病院のコストマネジメントを成功させる6か条(上) 購買価格の比較、材料の標準化、医療価値の向上…
2015.11.25.(水)
GHCが今月7日に開いた「コスト削減・マネジメント」のセミナーでは、社長の渡辺幸子が病院のコストマネジメントのポイントとして、購買価格の「ベンチマーキング」や「標準化」「適正使用」など6つのポイントを挙げ、コンサルティングによる実例を交えながらこれらの重要性を訴えました。
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~コストマネジメント6つのポイント~
1.購買価格の「ベンチマーク」
2.医療材料の「標準化」 同種同効品の統合がキー
3.「医療の価値」(質/コスト)を上げる
4.「適正使用」 コスト=単価×使用量
5.人件費の「流動化」 将来の病院経営は「固定費吸収モデル」
6.「共同購買」 Group Purchasing Organization(GPO)
中でも購買価格のベンチマーキングでは、同じ銘柄の医療材料であっても病院によって購買価格に大きな格差があり、しかも価格と消費量とは必ずしも相関しないことが分かっています。渡辺はこうした情報を手に入れることがディーラーやメーカーとの価格交渉を有利に進める切り札になると指摘しました。
医療材料の購買価格のベンチマーキングはGHCが今春、「病院ダッシュボード(http://dashboard.ghc-j.com/)」の新機能としてリリースした「材料ベンチ(http://dashboard.ghc-j.com/equip-bench/)」によるものです。このサービスでは、全国の約2100病院がどれだけの単価で医療材料を購買しているか、製品別や用途別に比較して自病院の相対的なポジションを把握できます。
メーカー約1200社の医療材料40万件分のマスターを1-3か月ごとに更新しているので、「材料ベンチ」では常に最新データを使ってベンチマーキングできます。実際に比較すると、医療材料を高価格で購買している病院による消費量が必ずしも少ないわけではなく、低価格の病院の消費量が多いとも限らないことが分かっていて、渡辺は講演で、「(医療材料の購買では)ボリュームディスカウントは全く関係ない」と述べました。
コストマネジメントの2つ目のポイントとして挙げた医療材料の「標準化」は、同種同効の医療材料の使用を費用対効果のより高い品目(銘柄)に絞り込み、その品目の価格交渉に重点を置くというものです。「材料ベンチ」では、購買価格を商品別に比較し、使用実態を変えずに価格交渉する方法を「商品別ベンチマーク」と呼びます。一方、同種同効の視点で材料を分類し、費用対効果の高い「第一選択材料」を決めてこれに7-9割を集約して価格交渉するのが、「商品群ベンチマーク」です=図表1=。
J病院を対象にGHCが進めたコスト削減プロジェクトでは、PTCAバルーンカテーテルを当初の19品目から10品目にまで絞り込んだ上でディーラーと値引きを交渉し、年ベースで約1500万円のコスト削減を実現しました。J病院によるコスト削減の成功のポイントは、循環器の医師全員に使用品目・使用量・使用単価といった情報をすべて提供して協力を得たこと、交渉のノウハウをGHCが購買担当者に伝授したこと、循環器部長自らが価格交渉に臨んだことなどが挙げられます。
渡辺は講演で、DPC病院の1日当たりの診療報酬に費用が包括される心臓カテーテル検査の「血管造影用シースイントロデューサーセット」の使用実態を分析した結果も紹介しました。それによりますと、「一般用」の使用量が全体の9割以上を占める病院が約3分の1ある一方、「蛇行血管用」をメーンにしたり、これら2つを併用したりする病院もあり、ばらつきが大きいことが分かりました=図表2=。
「蛇行血管用」を選択するかどうかは患者側の症状などにもよりますが、何より医師の好みが大きいと考えられます。「一般用」と「蛇行血管用」とでは、償還ベースで1本当たり840円の価格差があるので、「一般用」を標準品にすることでコストの削減が可能になります。渡辺は、「一般用」を院内での標準品にして、「蛇行血管用」を選択する場合の「院内基準」を設けることが標準化のポイントだと述べました。
医療材料の標準化は、医療の品質を維持しながら購買コストを下げることで、「医療の価値」を高めるのが最大の狙いです。
同一銘柄の中で低価格の医療材料に切り替えれば、医療の質を維持したままコストを下げられます。渡辺は「医療の質を維持するだけでも、コストを削減するだけでも駄目。医療の質をコストで割った『医療の価値』を高める方法を考える必要がある」と強調しました。これがコストマネジメントの3つ目のポイントです。
GHCのコスト削減プロジェクトでは、「価値分析チーム」(Value Analysis Team=VAT)と呼ぶ多職種による組織横断的な院長直轄のチームが主導し、材料だけでなく薬剤費や委託経費も対象に改善を進めます=図表3=。
VATは感覚論のみに終始せず、購買価格のベンチマーキングはもちろん、医療の質を可能な限り定量化して「医療の価値」を高めるための経営判断を下します。このような組織横断的な取り組みを、各部署を巻き込んで進めることで、「医療の価値」を高めようという意識が院内全体に醸成され、それが組織の活性化をもたらします。
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