たった1枚のスライドでも病院は変わる、実効性ある資料を最速で作成する手順―病院ダッシュボード入門講座2016(2)
2016.6.22.(水)
たった1枚のスライドが経営改善の出発点となり、病院は大きく変わりえる――。GHCは21日、「改善のポイントが瞬時に分かる」を開発コンセプトにした次世代型病院経営支援ツール「病院ダッシュボード」の入門講座を東京都内で開催しました(関連記事『自病院の「真の強みと課題」は何か?ベンチマークで瞬時に把握し、改善につなげる』)。
病院が経営改善を推進する上での出発点は資料作成です。たった1枚の資料であっても、経営課題を明確にし、誰もが納得する改善提案が示されていれば、病院は変わります。特に、症例数が多い疾患の課題を改善すれば、経営の質はもちろん、医療の質向上にも大きく寄与します。今回の入門講座では、「肺炎(15歳以上)」のケーススタディーなどを通じて、実効性ある資料を最速で作成する手順を学びました。
「改善可能なこと」から取り組む
「病院ダッシュボード入門講座2016春」は、(1)機能を学ぶ、(2)資料の作成方法を学ぶ、(3)プレゼン方法を学ぶ―の3段階に分けて、具体的な改善活動を実践する基礎体力を身に付けるための計3回の講座。今回のテーマは「資料の作成方法」で、GHCコンサルタント兼カスタマーサポート担当で診療情報管理士の薄根詩葉利が講師を務めました。
まず最初に資料作成で意識すべきは、「改善すべき(可能)こと」と「改善不可能なこと」とを分けることです。病院ダッシュボードを用いて分析を始めると、簡単にさまざまな課題が見えてくるはずです。ただ、それらの課題すべての改善活動を一度に進めることは難しいですし、そもそも「改善が不可能なこと」に時間を費やすことは可能な限り避けたいです。優先順位を意識し、すぐに「改善可能なこと」から取り組むことが、理想的な分析活動と言えます。
代表的な改善可能な取り組みは、「標準化、クリティカル・パス推進(エビデンスやベンチマークなどで)」「診療ガイドライン遵守」「適切なDPCコーディング」など。まずはこれらに該当する改善活動になるか否か、また、しっかりと明確な改善提案までをエビデンスやベンチマークを持って示せる否かを意識することが大切です。その上で、明確かつ端的に論点を示し、出てきた論点を積み上げて改善提案できているかどうかが重要になります(関連記事『医師を動かし院内を変革させる資料作成、これだけは押さえたい3つのステップ』)。
「型」で実効性ある分析をスピーディーに
ケーススタディーでは「肺炎(15歳以上)」を取り上げ、講師と参加者が一緒に資料作成の作業を進めました。
病院ダッシュボードで「肺炎(15歳以上)」を選択すると、「平均在院日数」「医療資源」「リハビリ」の3つの大項目が表示されます(図表1)。さらに「平均在院日数」は「在院日数分布」などの中項目に枝分かれしており、この疾患別の大項目から小項目までのツリー構造の図表を「ロードマップ」と呼んでいます。各項目は「青」(良い)、「黄色」(平均)、「赤」(悪い)で色分けして表示されます。
ロードマップは、疾患ごとに表示される項目が異なります。その一つひとつの改善項目には、300超のクライアントを支援し、1500以上の病院経営改善プロジェクトを推進してきたGHCのコンサルティング・ノウハウが詰め込まれています。ですから、ロードマップを見れば、直感的に実効性のある改善のポイントが分かります。こうした実効性ある分析をスピーディーにこなすためには、ある程度の「型」が必要です。
さらに、こちらのロードマップにある各項目をクリックすると、具体的な内容が分かります。例えば、「赤」で表示されている「抗生物質製剤」をクリックすると、その具体的な内容が分かります。図表2の棒グラフは、抗生物質製剤の平均金額と平均使用日数を表しており、左に位置するほど良く、右に位置するほど改善の余地があることを示しています。このデータの自病院は平均金額が3万7929円で、全国平均の2万4784円を大きく上回ります。
このように改善のポイントを瞬時に把握し、かつ具体的なデータもすぐに引き出せることで、改善の論点を積み上げていくことが、病院ダッシュボードでは可能です。
現場に受け入れられやすい提案を意識
論点を確認したら、改善提案です。例えば、リハビリの項目の分析結果で以下のような論点が上がってきました。
・単位数は他病院と比べて圧倒的に多く、実施密度も1割以上高い
・入院4日目からリハビリを実施している症例が多く、他病院に比べてオーダーが遅い
・病院全体としては、リハビリを手厚く実施している
つまり、リハビリ実施率は高く(全国平均は33.8%)、実施密度も高いですが、開始日が他病院に比べて遅いことが課題であることが浮かび上がってきます。改善点は課題の論点にありますが、改善不要の良い論点もしっかりと指摘することで、「他病院と比較して全般的に優れているが、開始日だけは改善の余地があります」と、現場に受け入れられやすい形での提案が可能になります。
図表3の完成した資料では、「提案事項」として端的に改善提案がなされていますが、実際のプレゼンの場では分析結果で良かった論点などを報告しながら提案することで、より実効性のあるプレゼン資料となります。つまり、プレゼンの場も意識することは、資料作成において重要な視点の1つです。
効果的なプレゼン手法については、7月19日の同講座で引き続き解説させていただく予定です。
連載◆病院ダッシュボード入門講座2016春
(1)自病院の「真の強みと課題」は何か?ベンチマークで瞬時に把握し、改善につなげる
(2)たった1枚のスライドでも病院は変わる、実効性ある資料を最速で作成する手順
(3)短期学習でも必ず身に付く、データを軸に医師を動かすプレゼン術