健保組合加入者の20.3%は血圧・31.2%は脂質・5.9%は血糖・12.1%は肝機能に問題があるが、医療機関受診者は限定的―健保連
2024.12.19.(木)
40-74歳の健康保険組合加入者のうち、20.3%は血圧に、31.2%は脂質に、5.9%は血糖に、12.1%は肝機能に問題があり、医療機関受診が必要である—。
ただし、「医療機関の受診」を薦められながらも、医療機関を受診していない(治療を受けていない)人も少なくなく、また業態によってそのバラつきも大きい―。
健康保険組合連合会が12月16日に公表した、2022年度の「業態別にみた被保険者の健康状態に関する調査分析」からこういった状況が明らかになりました(健保連のサイトはこちら)。企業に対しても、これまで以上に「従業員の心身の健康状態を保つ」ことが重視されてきており(いわゆる健康経営)、こうしたデータも活用した「従業員の健康づくり」に向けた取り組みが各企業に求められます。
健保組合加入者の一定割合に生活習慣病の疑いがあり、医療機関受診が必要
主に大企業のサラリーマンとその家族が加入する健康保険組合の連合組織である健康保険組合連合会(健保連)では、データを活用した保健事業「データヘルス」に積極的に取り組んでいます(関連記事はこちらとこちら)。今般、2022年度における加入者のレセプトデータ1560万7239人分と、特定健康診査(40-74歳が対象)データ345万1549人分をもとに健康状態を分析しています。
まず、特定健診データから「40-74歳の加入者において、▼肥満▼血圧▼脂質▼血糖▼肝機能―の状態がどのようになっているのか」を分析したところ、次のような状況が明らかになりました。全般的に「健康リスク保有者の割合は前年度に比べて減少している」ことが伺えますが、印刷・同関連業では悪化も見られるなど、業態の特性等に応じた生活習慣改善等に向けた指導を実施する必要がありそうです。
【肥満】
▽43.1%の加入者が「肥満」に該当(前年度から0.7ポイント減少)
→▼建設業:51.9%▼労働者派遣業:51.6%▼運輸業:47.9%—などで高く、▼繊維製品製造業:29.5%▼医療・福祉:31.0%▼教育・学習支援業:34.8%—などで低い
→最高の建設業と最低の繊維製品製造業との格差は1.76倍
肥満の定義は、(1)「内臓脂肪面積が100平方cm以上」または、「内臓脂肪面積が100平方cm未満でBMI25以上」(2)内臓脂肪面積の検査値がないときは、男性では「腹囲85cm以上」または「腹囲85cm未満でBMI25以上」、女性では「腹囲90cm以上」または「腹囲90cm未満でBMI25以上」―である。
【血圧】
▽「血圧」の状態を見ると、17.2%が保健指導判定値(収縮期130mmHg以上、拡張期85mmHg以上)に該当し(前年度から0.1ポイント減少)、20.3%が受診勧奨判定値(収縮期140mmHg以上、拡張期90mmHg以上)に該当している(前年度から0.2ポイント増加)
→受診勧奨判定値該当者・保健指導判定値該当者の合計割合は、▼飲食料品小売業:52.9%▼紙製品製造業:51.5%▼木製品・家具等製造業:50.9%—などで高く、▼生活関連サービス業・娯楽業:28.1%▼学術研究・専門・技術サービス業:29.4%▼繊維製品製造業:29.5%—などで低い
→最高の飲食料品小売業と最低の生活関連サービス業・娯楽業との格差は1.85倍
【脂質】
「脂質」の状態を見ると、30.4%が保健指導判定値(中性脂肪:150-299mg/dL、HDLコレステロール:35-39mg/dL、LDLコレステロール:120-139mg/dL)に該当し(前年度に比べて増減なし)、31.2%が受診勧奨判定値(中性脂肪:300mg/dL以上、HDLコレステロール:34mg/dL以下、LDLコレステロール:140mg/dL以上)に該当している(前年度に比べて2.3ポイント減少)。
→保健指導判定値該当者・受診勧奨判定値該当者の合計割合は、▼電気・ガス・熱供給・水道業:64.6%▼建設業:64.4%▼飲食料品小売業:64.2%▼労働者派遣業:64.2%—などで高く、▼医療・福祉:55.9%▼宿泊業・飲食サービス業:56.5%▼繊維製品製造業:56.9%—などで低い
→最高の電気・ガス・熱供給・水道業と最低の医療・福祉との格差は1.16倍
【血糖】
「血糖」の状態を見ると、29.4%が保健指導判定値(空腹時血糖:100-125mg/dL、HbA1c:5.6-6.4%)に該当し(前年度から増減なし)、5.9%が受診勧奨判定値(空腹時血糖:126mg/dL以上、HbA1c:6.5%以上)に該当している(前年度に比べて0.1ポイント減少)。
→保健指導判定値該当者・受診勧奨判定値該当者の合計割合は、▼複合サービス業:41.6%▼建設業:41.6%▼金属工業:38.1%—などで高く、▼教育・学習支援業:26.4%▼繊維製品製造業:28.9%▼医療・福祉:28.9%—などで低い
→最高の複合サービス業と最低の教育・学習支援業との格差は1.58倍
【肝機能】
「肝機能」の状態を見ると、22.0%が保健指導判定値(AST(GOT):31-50U/L、ALT(GPT):31-50U/L、γ-GT(γ-GTP):51-100U/L)に該当し(前年度に比べて1.0ポイント減少)、12.1%が受診勧奨判定値(AST(GOT):51U/L以上、ALT(GPT):51U/L以上、γ-GT(γ-GTP):101U/L以上)に該当した(前年度に比べて1.0ポイント減少)
→保健指導判定値該当者・受診勧奨判定値該当者の合計割合は、▼労働者派遣業:47.2%▼建設業:40.9%▼電気・ガス・熱供給・水道業:39.7%—などで高く、▼医療・福祉:23.3%▼維製品製造業:24.4%▼飲食料品小売業:26.1%—などで低い
→最高の労働者派遣業と最低の医療・福祉との格差は2.03倍
【メタボリックシンドローム】
「メタボリックシンドローム」については、16.8%が該当し(前年度に比べて0.2ポイント減少)、14.2%が予備群となった(同0.3ポイント減少)。
→該当者・予備群の合計割合は、▼建設業:40.3%▼運輸業:37.1%▼労働者派遣:35.8%—などで高く、▼繊維製品製造業:18.6%▼医療・福祉:18.7%▼教育・学習支援業:22.8%—などで低い
→最高の建設業と最低の繊維製品製造業との格差は2.17倍
医療機関受診を薦められながらも、実際に受診・治療している割合は依然として低い
また医療機関の受診状況を、上述の「受診勧奨判定者の状況」などと比べながら見てみると、次のような状況が伺えます。
▽「血圧を下げる薬を服用している人」の割合は全体で18.0%(前年度に比べて0.7ポイント増加)で、高血圧のため受診勧奨判定された人の割合(20.3%)よりも低くなっている
→母数が異なる(受診者はレセプトデータから、受診勧奨判定者は特定健診データから)ため、厳密な比較はできないが、「受診を勧奨されたものの、医療機関を受診していない」人が相当程度いる状況が伺える
「受診勧奨判定者割合」に比べて「降圧剤服用者割合」が小さい業態はとしては、▼紙製品製造業(受診勧奨された割合よりも降圧剤服用者割合が12.7ポイント少ない)▼飲食料品小売業(同11.9ポイント少ない)▼印刷・同関連業(同10.0ポイント少ない)—などが目立つ
▽「コレステロールを下げる薬を服用している人」の割合は12.4%(前年度に比べて0.8ポイント増加)で、高脂質により受診勧奨判定された人の割合(31.2%)よりも、かなり低くなっており、受診者側の危機感の薄さが分かる
いずれの業態でも、「受診勧奨判定者割合」に比べて「コレステロール降下剤服用者割合」が小さい状況が伺える
▽「インスリン注射または血糖を下げる薬を服用している人」の割合は5.5%(前年度に比べて0.2ポイント増加)で、高血糖により受診勧奨判定された人の割合(5.9%)よりも若干低くい
→業態別に大きな差はない
前述のとおり、厳密な比較はできませんが、業態によって「どの健康項目でリスク保有者が多いのか」「リスク保有者の中でどれだけの人が治療を受けているのか(重症化予防に取り組んでいるのか)、逆に受けていないのか」といった点に、一定の特徴があります。各企業におかれても、こうしたデータも活用しながら「健康づくり」に積極的に取り組むことが期待されます。
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