)といった幅広い対応を提案する声も出ています。



こうした提案は、上述のとおり「がん診療提供体制の在り方に関する検討会」や「がん診療連携拠点病院等の指定要件に関するワーキンググループ」に報告され、そこでの議論・検討を待つことになります。がん診療連携拠点病院等の指定要件は、今夏(2022年7月頃)に見直され、来年(2023年)4月から新要件に沿った指定が新たに行われる見込みです。より充実した緩和ケアが全国の拠点病院で提供されることに期待が集まります。



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