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GemMed塾 病院ダッシュボードχ 病床機能報告

病院の課題や全体像をスピーディに把握、優先順位をつけて課題解決―北海道大野病院が病院ダッシュボードユーザー会で講演

2016.7.8.(金)

 GHCが開発した次世代型病院経営支援ツール「病院ダッシュボード」を使ってスピーディに病院の現状や課題を可視化し、院内で共有。具体的な改善に向けた取り組みを積み重ねることで、実際に、病院経営における重要な指標が向上していることも確認できた―。

 先ごろ、GHCが北海道札幌市で開催した病院ダッシュボードユーザー会で、北海道大野病院からこうした発表が行われました。

ユーザー会P

DPC下で不可欠なベンチマーク、病院ダッシュボードで容易に可視化

 DPC制度下では、病院経営を安定させるために他院と自院を常に比較し、自院の取り組みを改善していくことが不可欠です。例えばDPC包括部分の収益を上げるためには、機能評価係数IIをどれだけ向上させられるかが大きなポイントとなりますが、機能評価係数IIは「相対評価」で設定される部分が大きいため、他院との比較が極めて重要なのです。

 GHCでは、米国におけるDRG下での経験をもとに、「他院との比較」、つまりベンチマークの重要性を制度創設前から把握。コンサルティングのノウハウをベースに、次世代型病院経営支援ツール「病院ダッシュボード」を開発しました。

 具体的には、重要な経営指標となるデータを、他病院とベンチマーク分析した上で、誰でも瞬時に、視覚的に分かりやすく改善のポイントを把握することができます。病院ダッシュボードで把握した課題を医師に投げかけることで、院内全体の経営改革に結びつけることができます。

 GHCマネジャーの塚越篤子は、病院ダッシュボードを活用することで、(1)全体(2)優先順位(3)変化―を容易に「見える化」できることを強調します。

 病院経営においては、さまざまな課題が複合的・重層的に存在します。病院ダッシュボードを用いれば、まず「全体」(いわば森)の状況を俯瞰的に把握。さらに、課題解決に着手するにあたっての「優先順位」を決定できます。多くの課題を限られた人員で一度に解決することはできません。どこから着手することが改善に向けた近道なのかが、病院ダッシュボードから明らかになります。

 病院ダッシュボードは、平均在院日数や期間II超え症例割合などの重要指標を、▽上位25%(青)▽下位25%(赤)▽その中間(黄色)―の3色で表示。改善度合いが「色」で把握でき、モチベーションアップにもつながります。

自院の状況を青・黄・赤で表示、課題のある「赤」項目について対策を

 この病院ダッシュボードを活用して経営面はもちろん、医療の質改善に取り組んでいるのが北海道札幌市にある北海道大野病院です。「心臓血管センター」として地域住民はもちろん、遠隔地の患者にも最新の医療を提供しています。2008年からDPC対象病院となり、現在、ICU9床(実稼動は6床)、一般病床148床(同119床)を保有しています。

 同院事務部情報管理課の木幡武史氏は、まず病院ダッシュボードで「全体」の課題をスピーディに把握することの重要性を指摘します。

 例えば、病院ダッシュボードの標準装備の1つである「ケース分析」機能を用いて、「冠動脈ステント留置術(狭心症)」について分析してみると、大きく診療内容が改善していることが分かります。

 「2012年7-12月」(下図の下段)と「2015年7-12月」(下図の上段)を比較すると、明らかに「赤」が減り、「黄色」と「青」が増えています。前述のとおり、「赤」で示された項目は、「自院が全国のDPC病院の中で下位25%にある」ことを意味しており、早急に改善すべき点といえます。

 

 北海道大野病院では、「平均在院日数」、とくに「術前・術後日数」や「期間II超え割合」に課題がありました。そこで、より具体的にDPC分析ベンチマークシステムEVE(GHCとメディカルデータヴィジョン社が協働開発)を用いてパスの見直しなどを実施。改善がまさに「目に見える」ため、職員のモチベーションアップにもつながります。

病院ダッシュボードから、北海道大野病院では狭心症の冠動脈ステント留置術症例において、かつて(2012年当時)平均在院日数、とくに術前・術後日数に課題があったが、2015年には大きな改善がなされたことが分かる

病院ダッシュボードから、北海道大野病院では狭心症の冠動脈ステント留置術症例において、かつて(2012年当時)平均在院日数、とくに術前・術後日数に課題があったが、2015年には大きな改善がなされたことが分かる

 さらにRI(ラジオアイソトープ)検査の実施状況にも着目。「入院と外来のいずれで検査を実施すべきか」「曜日によって検査実施にバラつきがないか」などを分析し、改善方策を練っています。

多職種連携の推進度合い、「チーム医療Plus」機能で分析

 またチーム医療Plusというオプション機能を用いて、「薬剤管理指導料」の算定状況も分析しています。診療報酬項目の中には、薬剤師や理学療法士などのメディカルスタッフによる行為を評価するものもあります。病床機能の分化・強化や地域包括ケアシステムの構築が進む中では、「多職種連携」が極めて重視されます。病院ダッシュボードでは、多職種連携の進展度合いを、「診療報酬の算定」という側面から見える化しています。

 北海道大野病院では「薬剤管理指導料の算定対象患者に対する、実際の算定状況」が95%となっています。ここから、診療部門と薬剤部門、さらに事務部門との連携が進んでいることが伺えます。

 ただし、残りの「5%」は、ややきつい表現をすれば「算定漏れ」ということになります。木幡氏は、「この原因がどこにあるのか」などを病院ダッシュボードやEVEで詳しく分析し、対策をとることで、より算定率を上げたいと考えています。

 ここで注目できるのは、単に「算定率」を見るだけではなく、「金額」に置き換えた分析も行っている点です。木幡氏の分析によれば、算定漏れによって年間592万円の「機会損失」が生じていることが分かります。つまり算定率を100%にすれば592万円の増収となるのです。さらに、薬剤管理指導を充実すれば200万円超の増収も見込めるため、このデータを会議等に提示し、具体的な対策に結び付けているといいます。

 ちなみに、病院ダッシュボードは分析だけではなく、画面を容易にPDF化し、印刷することで『院内会議』用の資料を容易に準備することができます。

 

 ところで、北海道大野病院はこの10月に、札幌市の西区宮の沢に新病院を開院する予定です。そこでは、循環器だけではなく、「がん」「脳卒中」「心臓病」の三大疾患と運動器疾患を中心とした急性期医療を展開する考えです。

2016年10月、北海道大野病院は札幌市西区宮の沢に新病院を開設する予定

2016年10月、北海道大野病院は札幌市西区宮の沢に新病院を開設する予定

 病院の新規開設で力を発揮するのが、病院ダッシュボードの「マーケット分析」機能です。厚労省が公表しているデータをベースに、例えば札幌市では、脳血管疾患についてどの病院がどの程度のシェアを持っているのかを把握することができるので、「どの地域に開設すべきか」を考える際に重要な参考資料となります。

【北海道大野病院の横断的多職種の皆さん】前列右から診療情報管理士 大友氏、医療安全管理 斉藤氏、看護部 渡邉氏、後列右から薬剤師 片田氏、五十嵐氏、情報管理課  木幡、看護部 本田氏、後列左はGHCマネジャーの塚越篤子

【北海道大野病院の横断的多職種の皆さん】前列右から診療情報管理士 大友氏、医療安全管理 斉藤氏、看護部 渡邉氏、後列右から薬剤師 片田氏、五十嵐氏、情報管理課 木幡、看護部 本田氏、後列左はGHCマネジャーの塚越篤子

解説を担当したコンサルタント 塚越 篤子(つかごし・あつこ)

tsukagoshi 株式会社グローバルヘルスコンサルティング・ジャパンのコンサルティング部門マネジャー。
テンプル大学教養学部経済学科卒業。経営学修士(MBA)。看護師・助産師として10年以上の臨床経験、医療連携室責任者を経て、入社。医療の標準化効率化支援、看護部活性化、病床管理、医療連携、退院調整などを得意とする。済生会福岡総合病院(事例紹介はこちら)、砂川市立病院など多数の医療機関のコンサルティングを行う。新聞の取材対応や雑誌への寄稿など多数(「隔月刊 地域連携 入退院支援」の掲載報告はこちら)。

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