Generic selectors
Exact matches only
Search in title
Search in content
Search in posts
Search in pages
診療報酬改定セミナー2024 新制度シミュレーションリリース

医療費の地域差、具体的な縮減水準の議論を主導すべき―経済財政諮問会議で民間議員

2016.5.12.(木)

 医療費の「地域差半減」に向けて、今年(2016年)夏までに医薬品の適正使用を含めた医療費適正化基本方針を改定し、地域差縮減の具体的な水準は経済財政諮問会議で議論するべき。また介護費についても地域差の縮減や「見える化」を強力に推進する必要がある―。

 11日に開かれた経済財政諮問会議では、民間議員からこのような要請がなされました。

介護分野の地域差縮減や、医療費自然増などのエビデンスに基づいた検証もすべき

 我が国の経済と財政の一体的再建(600兆円経済の実現と、2020年度の財政健全化目標達成)を目指し、安倍晋三内閣は骨太方針(経済財政運営と改革の基本方針)2016を近く閣議決定します。

 経済財政諮問会議では骨太方針2016の策定に向けた議論を進めており、11日の会合では民間議員(伊藤元重議員:東京大学大学院経済学研究科教授、榊原定征議員:東レ株式会社取締役会長、高橋進議員:日本総合研究所理事長、新浪剛史議員:サントリーホールディングス株式会社代表取締役社長)から意見が提出されました。

 昨年度(2015年度)の骨太方針2015では、「2016-18年度を経済・財政再生計画の集中改革期間」と位置付けており、民間議員は、その初年度に当たる今年度(2016年度)において▽健康増進▽コンパクトなまちづくり▽住民・行政サービスの広域化・IT化―を強力に進めることを要望。また、歳出(国の支出)についてデータ分析を行った上で、「経済再生と財政健全化の双方に資するかどうか」という点からの優先順位付け(ワイズ・スペンディングのチェック)をし、予算編成を行うべきと求めています。

 また財政健全化の本丸に位置付けられている社会保障改革については、次のような取り組みを行うべきと提言しています。

(1)経済・財政再生計画に掲げられた44改革項目の着実な実行

(2)医療費適正化計画・介護保険給付適正化計画などに基づいて、集中改革期間内に長期的な医療費・介護給付費などを推計する

(3)自然増のエビデンスに基づいて検証する

(4)医療費の地域差「半減」に向け、夏頃までに医療費適正化基本方針の改定を行い、地域差縮減の具体的な水準を経済財政諮問会議で議論する

(5)介護分野についても「見える化」や地域差縮小に向けた取り組みを強力に推進する

(4)の医療費については、ほかに「データヘルス」(レセプト・健診データなどに基づく効果的なヘルス事業)の強力な推進、「人生の最終段階における医療」に関する国民的な議論や、看取りも含めた在宅医療・訪問看護の充実(医療専門職の配置見直しなど)を行うべきとしています(関連記事はこちら)。

 また(5)の介護分野については、「介護と医療のレセプトデータなどを紐付けする」仕組みを全国的に構築し、「介護・医療を統合した『見える化』を進めて、地域差を分析する」ことや、介護給付費の適正化に取り組む市町村(介護保険者)へのインセンティブ導入などを行うべきと提言しています(関連記事はこちら)。

 厚生労働省の分析によれば、「1人当たり介護費」と「1人当たり入院医療費」には正の相関(1人当たり入院医療費が高い都道府県は、1人当たり介護費も高い)があることが分かっており、両者の地域差を一体的に縮小していくべきと民間議員は主張しています。

厚労省の分析によれば、「1人当たり入院医療費」と「1人当たり介護費」との間には正の相関があることが分かっている

厚労省の分析によれば、「1人当たり入院医療費」と「1人当たり介護費」との間には正の相関があることが分かっている

 さらに(3)に関して、2012年度以降、国民医療費が過去の推計値よりも低く推移していることを紹介し、「過去の実績を踏まえた積み上げ」ではなく、エビデンスに基づいて検証するよう求めています。

2012年度以降、過去の推計値よりも実際の国民医療費が小さくなっており、この要因を分析すべきと諮問会議の民間議員が指摘している

2012年度以降、過去の推計値よりも実際の国民医療費が小さくなっており、この要因を分析すべきと諮問会議の民間議員が指摘している

 具体的には、医療費の伸びに関する「その他」要因(高齢化、診療報酬改定以外)について、▽1日当たり費用▽受診動向▽後発医薬品の使用―などに着目して地域差の分析を行ってはどうかと提案しています。

塩崎厚労相、「『規制』も含めた医師の地域・診療科偏在是正を検討する」

 また臨時議員として出席した塩崎恭久厚生労働大臣からは、▽医師の地域・診療科偏在の解消▽医療・福祉人材の活用▽地域包括ケアの深化▽イノベーションの促進―など社会保障改革の推進に向けた厚労省の取り組みの一部が紹介されました。

 このうち「医師偏在の解消」に関しては、医師に対する『規制』を含めた地域偏在・診療科偏在の是正策を本年(2016年)中に取りまとめる方針です。

 具体的には、▽医学部入学定員における「より地域定着が見込まれる入学者枠」▽専門医の地域・診療科ごとの定員枠▽不足する地域・診療科などで確保すべき医師の目標値の設定(地域医療計画)―などのほか、「将来的に偏在が続く場合に、保険医の配置・定数の設定を行う」ことや、「診療所などの管理者要件に、特定地域・診療科での診療従事経験を盛り込む」ことなどが検討されます(関連記事はこちらこちらこちら)。

医師偏在の是正に向けて、塩崎厚労省から「将来的に偏在が続く場合には、保険医の配置・定数の設定などを検討する」ことが説明された

医師偏在の是正に向けて、塩崎厚労省から「将来的に偏在が続く場合には、保険医の配置・定数の設定などを検討する」ことが説明された

【関連記事】
かかりつけ医以外の外来受診、新たな定額負担を求めてはどうか―財務省
社会保障費の伸び「年0.5兆円」は“目安”に後退―骨太2015を閣議決定

「あるべきでない地域差」是正に向け、市町村へのインセンティブ付与などを検討―介護保険部会
医療費適正化計画、平均在院日数のみに着目した目標設定から脱却―厚労省
医師偏在の是正に向けて、「自由開業・自由標榜の見直し」を検討へ―医療従事者の需給検討会
医学部入学定員の「地域枠」、運用厳格化で医師偏在是正を―医師需給分科会で一戸構成員
新専門医制度、都道府県別に過去の専門医採用実績をベースにした定数設定議論へ―専門医の在り方専門委員会

診療報酬改定セミナー2024