第8次医療計画における「新興感染症対策」、医療現場の混乱さけるため入院調整権限などは都道府県に一本化—社保審・医療部会(2)
2023.3.3.(金)
第8次医療計画においては「新興感染症対策」を盛り込むことになり、現在、関係検討会などで議論が進められている。そこでは、例えば医療現場の混乱を避けるために、例えば入院調整権限などは中核市に付与せず「都道府県に一本化する」方向などで調整が進められている—。
2月24日に開催された社会保障審議会・医療部会では、こういった議論も行われました。
「知事の要請から1週間で即応化せよ」と求めることなどに医療現場から問題視的も
2024年度からの第8次医療計画から「新興感染症対策」を包含することとなり、例えば次のような議論が行われています(関連記事はこちら)。
▽「流行初期に対応する医療機関」「入院医療を担当する医療機関」「外来医療を担当する医療機関」「自宅療養患者などに往診・訪問診療などを行う医療機関や訪問看護ステーションなど」「後方支援を担う医療機関」「医療人材の確保・派遣」などについて、医療機関等と都道府県で協定を締結し、医療計画に記載する
▽新興感染症が発生した場合には、▼まず特定感染症指定医療機関・第一種感染症指定医療機関・第二種感染症指定医療機関が中心に対応する▼次いで、流行が確認された場合には「流行初期に対応する」特別協定を締結した医療機関(500施設程度)が対応し(3か月程度を想定、減収分の補填が行われる)▼補助金や診療報酬臨時特例が整ってきた段階で、「入院医療を担当する」などの協定を結んだ医療機関等(1500施設程度)が対応する—という段階的対応が想定する
▽協定締結が円滑に進むよう、各医療機関等の基準などを明確に定めるとともに、各都道府県で医療資源などの調査を行い、管内医療機関で役割・機能についての協議を行っていく
「第8次医療計画に関する検討会」「厚生科学審議会・感染症部会」でさらに議論を重ねて、それを厚生労働省が指針として提示。都道府県で指針を求め医療計画や予防計画を作成し、協定締結を進めていきます。
医療部会では、今後の新興感染症対策論議に向けて▼入院調整などは、現場が混乱しないように「都道府県に一本化」すべき(島崎謙治委員:国際医療福祉大学大学院教授)▼協定に沿った医療提供体制が構築できるよう、平時から人材育成や設備整備などを進めるべき(佐保昌一委員:日本労働組合総連合会総合政策推進局長)▼感染症蔓延時にも小児医療が適切に受けられる体制を整えてほしい(野村さちい委員:つながるひろがる子どもの救急代表)▼認知症患者・障害者などの「要配慮者」対応体制を平時からしっかり組んでおくべき(都竹淳也委員:全国市長会、岐阜県飛騨市長)▼平時からある程度の余裕がなければ「感染症対応」などに備えられない点を十分に認識すべき。平時からの「感染症に備えるための補填」を考えよ(神野正博委員:全日本病院協会副会長)▼特別協定医療機関は「要請から1週間で即応化せよ」とされているが、医療現場の状況を無視したものと言わざるを得ない(相澤孝夫委員:日本病院会会長)—などの意見が出されました。
今後、検討会に伝えられ、議論の重要参考要素になります。早ければ年度内にも議論が固められる見込みです。
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