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GemMed塾 看護モニタリング

介護DBのデータ利活用推進に向けて、「データの迅速提供」「格納データの拡充」などを進めてはどうか—介護情報利活用ワーキング

2023.6.9.(金)

要介護認定・介護レセプト・LIFE情報を格納している介護保険総合データベースから、データの第三者提供を行っているが、非常に低調である—。

「申請からデータ提供までの期間を大幅短縮する」「介護DBのデータを利活用する研究者等の拡大を図る」「格納するデータの内容を拡充していく」などの対応を図り、介護DBデータの利活用を推進していってはどうか―。

6月2日に開催された健康・医療・介護情報利活用検討会「介護情報利活用ワーキンググループ」(以下、ワーキング)で、こうした議論が行われました。

「利用者・家族の主観」に関連するデータ、LIFEに格納していくべきか

医療分野と同様に、介護分野についても「利用者の同意の下、過去の介護情報を介護事業者間で共有し、質の高い介護サービスを提供する」ことが重視され、ワーキングでは、例えば(1)要介護認定情報(2)請求・給付情報(レセプト)(3)LIFEデータ(4)ケアプラン—からまず共有を進めてはどうといった方向が固まりつつあります(関連記事はこちらこちらこちらこちらこちら)。

ところで、要介護認定情報・介護レセプト・LIFE情報を格納する介護保険総合データベース(以下、介護DB)が2013年度から稼働しており、現在はNDBデータ(医療レセプト・特定健診情報)やDPCデータとの連結解析を含めた「第三者提供」も始まっています。つまり、「一部の介護情報については匿名性を確保したうえで、関係者間での共有が一部可能となっている」と考えることもできるのです。

しかし、第三者提供の実績を見ると、2018年7月の開始から本年(2023年)3月までの間に、わずか「37件」にとどまっています。

低調の背景・原因としては、(1)申請からデータ提供までに長時間がかかる(2)介護DBを活用している研究者が限定的である(3)介護DBに格納されている情報が限定的である—といった点が指摘されています。このため6月2日のワーキングでは「介護DBデータの第三者提供推進」に向けた方策を検討しました。

まず(1)のデータ提供までの時間については、例えば、研究者の研究目的にマッチする形の「特別抽出」では、申請からデータ提供までに「平均367日」を要しています。これでは「データが届く頃には研究期間が終了してしまう」事態などが生じてしまうことから、厚労省は、より短期間(2か月程度を想定)でデータ提供を行える「定型データセット」(事前に全データを抽出して整備しておくもの)を新たに準備し、提供することを決定しています。

現在、介護DBデータの提供には時間がかっている(介護情報利活用ワーキング1 230602)

新たなデータ提供形式(定型データセット)(介護情報利活用ワーキング2 230602)



また(2)については、「介護DBを初めて利用する者・利用を考えている者を対象にしたセミナー」の開催や、「介護DBを用いた研究を開始する際のガイド」を作成し、介護DBを利活用する研究者の間口を広げる取り組みを始めています。

介護DBを利活用する人材の裾野を広げる試み(介護情報利活用ワーキング3 230602)



一方、(3)は「研究の目的にマッチしたデータが格納されていないので、利活用の価値が低い」と指摘される問題です。現在、国立長寿医療研究センターで「LIFE項目の見直し」案が検討されていますが、6月6日のワーキングでは島田裕之構成員(国立長寿医療研究センター老年学・社会科学研究センターセンター長)と田宮菜奈子構成員(筑波大学医学医療系ヘルスサービスリサーチ分野教授)が、例えば次のような項目・情報を新たに収集し、データベースに格納してはどうかとの提案を行いました。

▽QOL関連情報(患者報告アウトカム、選好に基づく尺度(PBMs)、EQ-5D-5L(移動の程度、身の回りの管理、ふだんの活動、痛み・不快感、不安・ふさぎ込み)、ASCOT)
▽生活満足度情報
▽医療等情報(既往歴、現病歴、処方歴、手術歴など)
▽介護サービス情報公表システムの情報(施設・事業所の離職者数、研修会を実施しているか否か、マニュアルを定めているかなど)
▽転倒発生状況
▽主観的評価(ASCOT、QOL等)
▽本人・家族の意向(要介護度の軽度化を望んでいるのかなど)
▽住居の状況
▽介護者・家族の情報



介護分野では、医療分野と異なり、「何を目指すべきか」が必ずしも明確になっていません。ある利用者は「歩けるようになりたい」と考え、別の利用者は「車いす生活でも良いが、日常生活は自分1人で出来るようになりたい」と考えるなど、要介護者等のニーズは多様です。このため島田構成員、田宮構成員ともに「利用者・家族の主観」に関する情報を十分に把握し、例えば「どういった介護サービスを提供することで、利用者・家族の満足度はどれほど向上しているのか」といった分析を進めることが、サービスの質向上につながると考えていることが伺えます。

こうした提案も踏まえてLIFEデータの拡充を図っていく方向への異論・反論は出ておらず、構成員からは「医療分野ではアウトカムは分かりやすい(傷病からの回復など)が、介護分野では『何を目指す』のかが必ずしも明確になっておらず、今後、議論を深めていく必要がある」(髙橋肇構成員:全国老人保健施設協会常務理事)、「介護サービスは非常に個別性が高く、主観に関するデータを把握し、それをサービスに活かしていくことが非常に重要である」(能本守康構成員:日本介護支援専門員協会常任理事)といった意見が多数出されました。

もっとも主観に関するデータについては、「これまでに10年以上、介護保険者で実施されてきている『介護予防・日常生活圏域ニーズ調査』の中で相当程度把握されている。この情報の利活用を考えていくことが良いのではないか」との提案が松田晋哉構成員(産業医科大学医学部公衆衛生学教授)から出されています。

情報の幅・量が拡大すれば、それを詳細に紐づけ・分析し「サービスの質の向上」につなげられそうです。しかし、情報をデータベースに格納する介護現場の負担を考慮すると、安易に「情報の量・幅を広げるべき」と進めていくことは危険です。これまでのワーキングでも「本当に必要な情報に限定すべき。介護現場の負担が過重になれば、データの質・量が確保できず、結果、データベースの価値が下がってしまう」という点が再三にわたり確認されています。「すでにある情報の利活用」という松田構成員の提案も、この点に沿うものと言えるでしょう。

研究者視点では「あの情報も欲しい」「この情報も欲しい」となりがちですが、「介護現場の負担」を十分に考慮した「収集・格納すべき情報の取捨選択」が今後も極めて重要です。



このほか、介護DBの利活用推進に向けて、「申請手続きの簡略化」、「データをクラウド上で分析できるシステム(医療・介護データ等解析基盤:HIC)の機能拡充」、「変数・バリデーションの標準化」(例えば死亡や入院などの計算方法について標準的手法を定めるなど)なども重要検討課題にあがっています。

HICについて(介護情報利活用ワーキング4 230602)

HICの機能拡充方向(介護情報利活用ワーキング5 230602)



ところで、介護DBについては「研究者でなければ利用できないのか?」という疑問が介護現場にあります。

この点、匿名化されているとはいえ、機微性の高い情報であり「セキュリティ確保」や「目的の確認」などの要件が付されていますが、介護DBのデータは介護事業者などでも利活用することが可能です。

ただし、介護現場では「どのようなデータを、どのように使えば、何ができるのか」という知識・技術を持つ人が少ないが実際です。この点、松田構成員は「国で『使いやすいデータ』を作成するとともに、介護現場のスタッフが『まず自施設のデータを分析する』ための知識・技術を伝授するセミナーなどを開催することが重要である。DPCデータについても、セミナーに出るなどすれば『あっという間』にデータ分析の知識・技術が簡単に身につく」と提案しています。



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