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「後発品使いたくない」が14%弱、診療側で浸透も患者側に根強い不信感―中医協総会

2015.11.10.(火)

 医薬品を一般名で処方された場合に後発医薬品を調剤する割合は、2013年度には59.6%、14年度には70.8%、15年度には73.0%と増加しており、後発品へのシフトが進んでいるものの、患者の中には「いくら安くなっても後発品は使用したくない」と考えている人が、依然として14%弱いる―。このような状況が、6日に開催された中央社会保険医療協議会の総会に報告されました。

11月6日に開催された、「第311回 中央社会保険医療協議会 総会」

11月6日に開催された、「第311回 中央社会保険医療協議会 総会」

後発品調剤加算を算定する薬局、改定後に減るが、徐々に増加

 これは、14年度改定の結果検証調査(15年度調査、後発品の使用促進策の影響および実施状況)の速報値として報告されたものです。後発品の使用促進は、医療費の適正化に向けた重要施策の1つに位置付けられており、毎年度の結果検証において調査対象となっています。

 14年度の前回改定では、後発品の使用を更に進めるために、薬局の後発医薬品調剤体制加算を次のように見直しました。

▽後発品の調剤割合を新指標(旧指標では全医薬品に対する後発品割合であったが、新指標では後発品への置き換え可能な薬品に対する後発品割合とした)で55%以上、60%以上に区分し、前者では18点、後者では22点とする

2014年度の前回診療報酬改定で、後発医薬品調剤体制加算の要件を厳しくし、後発品の使用促進を狙った

2014年度の前回診療報酬改定で、後発医薬品調剤体制加算の要件を厳しくし、後発品の使用促進を狙った

 この見直しは「加算の算定を難しくする」ものでしたが、薬局では徐々に後発品へのシフトを進めており、加算を算定している薬局の割合は、13年度は74.3%(旧加算1-3)、14年度は58.4%(新加算1―2)、15年度は68.6%(同)という具合に推移しています。

後発品調剤体制加算を算定している薬局の割合は、2016年度改定(基準を厳しくした)後に減少したが、15年度には徐々に増加している

後発品調剤体制加算を算定している薬局の割合は、2016年度改定(基準を厳しくした)後に減少したが、15年度には徐々に増加している

 後発品を調剤している割合も高くなっており、14年度調査では平均57.2%でしたが、15年度には60.9%で、3.7ポイント上昇しました。

後発品の調剤割合(平均)も、14年度から15年度にかけて増加している

後発品の調剤割合(平均)も、14年度から15年度にかけて増加している

一部の薬局で、極端に「後発品への変更不可」処方せんが多い

 後発品の使用を進めるために、厚労省は「先発品の銘柄を指定した処方せんでも、原則薬局での変更を可とする(不可の場合にはその旨を記載しなければならない)」ことや、「一般名で処方する」ことを推進しています。

 これらの施策は効果を上げており、「先発品からの変更を可能とする処方箋の割合」や「一般名で処方され、後発品が調剤された割合」は、13、14、15年度と年を追うごとに増加しています。

一般名で処方された医薬品の割合、先発品で処方されたが後発品への変更が可能である医薬品の割合は年々増加している

一般名で処方された医薬品の割合、先発品で処方されたが後発品への変更が可能である医薬品の割合は年々増加している

 ただし、「先発品からの変更可能」な医薬品について、実際に後発品を調剤した割合は14年度から15年度にかけてそれほど増加していません(14年度は18.1%、15年度は18.3%)。この背景には、「後発品が薬価収載されていない」ことや「患者が希望しなかった」ことがあります。

処方せんで先発品からの変更可能となっており、実際に変更された医薬品の割合の増加は頭打ちの印象

処方せんで先発品からの変更可能となっており、実際に変更された医薬品の割合の増加は頭打ちの印象

 ところで14年度の結果検証調査では、この点に関連して「後発品への変更不可」とする医薬品の割合が44.8%(13年度調査では22.8%)と大幅に増加したため、中医協総会では支払側の白川修二委員(健康保険組合連合会副会長)が「異常事態」と指摘する場面がありました(関連記事はこちら)。

 しかし15年度調査では「後発品への変更不可」とする処方せんの割合は15.9%で、今度は前回調査よりも大幅に(マイナス28.9ポイント)減少しています。

「後発品の銘柄を指定し、他への変更は不可」された医薬品の割合は、年度ごとに大きな変動がある

「後発品の銘柄を指定し、他への変更は不可」された医薬品の割合は、年度ごとに大きな変動がある

 この変動の大きさはどこから来るのかが気になりますが、厚労省の調査分析によれば「一部の病院で、極めてたくさんの医薬品について『後発品への変更不可』としている」ことが原因のようです。この一部の病院が調査対象に比較的多く含まれると割合が高くなり、少なくなれば割合が低くなるという具合に、抽出調査の限界が招いた事象と言えそうです。前述のように「後発品への変更可」とする処方せんの割合は増加しており、異常事態ではないと考えるべきでしょう。

「他の後発品への変更不可」とする割合が極端に高い(9割超)医療機関が一部にあり、これが調査対象に含まれるかどうかで「変更不可」の割合が多きく変動してしまう

「他の後発品への変更不可」とする割合が極端に高い(9割超)医療機関が一部にあり、これが調査対象に含まれるかどうかで「変更不可」の割合が多きく変動してしまう

一部には、後発品に不信感持つ医療関係者もいる

 ところで、後発品調剤について「積極的に取り組んでいる」薬局の割合も、13年度(50.6%)、14年度(61.4%)、15年度(65.9%)と年を追って増加していますが、一部には「積極的には取り組んでいない」という薬局もあります。

後発品の調剤に積極的な薬局が増えてきている

後発品の調剤に積極的な薬局が増えてきている

 積極的でない理由としては、「後発品の品質(効果や副作用を含む)に疑問がある」「近隣の医療機関が後発品使用に消極的である」「在庫管理の負担が大きい」などが多くなっています。

 また患者によっては積極的に使用しないケースもあり、具体的には「先発品への変更を希望した患者」「初回の受付時に後発品を希望しなかった患者」「先発品との違い(味、色、剤形、粘着力など)を気にする患者」などです。

 なお、薬局サイドは、患者に後発品への変更などを最も理解してもらいやすい方法として「一般名処方」を挙げています(関連記事はこちら)。

 この点について医師サイドは、「患者の希望がある」ことや「後発品の品質(効果や副作用を含む)に疑問がある」という理由で、先発品の銘柄指定をすることが多いことが分かりました。

医師が「先発品の銘柄を指定し、後発品への変更不可」とする理由としては、「効果や副作用に不安がある」とする意見が圧倒的で、他に「患者の希望」などがある

医師が「先発品の銘柄を指定し、後発品への変更不可」とする理由としては、「効果や副作用に不安がある」とする意見が圧倒的で、他に「患者の希望」などがある

 また一般名処方を行っている医師は、病院では48.8%(前回の14年度調査では47.0%)、診療所では68.2%(同65.6%)で、わずかながら増加しています。

一般名処方をしている医師の割合は、少しずつ増加している

一般名処方をしている医師の割合は、少しずつ増加している

患者の7割は後発品使用に積極的

 患者に目を移すと、後発品について「少しでも安くなるのであれば使用したい」と考える人が56.7%、「一定額安くなるのであれば使用したい」と考える人が11.0%おり、あわせて7割弱の人は後発品使用に積極的な意向を持っています。この傾向は男性で、また20歳代の若年者や60歳代後半や75歳以上の高齢者で強くなっています。

 一方で、「いくら安くなっても使用したくない」と考える患者も一定程度おり、全体で見ると13.7%、男性では10.2%、女性では16.1%が後発品に拒否反応を示しています。年齢別に見ると、70歳代前半(21.8%)、50歳代(16.8%)、60歳代前半(16.4%)で後発品を嫌がる傾向が強くなっています。

およそ7割の患者は後発品使用を歓迎しているが、14%弱の患者は「いくら安くなっても後発品は使用したくない」と考えている

およそ7割の患者は後発品使用を歓迎しているが、14%弱の患者は「いくら安くなっても後発品は使用したくない」と考えている

後発品の使用についての考え方は、年齢階級別に若干異なる様相を呈している

後発品の使用についての考え方は、年齢階級別に若干異なる様相を呈している

 後発品を使いたくない理由としては、「効き目や副作用に不安がある」が最も多く75.7%、次いで「使いなれたものが良い」36.0%、「安く売れる理由が不可解」13.5%と続きます。

後発品を使用したくない患者では、「効き目や副作用への不安」を理由に挙げる声が圧倒的である

後発品を使用したくない患者では、「効き目や副作用への不安」を理由に挙げる声が圧倒的である

 後発品については、次の3つの試験を行った上で「先発品と同等である」として薬事承認されますが、国民や医療関係者の一部にある「不信感」を払拭するために、より丁寧な説明が必要なのかもしれません。

▽規格試験(有効成分の含有量が先発品と同等かなど)

▽安定性試験(短期間で経年劣化しないかなど)

▽生物学的同等性試験(有効成分の血中濃度が先発品と同等か)

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