ケアマネの特定事業所集中減算、通所介護と地域密着型通所介護は柔軟に取り扱う―厚労省
2016.6.1.(水)
居宅介護支援(ケアマネジメント)における介護報酬の特定事業所集中減算では、「通所介護」と「地域密着型通所介護」は分けて計算せず、「いずれか多いほう」あるいは「双方」を位置づけたケアプラン計画数を算出してよい―。
厚生労働省は30日、都道府県宛てに行った事務連絡「居宅介護支援における特定事業所集中減算(通所介護・地域密着型通所介護)の取扱いについて」の中で、こうした柔軟な考え方を示しました。
介護保険制度改正で、利用者定員19人以下の通所介護は地域密着型サービスへ移行
介護保険制度では、ケアマネジャーが利用者の状況や地域の介護資源などを勘案してケアプランを作成した上で、サービス提供が行われます。
このため、例えばAという組織に所属するケアマネジャーが、A組織に利益を誘導するために「A組織のサービス」を優先的に選択する、という危険性があります。
こうした状況はケアマネジャーの公平性・中立性に反するため、介護報酬の中で「特定事業所集中減算」という仕組みが規定されています。特定の事業所にサービスが集中するケアプランを正当な理由なく作成した場合に、報酬が200単位減算されるものです(関連記事はこちらとこちら)。
●特定事業所集中減算の基準
正当な理由なく、指定居宅介護支援事業所において前6か月間に作成した居宅サービス計画に位置付けられた指定訪問介護、指定訪問入浴介護、指定訪問看護、指定訪問リハビリテーション、指定通所介護、指定通所リハビリテーション、指定短期入所生活介護、指定短期入所療養介護、指定特定施設入居者生活介護(利用期間を定めて行うものに限る)、指定福祉用具貸与、指定定期巡回・随時対応型訪問介護看護、指定夜間対応型訪問介護、指定認知症対応型通所介護、指定小規模多機能型居宅介護(利用期間を定めて行うものに限る)、指定認知症対応型共同生活介護(利用期間を定めて行うものに限る)、指定地域密着型特定施設入居者生活介護(利用期間を定めて行うものに限る)、または指定看護小規模多機能型居宅介護(利用期間を定めて行うものに限る)の提供総数のうち、同一の訪問介護サービス等に係る事業者によって提供されたものの占める割合が80%を超えていること
具体的には、次の計算式を用います
【各サービスに係る紹介率最高法人の居宅サービス計画数】÷【各サービスを位置づけた居宅サービス計画数】
ところで、2014年の介護保険制度改正によって「小規模な通所介護(利用定員19人未満)は、地域密着型サービスに移行する」ことになりました。この点について、介護現場からは「通所介護」と「地域密着型通所介護」とを分けて計算することでケアマネジメントに支障が出るのではないかとの疑問が出ていました。例えば、地域密着型通所介護への転換が少なった地域では、80%の基準値を上回る可能性が高くなるからです。
厚労省は今般の事務連絡で、この疑問に対し次のように回答しています。
▽2016年4月1日-2018年3月31日に作成されるケアプランにおいて、特定事業所集中減算の適用を判定する場合には、「通所介護」と「地域密着型通所介護」のそれぞれについて計算するのではなく、「いずれか」または「双方」を位置づけたケアプラン数を算出し、「通所介護・地域密着型通所介護についてもっとも紹介件数の多い法人」を位置づけたケアプラン数の占める割合を計算して差し支えない
つまり、「通所介護」と「地域密着型通所介護」のそれぞれ、あるいは合算で、上記計算式で集中率を計算し、より低い数値を用いることが可能になります。
なお、特定事業所集中減算に対しては、「良質なサービスを提供する事業所にサービスが集中するのは当然である」として、存在そのものを疑問視する声も少なくありません。2018年度の次期介護報酬改定に向けて、この点も議論されることになります(関連記事はこちらとこちら)。
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