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健保組合加入者の20.1%は血圧に、33.5%は脂質に、6.0%は血糖に、13.1%は肝機能に問題があり、医療機関受診が必要―健保連

2024.6.7.(金)

40-74歳の健康保険組合加入者のうち、20.1%は血圧に、33.5%は脂質に、6.0%は血糖に、13.1%は肝機能に問題があり、医療機関受診が必要である。ただし、「医療機関の受診」を薦められながらも、医療機関を受診していない(治療を受けていない)人も一定程度おり、また業態によってそのバラつきも大きい―。

健康保険組合連合会が6月6日に公表した、2021年度の「業態別にみた被保険者の健康状態に関する調査分析」からこういった状況が明らかになりました(健保連のサイトはこちら)。企業に対して、これまで以上に「従業員の心身の健康状態を保つ」ことが重視されてきており、こうしたデータも活用した「従業員の健康づくり」に向けた取り組みが求められます。

健保組合加入者の一定割が生活習慣病の疑いがあり、医療機関受診が必要

主に大企業のサラリーマンとその家族が加入する健康保険組合の連合組織である健康保険組合連合会(健保連)では、データを活用した保健事業「データヘルス」に積極的に取り組んでいます(関連記事はこちらこちら)。今般、2021年度における加入者のレセプトデータ1582万9097人分と、特定健康診査(40-74歳が対象)データ312万7386人分をもとに健康状態を分析しています。

まず、特定健診データから「40-74歳の加入者において、▼肥満▼血圧▼脂質▼血糖▼肝機能―の状態がどのようになっているのか」を分析したところ、次のような状況が明らかになりました。全般的に「健康リスク保有者の割合は前年度に比べて減少している」ことが伺えますが、印刷・同関連業では悪化も見られるなど、業態の特性等に応じた生活習慣改善等に向けた指導を実施する必要がありそうです。

【肥満】
43.8%の加入者が「肥満」に該当(前年度から0.4ポイント減少)。▼建設業:53.5%▼運輸業:48.8%▼木製品・家具等製造業:47.6%—などで高く、▼医療・福祉:30.5%▼繊維製品製造業:31.2%▼教育・学習支援業:35.1%—などで低い
→最高の建設業と最低の医療・福祉との格差は1.75倍.91倍。

肥満の定義は、(1)「内臓脂肪面積が100平方cm以上」または、「内臓脂肪面積が100平方cm未満でBMI25以上」(2)内臓脂肪面積の検査値がないときは、男性では「腹囲85cm以上」または「腹囲85cm未満でBMI25以上」、女性では「腹囲90cm以上」または「腹囲90cm未満でBMI25以上」―である。

肥満該当者の割合(2021年度被保険者の健康状況1 240606)



【血圧】
「血圧」の状態を見ると、17.3%が保健指導判定値(収縮期130mmHg以上、拡張期85mmHg以上)に該当し(前年度から0.2ポイント減少)、20.1%が受診勧奨判定値(収縮期140mmHg以上、拡張期90mmHg以上)に該当している(前年度から増減なし)。

受診勧奨判定値該当者の割合は、▼印刷・同関連事業:32.4%▼飲食料品小売業:27.2%▼複合サービス業:27.2%—などで高く、▼生活関連サービス業・娯楽業:14.6%▼学術研究・専門・技術サービス業:14.8%▼医療・福祉:15.0%—などで低い
→最高の印刷・同関連事業と最低の生活関連サービス業・娯楽業との格差は2.22倍

血圧に問題ある者の割合(2021年度被保険者の健康状況2 240606)



【脂質】
「脂質」の状態を見ると、30.4%が保健指導判定値(中性脂肪:150-299mg/dL、HDLコレステロール:35-39mg/dL、LDLコレステロール:120-139mg/dL)に該当し(前年度に比べて増減なし)、33.5%が受診勧奨判定値(中性脂肪:300mg/dL以上、HDLコレステロール:34mg/dL以下、LDLコレステロール:140mg/dL以上)に該当している(前年度に比べて1.0ポイント減少)。

受診勧奨判定値該当者の割合は、▼木製品・家具等製造業:35.7%▼建設業:35.6%▼情報通信業:34.9%—などで高く、▼医療・福祉:28.8%▼農林水産業:30.0%▼繊維製品製造業:31.2%—などで低い
→最高の木製品・家具等製造業と最低の医療・福祉との格差は1.24倍

脂質に問題ある者の割合(2021年度被保険者の健康状況3 240606)



【血糖】
「血糖」の状態を見ると、29.4%が保健指導判定値(空腹時血糖:100-125mg/dL、HbA1c:5.6-6.4%)に該当し(前年度に比べて0.4ポイント減少)、6.0%が受診勧奨判定値(空腹時血糖:126mg/dL以上、HbA1c:6.5%以上)に該当している(前年度に比べて0.1ポイント減少)。

受診勧奨判定値該当者の割合は、▼建設業:8.7%▼複合サービス業:7.4%▼運輸業:7.1%—などで高く、▼医療・福祉:4.0%▼繊維製品製造業:4.0%▼教育・学習支援業:4.6%—などで低い
→最高の建設業と最低の医療・福祉との格差は2.18倍

血糖に問題ある者の割合(2021年度被保険者の健康状況4 240606)



【肝機能】
「肝機能」の状態を見ると、23.0%が保健指導判定値(AST(GOT):31-50U/L、ALT(GPT):31-50U/L、γ-GT(γ-GTP):51-100U/L)に該当し(前年度に比べて0.1ポイント減少)、13.1%が受診勧奨判定値(AST(GOT):51U/L以上、ALT(GPT):51U/L以上、γ-GT(γ-GTP):101U/L以上)に該当した(前年度に比べて1.0ポイント減少)。

受診勧奨判定値該当者の割合は、▼建設業:17.0%▼電気・ガス・熱供給・水道業:15.8%▼運輸業:14.2%▼金属工業:14.2%▼印刷・同関連業:14.2%—などで高く、▼医療・福祉:7.6%▼繊維製品製造業:8.3%▼飲食料品小売業:9.1%—などで低い
→最高の建設業と最低の医療・福祉との格差は2.24倍

肝機能に問題ある者の割合(2021年度被保険者の健康状況5 240606)



【メタボリックシンドローム】
「メタボリックシンドローム」については、17.0%が該当し(前年度に比べて2.3ポイント増加)、14.5%が予備群となった(同2.8ポイント減少)。

メタボ該当者の割合は、▼建設業:24.0%▼運輸業:21.3%▼木製品・家具等製造業:20.8%—などで高く、▼医療・福祉:9.5%▼繊維製品製造業:10.3%▼教育・学習支援業:11.8%—などで低い
→最高の建設業と最低の医療・福祉との格差は2.53倍

メタボ該当者等割合(2021年度被保険者の健康状況6 240606)

医療機関受診を薦められながらも、実際に受診・治療している割合は低い

また医療機関の受診状況を、上述の「受診勧奨判定者の状況」などと比べながら見てみると、次のような状況が伺えます。

▽「血圧を下げる薬を服用している人」の割合は全体で17.3%(前年度に比べて0.6ポイント増加)で、高血圧のため受診勧奨判定された人の割合(20.1%)よりも低くなっています。母数が異なる(受診者はレセプトデータから、受診勧奨判定者は特定健診データから)ため、厳密な比較はできませんが、「受診を勧奨されたものの、医療機関を受診していない」人が相当程度いる状況が伺えます。

「受診勧奨判定者割合」に比べて「降圧剤服用者割合」が小さい業態はとしては「木製品・家具等製造」(降圧剤服用者割合が11.5ポイント少ない)が目立ちます。

血圧降下剤の使用割合(2021年度被保険者の健康状況7 240606)



▽「コレステロールを下げる薬を服用している人」の割合は11.6%(前年度に比べて0.8ポイント増加)で、高脂質により受診勧奨判定された人の割合(33.5%)よりも、かなり低くなっています。受診者側の危機感の薄さが分かります。

「受診勧奨判定者割合」に比べて「コレステロール降下剤服用者割合」が小さい業態としては、やはり「木製品・家具等製造」(コレステロール降下剤服用者割合が30.1ポイント少ない)が目立ちます。

抗コレステロール薬等の使用割合(2021年度被保険者の健康状況8 240606)



▽「インスリン注射または血糖を下げる薬を服用している人」の割合は5.3%(前年度に比べて0.2ポイント増加)で、高血糖により受診勧奨判定された人の割合(6.0%)よりも若干低くなっています。業態別に大きな差はないようです。

インスリン注射等の使用割合(2021年度被保険者の健康状況9 240606)



前述のとおり、厳密な比較はできませんが、業態によって「どの健康項目でリスク保有者が多いのか」「リスク保有者の中でどれだけの人が治療を受けているのか(重症化予防に取り組んでいるのか)、逆に受けていないのか」といった点に、一定の特徴があるようです。企業におかれても、こうしたデータも活用しながら「健康づくり」に積極的に取り組むことが期待されます。



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