「患者の状態」と「医療内容」に着目した急性期病床群を参考に7対1の在り方を議論すべき―日病の堺会長
2016.1.12.(火)
7対1病棟、また高度急性期・急性期病棟はどうあるべきなのか、どこかの段階で原点に立ち返った議論をしなければならない―。2016年初の記者会見で、日本病院会の堺常雄会長(聖隷浜松病院総長)はこのように強調しました。
その際、かつて議論された「急性期病床群」の定義案(患者の状態と医療内容の2面で規定)を参考にすべき、との見解も明らかにしています。
2016年度の次期診療報酬改定に向けた議論が、中央社会保険医療協議会で進んでいます。特に7対1入院基本料については、「重症度、医療・看護必要度」(看護必要度)の項目見直しや、これに基づく「重症患者割合」の見直しに向けた議論が注目を集めています(関連記事はこちら)。
7対1入院基本料は10年前に導入されましたが、厚労省の当初の思惑よりもはるかに多くの病床が整備されています。これまでの診療報酬改定では「看護必要度に基づく重症患者割合要件の導入」などが行われましたが、病床数の削減には至っていません。
この点について堺会長は、「日病の内部では、そもそも診療報酬の見直しだけでは病床数の適正化は無理なのではないか、という意見が大勢を占めている」と紹介し、「どこかの段階で、そもそもの議論に立ち返る必要がある」と指摘しました。
例えば、現在、病床機能の分化を進める中で、「高度急性期」「急性期」「回復期」「慢性期」といった病床機能が議論されています。これに対し「7対1は急性期なのか」といった議論は十分になされていません。堺会長は、「そもそも高度急性期・急性期とは何か、患者はどういった医療提供体制を望んでいるのか、という議論を行い、その中で7対1病棟はどうあるべきかを議論していく必要があるのではないか」と述べています。
ところで、厚生労働省は2011年12月から12年6月にかけて、社会保障審議会・医療部会の下に「急性期医療に関する作業グループ」を設置。そこでは、医療法上の一般病床の中に、急性期医療に専門特化した「急性期病床群」というカテゴリーを設置することを検討していました。
具体的には、「心筋梗塞による入院」や「手術前患者」のように、(1)状態が不安定(2)医学的管理や処置などの治療を日常的に必要とする―患者に対し、「比較的高い診療密度を要する医療」を提供する病床を、急性期病床群としてはどうかとの定義案が示されました。
この議論に対しては「病床の機能は急性期だけではない」という指摘が相次ぎ、病床機能報告制度へと姿を変えていったのですが、堺会長は、この急性期病床群の定義案について「説得力があったと思う。あれをもっと明確に示してはどうだろうか」との考えも述べています。
ただし、こうした議論を中医協で行えば「医療費財源というパイ」の奪い合いになってしまうため、堺会長は社会保障審議会の医療部会・医療保険部会などでの議論が好ましいとの見解も明らかにしています。
また堺会長は、病床機能分化について「例えば急性期機能から回復期機能へ移行するには、相当の決断が必要となる。長年かけて培った病院経営者の考えを一朝一夕に変えることは難しい。機能分化は急ぐべきではなく、2025年に向けた長いスパンの中で、適切な形に収れんしていければよいと考えている」とも強調しています。
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