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GemMed塾 看護モニタリング

市場拡大再算定、年間販売額1000億円超などの医薬品が対象に―薬価専門部会

2015.12.7.(月)

 2016年度の次期薬価改定では、市場拡大再算定の対象を「年間販売額1000億円超1500億円以下、かつ予想販売額の1.5倍以上」「年間販売額1500億円超、かつ予想販売額の1.3倍以上」に見直してはどうか―。厚生労働省が、2日に開催した中央社会保険医療協議会の薬価専門部会にこうした提案を行いました。

 委員からは細部についての注文が付きましたが、改定の方向性については了承されており、厚労省は近く「改定の骨子案」を薬価専門部会に提示します。

12月2日に開催された、「第112回 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会」

12月2日に開催された、「第112回 中央社会保険医療協議会 薬価専門部会」

皆保険を維持するための「例外的な制度」に整理しなおし

 市場拡大再算定は、「保険収載時の予測よりも大幅に市場が拡大した(爆発的に売れた)医薬品について価格を引き下げる(再算定)」仕組みです。

原価計算方式における市場拡大再算定の概念図、当初予測の2倍かる年間販売額150億円を超えた品目について価格の引き下げが行われる

原価計算方式における市場拡大再算定の概念図、当初予測の2倍かる年間販売額150億円を超えた品目について価格の引き下げが行われる

類似薬効比較方式における市場拡大再算定の概念図、売り上げ規模などのほかに「使用実態の著しい変化」という要件が加わる

類似薬効比較方式における市場拡大再算定の概念図、売り上げ規模などのほかに「使用実態の著しい変化」という要件が加わる

 この仕組みについてメーカー側は「市場の拡大は、医療機関や患者のニーズに応えたことを意味している。にもかかわらず価格を引き下げるのはイノベーションを阻害するもの」と批判しています。一方、薬価専門部会の委員は「メーカーの意見は分かるが、国民皆保険を守るための仕組みとして理解してほしい」と説明しています。

 こうした状況を受けて厚労省は、市場拡大再算定を「皆保険を維持するための『例外的』な制度」と位置付け、対象を次のように整理しなおすことを提案しました。

▽「年間販売額1000億円超1500億円以下、かつ予想販売額の1.5倍以上」の品目は、最大25%の価格引き下げを行う

▽「年間販売額1500億円超、かつ予想販売額の1.3倍以上」の品目は、最大50%の価格引き下げを行う

 この提案に委員から特段の反対意見は出ておらず、今後、厚労省でより具体的な制度設計が行われます。

新規の後発品の価格、先発品薬価の5割に引き下げ

 診療報酬改定の基本方針でもお伝えしたように、後発医薬品の使用促進が次期改定でも重要テーマの1つに据えられています。厚労省は、後発品の薬価をさらに引き下げることを提案しています。

 具体的には、新規収載の後発品価格について、現在の「先発品の60%(収載品が10品目を超える内用薬では50%)」から、「先発品の50%(同40%)」へと、10ポイントの引き下げが行われます。なおバイオ後続品については、現行の「先行バイオ医薬品の70%」が維持されます。

 また後発品については「同じ成分であっても品目数が多すぎる」との指摘を受け、現在は次の3つの価格帯が設定されています。つまり、どれだけ同じ成分の後発品があろうとも、原則として「最大で3つの価格」に集約されているのです。

▽最高価格の30%未満の算定額となる既収載品は、該当品目すべての加重平均に薬価を統一し、名称も統一する

▽最高価格の30%以上50%未満の算定額となる既収載品は、該当品目すべての加重平均に薬価を統一する

▽最高価格の50%以上の算定額となる既収載品は、該当品目すべての加重平均に薬価を統一する

同一成分・同一規格の後発品のうち既収載品については、最高価格(つまり先発品)をベースにした価格帯が設定され、その中で統一価格が決められている

同一成分・同一規格の後発品のうち既収載品については、最高価格(つまり先発品)をベースにした価格帯が設定され、その中で統一価格が決められている

 この点、「さらなる集約を進めるべき(価格帯を2以下とする)」との意見もありましたが、厚労省は現行の仕組みを維持する考えです。もっとも、2016年度改定後の状況を踏まえて「更なる集約化」に向けた検討が進められます。

 支払側の幸野庄司委員は「更なる集約化」を求めていましたが、2日の薬価専門部会では「成分規格ベースで、1価格帯となっている後発品が7割超(2199成分中1685成分)となっており、自然に集約が進むと考えられる」として、厚労省案に了承しています。

3価格帯ルールの設定によって、後発品の価格ばらつきは大幅に縮小された

3価格帯ルールの設定によって、後発品の価格ばらつきは大幅に縮小された

 

 なお、後発品に関連して「長期収載品(先発品)から後発品への置き換え」も促進されます。具体的にはZ2(後発品への置き換えが進まない長期収載品について価格を特例的に引き下げるルール)における、置き換え率を次のように見直します。

(現行)

▽置き換え率20%未満(2%の価格引き下げ)、▽置き換え率20-40%(同1.75%)、▽置き換え率40-60%(同1.5%)

(見直し案)

▽置き換え率30%未満、▽置き換え率30-50%、▽置き換え率50-70%

 これは後発品の使用割合の目標値が「60%以上」から「70%以上」に引き上げられることを踏まえたもの(10ポイント引き上げ)と言えるでしょう。

 この見直し案について幸野委員は「後発品への置き換えを更に進めるために、価格の引き下げ幅も拡大すべきではないか」と指摘しました。

 しかし、メーカー代表の加茂谷佳明専門委員(塩野義製薬株式会社常務執行役員)や土屋裕専門委員(エーザイ株式会社代表執行役)は「毎回の改定で価格が引き下げられる可能性がある」「特許期間中に開発費用を回収できないケースもあり、長期収載品から得られる利益は重要」と言った状況を説明した上で、引き下げ幅の拡大に強く反対しています。

2014年度の前回薬価制度改革で導入されたZ2、後発品への置き換え率を指標にして、長期収載品の薬価を更に引き下げる仕組み

2014年度の前回薬価制度改革で導入されたZ2、後発品への置き換え率を指標にして、長期収載品の薬価を更に引き下げる仕組み

新薬創出等加算は試行を継続

 このほか厚労省は、薬価算定ルールについて次のような見直し案を示しました。

▽わが国発の画期的な医薬品の開発を進めるための「先駆導入加算」を、同じ趣旨の「先駆け審査指定制度」と合わせ、加算率を最大20%まで考慮できるようにする(名称を「先駆け審査指定制度加算」に変更する)

先駆け審査指定制度の対象となる医薬品は、4つの要件を満たさなければならない

先駆け審査指定制度の対象となる医薬品は、4つの要件を満たさなければならない

▽ドラッグラグの解消を促進するために、未承認薬・適応外薬検討会議で開発要請・公募対象とされた医薬品のうち、「直近の外国での承認日が日本での承認から10年より前」「外国平均価格が算定薬価3分の1未満」のものを外国平均価格調整の対象から除外する

▽基礎的医薬品(薬価収載から25年以上が経過し、薬価と実勢価格の乖離率が全体の平均以下であるなど)の価格を下支えする新たな仕組みを導入する

▽新薬創出・適応外薬海象等促進加算の試行を継続する

 

 こうした見直し案には、前述のようにいくつかの注文がついたものの明確な反対意見は出ていません。厚労省は「方向性は了承された」ものと受け止め、近く骨子案を提示することになります。

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