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GemMed塾 看護モニタリング

「医療法人改革で病床削減」が奏功、社会医療法人を医療再編の核に―ライター・三竦の霞ヶ関ウォッチ(8)

2015.6.8.(月)

 厚生労働省が医療制度改革に着手する場合の目的は医療費抑制にある。中小零細企業が加入する被用者保険の保険料率や、国民健康保険に対する国の公費負担割合を引き上げなければならないといった医療保険者の財政難を契機に、医療費抑制や患者負担増の具体策を盛り込みながら改革の中身をまとめ上げていくのだ。議論に2年をかけて成立した2014年の医療介護総合確保法や、今通常国会で成立した“医療保険改革法”なども同じだろう。

■医療改革メニューに並ぶ“異質な存在”

 06年の医療制度改革でも、こうした背景をにらんで後期高齢者医療制度の創設や医療計画の見直しといった伝統的な改革メニューを盛り込んだ。ところが、これら伝統的な改革メニューに一見、あまり似つかわしくないものがある。それが医療法人制度改革だ。そもそも医療法人と医療費の抑制にどのような関係があるのかと思われるかもしれないが、実は大いに関係がある。

 そもそも日本で地域医療の大半をカバーしているのは、大病院ではなく中小病院や診療所である。この担い手たる医療法人については創設以来、大きな変更がなかった。ただ、わが国の医療提供体制では人口当たりの病床数が他国に比べて極めて多く、そのために人口当たりでは他国と同水準かそれ以上の医療従事者がいても、病床当たりの従事者数は極めて少ない、という問題を抱えている。その解決策の一つが「病床を減らす」ことだが、民間病院の病床に行政が直接手を下すことができず、猫の目のように変化する診療報酬制度をもってしても実効性を担保できない。

 自治体病院が中心の諸外国と違い、わが国の医療提供体制は医療法人をはじめとする民間立の病院、診療所が中心である。また、医療計画によるいわゆる“病床規制”によって、どの病院も外部の新規参入から守られてきたと言える。

 さらに、診療報酬制度によって医療の価格もすべて公定なため、価格競争で集患することもない。極端に言えば、普通に病院を運営していれば、既存の病床はずっと温存される構造なのだ。こうした構造の下で「病床を減らす」施策が有効に機能しないのも当然である。

■社会医療法人の資本蓄積を促進

 そこで、新たな政策手段として考えられたのが、医療法人制度改革だったと言われている。端的に言えばこうだ。まず、医療法人の経営状況を外部に知らしめるために会計資料の公開を義務付ける。次に、社会医療法人を創設し、収益事業や公募債の発行を認めるとともに法人税も非課税とすることで、資本の蓄積を促す。

 これによって、資本を蓄積した社会医療法人に、自治体病院を含む地域の医療提供体制の再編の核になってもらうという構図だ。「産業政策」を通じた医療提供体制の再編成により「病床を減らす」施策を遂行しようとしているのが医療法人制度改革なのではないか―。

 病床数の近年の着実な減少ぶりを見ると、この産業政策は少なからず効いていると言えるだろう。

【連載◆ライター・三竦の霞ヶ関ウォッチ】
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