自病院の「真の強みと課題」は何か?ベンチマークで瞬時に把握し、改善につなげる―病院ダッシュボード入門講座2016春(1)
2016.5.19.(木)
DPC制度下では、他病院と自病院を比較し(ベンチマーク)、自病院の優れた点を伸ばすとともに、課題を解決していくことが必要不可欠です。GHCが開発した次世代型病院経営支援ツール「病院ダッシュボード」では、重要な経営指標となるデータを、他病院とベンチマーク分析した上で、誰でも瞬時に、視覚的に分かりやすく改善のポイントを把握することができます。病院ダッシュボードで把握した課題を医師に投げかけることで、院内全体の経営改革に結びつけることができます。
この「病院ダッシュボード」を使いこなしていただくために、GHCでは、病院ダッシュボードを新規に導入された病院の担当者や、人事異動で新しく病院ダッシュボードをご担当される担当者に向け、全3回の「入門講座2016春」をご用意しました。
昨年暮れから今年の初春にかけて実施した「入門講座」をベースに、よりブラッシュアップした内容となっています。
病院ダッシュボードを活用した資料作成、プレゼン演習も
17日には、入門講座2016春の第1回をGHCの新宿オフィスで開催。全国の病院から21名の方にご参加いただきました。
第1回のテーマは「基本演習」。自病院の改善ポイントを瞬時に探るため、病院ダッシュボードをどのように操作すればよいのか、病院ダッシュボードにはどのような機能が装備されているのか、実際にPCを操作しながら学んでいただきました。
ちなみに、第2回(2016年6月21日開催予定)では「院内の会議や委員会へ提出するための資料づくり」、第3回(同7月19日開催予定)では、「プレゼンテーション演習」を行います。
短時間で経営陣や医療スタッフの目に止まり、納得してもらうために、どのような資料を作ればよいのか、どのようなプレゼンが効果的なのか、みっちりと学んでいただきます。
入門講座2016春のメイン講師を勤めるGHCコンサルタント兼カスタマーサポート担当の薄根詩葉利から、診療情報管理士として、実際に急性期病院で病院ダッシュボードを活用。自身の経験をもとに「より効果的に病院ダッシュボードを活用するためのコツ」を伝授いたします。
俯瞰マップ機能で、病院全体の強みと課題を瞬時に把握
病院ダッシュボードを活用して病院を改善するためには、次のようなサイクルを回すことが重要です。
(1)課題をつかむ
↓
(2)課題を明らかにする
↓
(3)改善策を練る
↓
(4)アクションする
↓
(5)検証し、再度(1)からスタート
まず(1)の「課題をつかむ」ためには、病院ダッシュボードの「トップ画面」と「俯瞰マップ」により、現在の自病院の全体像を把握することが効果的です。
病院ダッシュボードは、平均在院日数や期間II超え症例割合などの重要指標を、▽上位25%(青)▽下位25%(赤)▽その中間(黄色)―の3色で表示。赤で表示された項目は「課題がある」ことから、早急に改善に向けた対策を採る必要があります。
例えば「平均在院日数」が赤色表示されていれば、自病院は他病院に比べて平均在院日数が長いことが分かります。在院日数の無用な延伸は、診療密度を低くしてしまうばかりか、「ADLの低下」「院内感染リスクの増加」といった弊害を生む可能性があります。そこで「疾患構成は妥当か」「パスの改善点はないか」といった改善案を探っていくことにつなげられます。
(1)で課題を大づかみした後に、(2)の「課題の明確化」を行います。例えば平均在院日数に課題があることが分かったら、DPC俯瞰マップを活用して「どの診療科で在院日数が長いのか」→「その診療科でも、どの疾患で在院日数が長いのか」と深掘りしていきます。
このように「課題の明確化」を行うことで、限られた院内の資源(マンパワーや時間)を緊急対応が必要な診療科に絞っていくことが重要です。
薄根は、▽月当たりの症例数の変化▽平均在院日数▽期間II超の割合▽手術症例割合▽手術単価▽緊急入院率―などをチェックすることで、課題の明確化を行ってほしいと提案しています。
「ケース分析」「マーケット分析」機能で、課題をピンポイントに洗い出し
(2)で課題を明確にした後は、(3)の改善策の立案フェーズに移ります。
改善案を練るためには、病院ダッシュボードの「ケース分析」「マーケット分析」「チーム医療Plus」「外来分析」「手術分析」「財務分析」といった機能が威力を発揮します。
「ケース分析」機能では、各診療科についてチェックの必要性が極めて高い項目を予めピックアップ。
例えば循環器内科では「心臓カテーテル検査」、神経内科では「脳梗塞(エダラボン使用)などが症例数も多く、病院経営に与えるインパクトが大きい重要項目と言えます。特に「脳梗塞(エダラボン使用)」について薄根は、「『エダラボン投与日数』について7日の症例が多くなっていないか?」と問いかけました。
これは「患者の状態を確認した上で医薬品を適正に投与しているか」をチェックする指標の1つとなります。もし7日の投与が最多であれば「患者の状態像を細かくチェックせず、救急搬送初日に7日間分を投与してしまっている」可能性があります。逆に「3日、あるいは6日の投与が多ければ、患者の状態を細かくチェックした上で投与できている」ことが伺えます。
この場合、「データを示した上で、医師に行動変容を促す」ことにつなげられます。
また厚生労働省が毎年公開している退院患者調査データを基にした「マーケット分析」機能を用いれば、疾患ごとの地域での症例獲得シェアなどを瞬時に把握でき、「自病院が強みと考えている診療領域が、本当に強みとなっているのか」を見ることができます。
さらに「患者エリア分析」機能を使えば、自院の入院患者がどの地域から来院されているのかを視角的に把握できます。どの地域の中小病院やクリニックと連携を深めるべきかなど、今後の地域医療・介護連携の戦略立案において威力を発揮します。
6月、7月に開催する第2回・第3回では、こうした分析をもとに、どのような資料を作成し、どうプレゼンテーションしていくのか、まさに(4)のアクションに向けたノウハウをお伝えするとともに、自ら作成した資料をもとにプレゼンテーション演習を行っていただきます。
連載◆病院ダッシュボード入門講座2016春
(1)自病院の「真の強みと課題」は何か?ベンチマークで瞬時に把握し、改善につなげる
(2)たった1枚のスライドでも病院は変わる、実効性ある資料を最速で作成する手順
(3)短期学習でも必ず身に付く、データを軸に医師を動かすプレゼン術
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