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外来診療 経営改善のポイント 看護必要度シミュレーションリリース

病院長の資質・能力の明確化を特定機能病院の承認要件に、選考プロセスの透明化も―大学病院ガバナンス検討会

2016.4.21.(木)

 特定機能要件の承認要件の一つとして、「病院長の選考プロセスが透明であること」や「病院長に求められる資質・能力についてあらかじめ定めていること」など追加する方向で検討してはどうか―。

 厚生労働省は20日に開催した「大学附属病院等のガバナンスに関する検討会」に、このような検討項目案を提示しました。

 今後、より具体的な議論を行い、特定機能病院の承認要件見直しにつなげる考えです。

4月20日に開催された、「第3回 大学附属病院等のガバナンスに関する検討会」

4月20日に開催された、「第3回 大学附属病院等のガバナンスに関する検討会」

病院の意思決定体制や病院長の選任方法などを検討会で議論

 検討会では、東京女子医大や群馬大学附属病院で生じた医療事故を重くみて、「大学附属病院のガバナンス改革をいかに行うべきか」を議論しています。具体的な検討テーマは、(1)病院としての適切な意思決定を行うための体制(2)管理者の資質や選任方法―の大きく2点(関連記事はこちらこちらこちらこちら)。

 これまでにヒアリングなどを実施し(関連記事はこちら)、その内容を踏まえて20日の会合では厚労省から検討項目案が厚労省から提示されました。具体的には次のような内容です。

(1)病院としての適切な意思決定を行うための体制

(a)開設者と病院長の関係

 ▽病院長が、病院の管理運営に関する業務をつかさどり、職員を統率する職務権限(一定の予算・人事権限を含む)を有することを明確化する

 ▽医学部との権限・運営上の関係を明確化する

 ▽病院長が、大学の理事会や執行役員会に参画できるようし、大学の意思決定がなされる際に、病院長の意向が勘案されるようにする

(b)病院内における病院長のガバナンスなど

 ▽病院長主催の運営会議を位置づけ、審議内容を全職員に共有する

 ▽病院長の補佐体制を充実・強化する

 ▽病院経営を担うスタッフについて、適切な人事・研修による育成を行う

 ▽外部有識者を含めた大学の監事・理事会などが病院運営のチェック・監視機能を発揮する

(2)管理者の資質や選任方法

 ▽病院長の選考プロセスの透明性を確保する

 ▽医療安全管理業務経験に加え、組織マネジメントを実施できる資質・能力など、「病院長に求められる資質・能力」を予め定めておく

 ▽必要に応じて「外部有識者も含めた選考会議」や「公募」なども活用しつつ、最も資質・能力基準に合致するものを選考・任命する

 ▽病院長の選考結果を、理由とともに遅滞なく公表する

 このほか、▽コンプライアンスに係る体制整備と法令遵守の徹底▽病院運営や病院長選考プロセスの透明化―なども検討項目案として提示されました。

病院長が「病院運営を適切に行うために必要な権限」を持つことが重要

 (1a)の「理事会などへの参画」については、例えば国立大学病院では法令で理事の定数が定められていることなどを踏まえ、山口育子構成員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)から「『理事としての参画』以外の参画方法を検討する必要がある」との指摘がありました。文部科学省高等教育局医学教育課の寺門成真課長によれば、「医学部のある国立大学では、理事の定員は3-8人に規定されている」とのことです。

 この点について山本修一オブザーバー(千葉大学医学部附属病院長)は、「総合大学の理事会では附属病院以外の議題も数多くある。病院長は病院運営に専念する必要があり、必ずしも理事である必要はないかもしれない」との考えを述べています。

 また(1)のテーマ全体に関連して野村修也構成員(中央大学法科大学院教授)は、「大学病院の目的規定を見ると『教育と研修』が目的となっている。大学の附属機関であるためと考えられるが、『患者への医療提供』を加味した目的規定に変更する必要がある」旨の見解を披露しています。

 さらに病院長の権限の1つとして、例えば「体制が不十分な中での、極めてリスクの高い高度かつ先進的な医療の実施」などといった不適切な業務を「停止する権限」がクローズアップされました。山口構成員は「最近、慶應大学病院にこうした規定が整備された」ことを紹介しています。

 また楠岡英雄構成員(国立病院機構理事)は、「不適切な治験などが行われてしまう原因の一つに、『停止』のような病院長の権限不足がある」と指摘し、病院長の権限強化が重要であると強調しています。

病院長の選考プロセス明確化に向け、国立大病院長会議が近く提言

 (2)の「病院長の選考プロセス」について、前述の検討項目案では「資質・能力を予め定めておく」こととしています。この点、各病院によって「病院長に求められる資質・能力」は必ずしも一律ではないと考えられることから、仮に特定機能病院の承認要件に盛り込まれた場合には、要件に「予め定めておくこと」という一般的な規定を置き、具体的な内容は各病院で設定することになるでしょう。

 なお、山本オブザーバーからは、「近く、国立大学附属病院長会議から病院長の選任に関する提言を行う」ことが報告されました。主に次の3つの内容が提言される模様です。

▽病院長に求められる資質・能力を明確化するべきである

▽病院長の権限を明確化するとともに、適切な職務遂行に必要な任期を設定するべきである(短すぎると、適切な職務遂行は困難)

▽病院長の選考に当たっては、外部有識者を交えた選考会議を設置し、その意見を十分に斟酌した上で複数の候補者の中から学長が選任するべきである

 

 このほか「コンプライアンス」(法令遵守)体制の整備に関しては、野村構成員から「単なる手続き論に終わってはいけない。目的である『医療安全』に役立っているか否かを、PDCAサイクルを回して検証し、改善する仕組みを整備する必要がある」との指摘がなされました。

 また矢野真構成員(日本赤十字社医療事業推進本部医療経営企画監)は、「病院長だけでなく、組織全体で『医療安全』などを充実していこうという風土・文化を醸成することが必要である」と指摘し、こうした点も検討すべきと提案しています。

 

 検討会では、今後も議論を深め、今夏に報告書を取りまとめる予定です。厚労省は、報告書を踏まえて、▽病院長の職務権限の確保▽病院長の選考プロセスにおける透明性の確保―などを特定機能病院の承認要件に追加していく見込みです。

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