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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

認知症ある患者のサポート加算新設へ、多職種チームでの介入を評価―中医協総会

2015.11.25.(水)

 身体疾患の治療のために入院した入院患者について、多職種のチームが「病棟における認知症症状の悪化防止」や「早期からの退院支援」などを行うことを評価する点数を新設してはどうか―。厚生労働省が、25日に開かれた中央社会保険医療協議会の総会にこのような提案を行いました。

 また厚労省は、診療報酬の特例が認められる「医療資源の乏しい地域」を見なおすことも提案しましたが、中医協で一致した見解は得られていません。

11月25日に開催された、「第315回 中央社会保険医療協議会 総会」

11月25日に開催された、「第315回 中央社会保険医療協議会 総会」

多職種チームの介入で「せん妄防止」や「在院日数短縮」の効果

 高齢化が更に進展する中で、認知症高齢者も増加することが予想されています(関連記事はこちら)。当然、身体疾患を持つ認知症高齢者も増加することは間違いなく、こうした患者が身体疾患の治療のために一般病棟に入院するケースも増えることでしょう。現在、中医協総会では重症度、医療・看護必要度の見直しに向けて、「B項目に認知症症状を加えてはどうか」という点が議論されています(関連記事はこちら)。

認知症高齢者が、▽骨折・外傷▽脳梗塞▽肺炎―など幅広し身体疾患で一般病棟で入院しており、この数・割合は高齢化とともに増加すると見込まれる

認知症高齢者が、▽骨折・外傷▽脳梗塞▽肺炎―など幅広し身体疾患で一般病棟で入院しており、この数・割合は高齢化とともに増加すると見込まれる

 病院側にとっては、認知症高齢者の入院は「看護を提供する頻度が高まる」「BPSD(暴力や徘徊などの行動・心理症状)へ対応する必要性が高まる」といった負担増になると考えられ、特に認知症を持つ救急患者の受け入れを嫌がる医療機関も少なくありません。

認知症を持つ身体疾患患者が入院した場合、看護師にとって「ライン類を自分で抜いてしまう」ことや「つじつまの合わない言動がある」ことなどが負担となっている

認知症を持つ身体疾患患者が入院した場合、看護師にとって「ライン類を自分で抜いてしまう」ことや「つじつまの合わない言動がある」ことなどが負担となっている

 一方、認知症患者の家族視点は、「家族の付き添いを求められた」「身体拘束があった」「身体機能が低下し、介護が大変になった」という問題があると感じています。

 この点、一部の病院では、多職種のチームが認知症患者に積極的に介入することで「術後のせん妄の防止」や「在院日数の短縮」という効果を上げています。

ある病院では、認知症を持つ身体疾患出の入院患者に対して多職種のチームが介入したところ、術後のせん妄が最低限に抑えられるという効果が上がっている

ある病院では、認知症を持つ身体疾患出の入院患者に対して多職種のチームが介入したところ、術後のせん妄が最低限に抑えられるという効果が上がっている

別の病院では、認知症を持つ身体疾患出の入院患者に対して多職種のチームが介入したところ、在院日数が短縮するという効果が得られた

別の病院では、認知症を持つ身体疾患出の入院患者に対して多職種のチームが介入したところ、在院日数が短縮するという効果が得られた

 厚労省保険局医療課の宮嵜雅則課長は、課題の解決を図るために、こうした先進事例をベースに次のような提案を行いました。

●多職種で構成されたチームが、「病棟における認知症症状の悪化予防」「身体拘束廃止の取り組み」「早期からの退院支援」などを行うことを評価する(例えば『認知症サポートチーム加算』のような点数を新設する)

 この提案に対して診療側・支払側双方の委員が賛意を示しましたが、支払側の幸野庄司委員(健康保険組合連合会理事)は「ストラクチャー(体制)やプロセス(行為)だけでなく、在院日数の短縮や在宅復帰率の向上といった『アウトカム』を評価しているべきであろう」「退院調整と重複しないように工夫してほしい」といった注文を付けています。

 詳細な点数設計は、今後、厚労省内部で詰められ、改めて中医協総会に提示されますが、チームメンバーには▽神経内科医(認知症専門医)▽精神科医▽老人看護専門看護師▽認知症看護認定看護師▽臨床心理士▽作業療法士▽薬剤師▽医療ソーシャルワーカー―などが候補に挙がっています。

医療資源の乏しい地域での診療報酬特例、対象を見直し

 医療資源の乏しい地域では医師や看護師などの確保が難しいと指摘され、2012年度の診療報酬改定から、▽病棟ごとの一般病棟入院基本料届け出を認める▽チーム医療に関する加算の要件を緩和する―など診療報酬の特例が認められています。

 しかし、特例の利用は極めて低調で、その理由として「地域の設定に問題があるのではないか」「13対1以下に限っているからではないか」という点があると見られています。

 この問題を集中的に検討した、診療報酬調査専門組織「入院医療等の調査・評価分科かい」では、次のような見直し案が暗に提案されました(関連記事はこちら)。

(1)地域選定の要件のうち、「患者の流出が20%未満」という要件を緩和し、新たに「医療従事者が少ないこと」そのものを要件に加える

(2)2次医療圏の一部が離島となっている場合、離島のみを対象地域とすることを認める

(3)10対1入院基本料を算定している医療機関も特例の対象に加える

 (1)のうち、患者流出要件は「他地域の医療機関を受診できるのであれば、特例は不要ではないか」との考えから導入されたものですが、「そもそも医療資源が乏しいために患者が流出している」との指摘を受け、緩和(極論すれば廃止)を検討するものです。

 また(2)は、例えば沖縄県の南部医療圏のように、医療資源の比較的充実した地域(那覇市など)があるために特例を受けられないが、離島(久米島など)では医療資源が乏しいままであるといった不都合を解消するための措置です。

現在、「医療資源の乏しい地域」の対象となっていない沖縄本島の医療圏でも、一部は離島であり、医療資源が乏しい

現在、「医療資源の乏しい地域」の対象となっていない沖縄本島の医療圏でも、一部は離島であり、医療資源が乏しい

 厚労省が、見直し内容に沿って試算をしたところ、より「医師や看護師の密度が小さい」地域が特例の対象に含まれることも分かっています(関連記事はこちら)。

要件の見直すと、特例対象地域は「医師密度の低い」医療圏の方向へシフトする

要件の見直すと、特例対象地域は「医師密度の低い」医療圏の方向へシフトする

要件の見直すと、特例対象地域は「看護師密度の低い」医療圏の方向へシフトする

要件の見直すと、特例対象地域は「看護師密度の低い」医療圏の方向へシフトする

 こうした見直し案について、診療側の松本純一委員は「歓迎する」と賛意を示しました。また支払側の平川則男委員(日本労働組合総連合会総合政策局長)も、「方向性は了承できる」と述べています。

 しかし、平川委員と同じ支払側の幸野委員は、「地域医療構想の策定が進み、地域医療介護総合確保基金を活用することで、資源の格差は是正されることも予想される」と指摘し、「見直しは次期尚早ではないか」と厚労省案に疑問を投げかけました。この指摘に対し、診療側の中川俊男委員(日本医師会副会長)は「基金の財源は今後縮小されることも予想される。『診療報酬ではなく、基金を活用すべき』との論理は成り立たない」と反論しています。

地域加算、国家公務員の地域手当に合わせた見直し

 このほか、宮嵜医療課長からは「A218 地域加算」について、国家公務員の地域手当に合わせた見直しを行うことも提案されました。国家公務員の地域手当は、地域の実情に合わせて、いわば「格差の拡大」を行うことになっており、「地域加算」についても同様にするとともに、あわせて「入院基本料の水準を調整する」ことも提案されています。

国家公務員の地域手当について、最大を従前の18%から20%に引き上げ、区分を現在の「7区分(縦軸、緑色)」から「8区分(横軸、桃色、非支給地が入る)」に変更する

国家公務員の地域手当について、最大を従前の18%から20%に引き上げ、区分を現在の「7区分(縦軸、緑色)」から「8区分(横軸、桃色、非支給地が入る)」に変更する

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