後発品の初収載時の薬価、「先発品の60%」維持をジェネリック製薬協が要望―中医協・薬価部会
2015.9.30.(水)
2016年度に予定される次期薬価制度改革では、「後発医薬品の初収載時の薬価について現行規定を維持してほしい」「後発品シェアの急激な拡大に卸業者が対応するために、数量ベースではなく、金額ベースでの卸の機能を評価してほしい」―。こういった要望が、日本ジェネリック製薬協会(JGA)や日本医薬品卸売業連合会(卸連)から示されました。
薬価部会では、8月26日に日本製薬団体連合会などから意見を聴取しており(関連記事はこちら)、次期制度改革に向けて一通りの意見聴取を終えました。今後、業界団体の要望も踏まえて、薬価制度の見直し論議が本格化します。
診療報酬改定と同様に、薬価制度についても2年に一度の見直しが行われます。16年度に予定される次期薬価制度改革に向けて、中央社会保険医療協議会の薬価専門部会は30日、JGAと卸連から意見を聴取しました。
JGAの要望は次の2点です。
(1)初収載となる後発品の薬価について、現行制度(先発の0.6掛け、一部0.5掛け)を維持してほしい
(2)既収載品の価格帯の集約方法を「後発品のみの市場実勢価格」を基にした3価格帯としてほしい
先発品の特許が切れ、後発品が初めて薬価に収載される場合、その価格は原則として「先発品薬価の60%」に設定されます(収載希望品目数が内用薬で10品目を超えた場合には50%)。これは前回の14年度改革で決まったもので、それ以前は原則「70%」でしたが、「後発品の価格はまだまだ高いのではないか」との中医協委員の指摘を踏まえて引き下げられています。
この点についてJGAの吉田逸郎会長は、「後発品のシェアを数拡大することが骨太方針で打ち出された(関連記事はこちら)。現在でも、後発品メーカーはキャッシュフローを設備投資に向けている(累計3216億円)が、今後、急激にシェアを拡大していく中では、更なる設備投資が必要となる。その財源を確保するためにも、初収載時の薬価設定は現行水準を維持してほしい」と(1)の点を強く求めています。
また、(2)は「銘柄ごとの市場実勢価格と薬価とのかい離」を是正するための要望です。
こうした要望に対し診療側の松本純一委員(日本医師会常任理事)は、「後発品の価格ばらつきはなぜ生じるのか」と質問。JGAの吉田会長は「原薬などのコストが異なるほか、メーカーによって品質確保、安定供給、情報提供に違いがあり、これが実勢価格に跳ね返る」と説明しましたが、松本委員は得心がいかないようでした。
卸連からは、次のような要望が示されました。
(i)単品単価取引を推進するために、すべての流通当事者が単品単価取引の重要性・趣旨を理解して、共通認識を持って価格交渉に携わるようにしてほしい(関連記事はこちら)
(ii)後発品の急激な拡大は卸の負担を過重にしており、「非汎用規格を他メーカーと補完できる制度の構築」や「金額ベースでの卸の機能の評価」「有効期限などの変動情報を含んだ新バーコード表示の必須化」「一般名処方の推進」などを行ってほしい
(iii)流通経費などの公平性を無視した、利益のみを追求する価格交渉を排除してほしい
(iv)新薬創出・適応外薬解消等促進加算を維持するとともに、加算対象品目に関する流通経費を公平に負担する仕組みとしてほしい
後発品は、医療現場での使用が少ないものも含めて、先発品の持つ規格をすべて揃えなければいけません。これが、医薬品を備蓄し、円滑な流通の重要部分を担う卸業者にとって大きな在庫負担となっています。
このため、医療現場での使用が少ない非汎用規格について、(i)のように「後発品メーカー同士で補完し合える仕組み」を構築してほしいと要望しているものです。これが実現すれば薬局における在庫問題も同時に解決することが可能となるので、一考に値する提案と言えそうです。
ところで(ii)の要望のうち「一般名処方の推進」に関しては、診療側の松本委員や中川俊男委員(日本医師会副会長)から「医師は信頼のできる後発品の銘柄を指定して処方し、処方せんに『変更不可』と記載するケースがある。安易な一般名処方の推進は好ましくない」と強い調子で、卸連の鈴木賢会長に訴えました。
しかし支払側の白川修二委員(健康保険組合連合会)は「医師の処方権は重要だが、医薬品の知識が豊富な薬剤師にも一定の選択権があってよい」と述べ、診療側委員をけん制しています。
なお、診療側の中川委員が「後発品の価格ばらつきは、後発品メーカーが多すぎる点にあると思う。卸側はどう考えているのか」と難しい質問を投げかけたところ、卸連の鈴木会長は「メーカー数は少ないほうがよい」と答弁。この点についてJGAの吉田会長は「情報提供や製剤の工夫などのメーカーの努力を反映する薬価制度にしてほしい。そうなれば自然に、努力したメーカーが生き残り、メーカー数も後発品の銘柄数も収れんしていくと考える」とコメントしています。
30日の薬価部会では、坂巻博之参考人(東京理科大学経営学部教授)から諸外国における後発品の使用促進策について発表が行われています。
坂巻参考人によると「国によって薬価制度なども異なり、後発品使用促進策は多様」なため、どのような取り組みが効果的かは一概に判断できません。わが国に導入する場合には、既存の薬価制度との整合性などを慎重に見極める必要がありそうです。
なお、後発品の使用促進策として、「参照価格制」が注目されています(関連記事はこちら)。参照価格制とは、同じ薬効群の医薬品については、保険償還価格の上限を設け、上限を超えた部分は全額患者負担とするものです。このため、先発品では後発品に比べて自己負担額が極めて大きくなることから、「患者が後発品を選択するインセンティブが高まる」とされているのです。
この点について坂巻参考人は、「参照価格制はフランスやドイツで導入されているが、参照価格制そのものによる医薬品支出への効果は不明確」とコメントしています。
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