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手掛けた病院統合は50件、米国のプロが語る日本の病院大再編の未来

2015.3.12.(木)

 世界中が注目する超高齢社会を迎えた日本の社会保障制度改革。最適な医療提供体制の構築に向けて進む「機能分化→連携→統合」の流れの中で今、最もホットなトピックである「統合」について、米国で約50のプロジェクトにかかわってきた病院統合のプロが語りました(関連記事『世界を見てきた病院経営のプロが語る「日本医療の未来」』)。

「病院大国ニッポン」が目指すべき将来の姿

 世界でもまれに見る「病院大国」となった日本。病院数は世界最多で、人口1000人当たりの急性期病床数は経済協力開発機構(OECD)の平均3.3床の倍以上となる7.9床(2012年時点)。平均在院日数も17.5日とOECDの平均7.4日を大きく上回ります(同)。

 国民1人当たり約811万円の借金を抱え、先進国の中で一足早く超高齢社会を迎えた日本では、このまま何も手を打たないと社会保障財源を十分に確保できず、医療提供体制が崩壊しかねません。そこで、いわゆる団塊世代が75歳以上になる「2025年」に向けて社会保障制度改革が急ピッチで進められています。

 改革の目玉として最も注目されているのが、「地域医療構想(ビジョン)」の策定です(関連記事『「混乱招く」と医療需要の計算方法は全国一律に、地域医療構想ガイドラインの検討大詰め』)。最適な医療提供体制を実現するため、都道府県の権限を大幅に強化し、データ分析に基づいて医療機関の役割分担を見直します。増え過ぎた病院の「機能分化」や「医療・介護連携」の構築が進む過程で、医療機関が「再編・統合」を迫られるケースが急増するとみる関係者も多いようです。

 米国で約50の病院統合プロジェクトにかかわった医療経営コンサルタントのマーティー・マイケル氏は、米国医療界のここ30年の変化を表わす主要データを挙げて「ここに日本の医療の将来の姿がある」と説明します。

 米国では、1980年に7156施設あった病院が30年後の2010年には5723施設にまで減りました。この間に、実に全体の2割が姿を消したことになります。生き残った病院でも、平均在院日数が7.5日から4.8日へと、この30年間に3日ちかく短縮しました。

 これらを推進する大きな原動力になったのが、1入院当たりの診療報酬を包括支払いにする「DRG」の導入と、病院の再編・統廃合を推進する軸となった「IDS(Integrated Delivery System)」の誕生です(関連記事『【対談】オバマケアが変える「医療の質」とは―スモルト×鈴木康裕(前編)』)。

超高齢社会に「温故知新」の精神を

 IDSは、病院単独での経営からグループ経営に発展させることで、「規模の経済」を働かせて効率化を推進したり、「選択と集中」を進めることでグループ全体の医療の質を向上させたりする、米国の病院ネットワークを運営するための手法です。

 日本でも最近、「非営利ホールディングカンパニー型法人(地域医療連携推進法人)」の議論が医療界の注目を集めています(関連記事『非営利ホールディングカンパニー型法人の創設案、社保審医療部会が了承-3月にも医療法改正案』)。「規模の経済」を働かせたり、集患の面で協力を促したりする仕組みは、医療の効率化に向けた有効手段になり得ます。

 マイケル氏は、IDSを推進していく上でまず重要なのは、「統合の範囲」や「統合の幅」の視点だと指摘します。「統合の範囲」については、高度急性期から予防までの機能、日常生活圏域から三次医療圏を超える広域までの地理的条件などの軸があります。「統合の幅」は、より強力な完全統合から、緩やかな提携・連携などのさまざまなスキームがあります。

 そのほかにも人員配置や診療計画、購買などIDSを推進する上で重要な論点は数多くあり、その一つひとつに米国がこれまでに培ってきた統合を成功させるためのノウハウとポイントが凝縮されたフレームワークがあります。

 超高齢社会の中で、社会保障財源をどう配分し、最適な医療提供体制をどう構築するか―。

 今、世界中が注目する日本の今日的な課題について、マイケル氏は日本特有のことには十二分に配慮しつつも、まずは米国のフレームワークに日本の事例を当てはめながら、日本の病院の再編・統合をあり方を考えていくという、米国の古きから新しきを学ぶ「温故知新」の精神が求められていると指摘します。

GHCのコンサルタント向けに病院統合の秘訣をレクチャーするマーティー・マイケル氏

GHCのコンサルタント向けに3月6日に実施した病院統合の秘訣をレクチャーするマーティー・マイケル氏

※お知らせ
 GHCでは5月23日(土)、稀有な病院統合の成功事例として知られる日本海総合病院の栗谷義樹院長、厚生労働省保険局医療介護連携政策課の渡辺由美子課長を招き、病院統合と医療・介護連携をテーマにセミナーを東京都内で開催します(関連記事『「合併後に自分の居場所がなくてもよい」キーマンがそう思えるか否かが合併の鍵-日本海総合病院』、『医療介護総合確保基金、14年度分は「医療従事者確保」に6割集中-医療介護連携促進会議』)。お申込みはこちら

◆変更履歴
本文2パラグラフにある人口1000人当たりの病床数と平均在院日数については、病床数を「急性期病床数」として、データを2012年度データとした上で、日本は7.9床と17.5日、OECD平均は3.3床と7.4日に変更いました。本文は修正済みです。【2015/03/16更新】

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