一般病床の利用率は前月比15ポイントの大幅減、ただし例年通りの傾向―病院報告、15年12月分
2016.4.7.(木)
2015年12月には、一般病床の利用率が前月に比べて15.0ポイントと大幅に減少し59.5%となった―。こうした状況が、5日に厚生労働省が発表した2015年12月分の病院報告から明らかになりました。
ただし、例年「12月には病床利用率が大幅に減少する」ことが分かっています。この点も含めて、長期的に「平均在院日数の短縮」と「病床利用率の向上」をセットで考えていく必要があります。
一般病床の平均在院日数は15.9日、病床利用率は59.5%に
厚労省は毎月、(1)1日平均患者数(2)平均在院日数(3)月末病床利用率―を集計し、「病院報告」として公表しており、2015年12月の状況は次のようになりました。
(1)の1日平均患者数は、病院全体では入院124万3193人(前月比6109人、0.5%減)、外来136万9548人(同5293人、0.4%増)で、入院は微減、外来は微増となりました。
診療所の療養病床については、入院6156人(同80人、1.3%減)となりました。
病院の一般病床に注目すると、入院患者数は66万2985人で、前月に比べて6390人・1.0%減少しました。また、病院の療養病床では、入院患者数は28万9912人で、前月に比べて934人・2.1%の減少となっています。
(2)の平均在院日数については、病院全体では28.0日で、前月から1.0日短縮しました。
病床種別に見ると、▽一般病床15.9日(前月比0.6減)▽療養病床149.7日(同9.3日減)▽介護療養病床317.5日(同1.3日増)▽精神病床276.4日(同10.6日減)▽結核病床64.5日(同6.2日減)―となっており、介護療養以外では短縮しています。
有床診療所の療養病床は101.6日で、こちらも前月に比べて6.3日短縮しています。
メディ・ウォッチでもお伝えしているとおり、在院日数の不必要な延伸には、ADLの低下、院内感染リスクの高まり、医療費の増加などの弊害があります。短期的な傾向とはいえ、平均在院日数の短縮は歓迎するべき事象でしょう。
ところで平均在院日数の短縮は、延べ患者数の減少、つまり病床利用率の低下、減収に繋がります。このため「平均在院日数の短縮」と同時に、病床利用率の向上を目指さなければいけません。地域の医療機関との連携や、救急患者の積極的な受け入れが重要です。
(3)の月末病床利用率を見ると、病院全体では70.8%で、前月に比べて8.5ポイントと大幅に減少しました。
病院の病床種別に見ると、▽一般病床59.5%(前月から15.0ポイント減少)▽療養病床87.8%(同0.3ポイント増加)▽介護療養病床91.2%(同0.2ポイント増加)▽精神病床85.5%(同増減なし)▽結核病床33.3%(同2.7ポイント減少)―となっています。
数字だけを見ると、「一般病床の利用率が著しく落ち、危機的な事態が起きているのでは」とも思われますが、「12月に病床利用率が著しく落ちる」のは例年のことです。したがって、今回の数字を額面通りに受け取る必要はなさそうです。
ただし、前述のように長期的に見て「平均在院日数を下げると同時に、病床利用率を向上させる」方策が必要です。もっとも、この2つを両立させるには相当な困難も伴い、人口減少が進む中では物理的に不可能なケースもでてくると予想されます。そうした場合、「病床数の削減」という選択肢の考慮も必要になってきそうです。
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