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保険外の介護サービス活用に向け、利用ガイドブックの作成や相談窓口の設置を―経産省・次世代ヘルスケア産業協議会

2016.6.7.(火)

 高齢化が進行し社会保障費が膨張する中では、生涯現役社会の構築が不可欠となる。そのために「国民が健康を管理する習慣を持ち、健康を維持することで長期にわたる社会参加が可能となり、それが健康の維持に役立つ」という正の循環を実現することが重要で、官民が一体となった取り組みが必要となる。例えば介護保険外サービスの活用を促進するため、利用ガイドブックの作成や相談窓口の設置などを行うべきである―。

 経済産業省の次世代ヘルスケア産業協議会は4日、こうした視点に立った提言を盛り込んだ「生涯現役社会の構築に向けた『アクションプラン2016』」を公表しました。

現代社会にある(1)身体(2)価値観(3)選択肢(4)情報―という4つの壁

 

 経産省は、「日本再興戦略」に基づき、健康寿命を延伸するために官民が一体となった取り組みを進めるにあたっての課題・問題点を抽出・整理し、対応策を検討するために次世代ヘルスケア産業協議会を設置。協議会は2015年5月に「アクションプラン2015」をまとめました。そこでは、▽大企業向けの「健康経営の全国普及」▽中小企業向けの「健康優良企業認定制度の創設・金融上の優遇措置の検討」▽地域関係者を統合した地域版協議会の設置促進▽保険外サービス活用ガイドブックの策定▽ヘルスツーリズム創出に向けた支援・サービス品質の第三者認証スキームの構築―などを提言。

 今般、さらなる検討を踏まえて「アクションプラン2016」を策定したものです。

 アクションプラン2016は、まず、冒頭に記した「正の循環」を阻害する次の4つの壁(課題)があることを指摘。この4つの壁を乗り越えるための具体的な方策を提示しています。

(1)身体の壁(いわゆる現役時代から適切な健康管理が行われていない)

(2)価値観の壁(リタイア後の生活設計や生き方についての意識が低い)

(3)選択肢の壁(高齢者に適した柔軟な働き方や利用可能なサービスが少ない)

(4)情報の壁(自らに適した働き方や良質なサービスにたどりつけない)

生涯現役社会の構築を阻む4つの壁(課題)

生涯現役社会の構築を阻む4つの壁(課題)

アクションプラン2016の全体コンセプトと4つの壁への対応

アクションプラン2016の全体コンセプトと4つの壁への対応

企業における「従業員の健康管理」をより促進

 (1)の壁である「適切な健康管理」に関しては、大企業に対して健康経営銘柄(優れた健康経営を実践している企業を選定)を継続実施するとともに、選定方法の改善を行います。また中小企業に対しては、「健康経営優良法人認定制度」を今秋頃から開始します。さらに、この認定制度と連動したインセンティブ(資金調達や公共調達における優遇)付与を行う自治体・民間事業者の取組を促進します。

 また、▽健康経営を支えるビジネスの市場規模「見える化」の今年度((2016年度)中の公表▽民間サービスの品質の「見える化」と企業・保険者とのマッチング機会の提供―なども行う方針です。

現役世代の生活習慣病予防対策から高齢者のフレイル対策などへ拡充

 (2)の価値観の壁を壊すために、まず現役世代の生活習慣病予防対策として「個人の行動変容」を促します。具体的には、医療機関や保険者、企業、サービス事業者などが、「レセプト情報」「健診情報」「各個人がウェアラブル端末などで蓄積した健康情報」などを収集・解析し、「糖尿病などの疾病予防・重症化予防」に向けた行動変容を促すための仕組みを実証するとしています。

 将来的には、▽アクティブシニアに対するフレイル(虚弱)予防▽妊娠中の健康管理―といった分野への横展開も射程に入れています。

 また各個人の行動を支援するための「自治体の取り組み」促進も行います。具体的には、効果的・効率的に健康予防事業を行う自治体・保険者へのインセンティブとしてSIB(ソーシャル・インパクト・ポイント)の導入を促進します。ここでは、民間の資金やサービスを活用して、「ヘルスケア分野における成果に対する信頼性の高い評価指標や予算化の方法」「国と自治体とのリスク負担のあり方」などを整理するとしています。

健康産業と「食」「農」「観光」「スポーツ」産業とが協働し、新たな産業を創出

 (3)の「選択肢」の壁を乗り越える方策としては、▽「食・農」×「健康」▽「観光」×「健康」▽「スポーツ」×「健康」―によって新たなヘルスケア産業を生み出すことを提言しています。

 このうち「『観光』×『健康』産業」に関しては、▽消費者が安心してヘルスツーリズムを利用できる環境の整備と市場の発展、関連産業の活性化を図るための「ヘルスツーリズムプログラム認証制度」の創設・運用開始▽糖尿病などの生活習慣病が疑われる者などを対象とした、ホテル、旅館や地元観光資源などを活用して行う「宿泊型新保健指導(スマート・ライフ・ステイ)プログラム」の研究―などの具体的な構想を提言しています。

保険外の介護サービス活用ガイドブック作成し、保険外サービス相談窓口も設置

 (4)の「情報の壁」を壊す方策の1つとしては、地域関係者へ「公的保険外サービスに係る情報」を提供し、その活用を促進したい考えです。介護保険では、介護保険サービスと保険外サービスの併給が見取られていますが、保険外サービスの情報は一元化されていないため、利用者はもちろん、介護支援専門員(ケアマネジャー)もそうした情報を十分に把握できていません。そこで次のような取り組みを行うことを提案しています。

▽地域版「介護保険外サービス活用ガイドブック(仮称)」の策定

▽高齢者向けサービスをコーディネートするケアマネジャーや地方自治体関係者への研修・体験の場の創出

▽保険内外のサービスの情報をワンストップで提供する相談窓口の設置

▽在宅領域における多職種連携等による新たなサービスの開発・実証を、利用者等と共創する機能の充実(「在宅版リビング・ラボ(仮称)」の設置)

 ただし「保険外のサービス」については、自治体の監督が十分には及ばないため品質や安全性に不安も生じます。そこで「第三者認証制度」(品質・安全性などの見える化に向けたヘルスツーリズムプログラム認証制度などの新たな枠組みの構築)や、「公的研究機関などと連携した科学的知見に基づく健康増進・予防サービスの創出」(サービスの品質確保に資するデータの収集・蓄積・評価のあり方に関する検討を行い、2017年度中に取り組み開始)などを行う方針を打ち出しています。

情報の壁を乗り越えるため、保険外サービス情報の一元化を提言

情報の壁を乗り越えるため、保険外サービス情報の一元化を提言

 

 さらにアクションプラン2016では、▽現役世代に対する生活習慣病予防▽アクティブシニア世代に対するフレイル予防と社会参画の機会づくり▽健康に不安がある高齢者に対する見守り・生活支援▽人生の最期まで住み慣れた場所で心残りなく生ききるための環境整備―といった分野において、経産省と厚生労働省が協働して、「医福・産官学金」(医療・福祉・産業・行政・アカデミア・金融)が連携するモデル構築を共同で行う旨を示した基本指針等を策定することも求めています。

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