令和2年7月豪雨で被災した医療機関等、「新型コロナの影響が出る前」の水準で概算請求可能—厚労省
2020.7.16.(木)
令和2年7月豪雨で被災し、レセプトを滅失・棄損した医療機関等では、6月診療分の診療報酬を「概算請求」することが可能である。その際、従前「今年(2020年)4-5月の請求額をベースにする」としていたところ、新型コロナウイルス感染症の影響が出る前の「今年(2020年)1-3月の請求額をベースとする」ことに改める—。
厚生労働省は7月14日に事務連絡「『令和2年7月豪雨による被災に伴う保険診療関係等及び診療報酬の取扱いについて』の一部訂正について」を示し、こうした考えを明らかにしました。
概算請求のベースを、「今年(2020年)1-3月の診療実績」に変更
7月上旬に九州地方を中心に記録的な豪雨(令和2年7月豪雨)が発生し、筑後川や球磨川などの大きな河川が氾濫するなど、大きな被害が出ており、現在も復旧に向けた努力が続けられています。被害にあわれた方々に、心よりお見舞い申し上げます。
医療機関等が被災し、6月診療分のレセプトを滅失・棄損してしまった事例もあると思われます。この点、期日通りの請求等が困難なことから「概算請求」が認められます。
概算請求とは、個々の医療機関における直近の支払額に準じて6月分の請求額を決める方法で、従前は次のように計算するとの考えが示されました(公費負担医療に係るものも含まれる)。
【入院診療分】
「今年(2020年)4-5月診療分の実際の支払額」÷61日×「今年(2020年)6月の入院診療実日数」
【外来診療、保険薬局、訪問看護ステーション】
「今年(2020年)4-5月診療分の実際の支払額」÷48日×「今年(2020年)6月の外来診療実日数」
しかし、今年(2020年)4-5月は新型コロナウイルス感染症の影響で「患者数が激減」していた時期です。6月に入ると新型コロナウイルス感染症の新規感染者発生が落ち着き、とりわけ被災地では相当程度、受診・入院患者数が回復していたと考えられます。
このため、厚労省は今般、概算請求額は次のように計算する旨に考え方を改めています。
【入院診療分】
「今年(2020年)1-3月診療分の実際の支払額」÷91日×「今年(2020年)6月の入院診療実日数」
【外来診療、保険薬局、訪問看護ステーション】
「今年(2020年)1-3月診療分の実際の支払額」÷71日×「今年(2020年)6月の外来診療実日数」
新型コロナウイルス感染症の影響が出る前・あるいは限定的な時期の請求内容をベースとする考えで、実態を踏まえた見直しと言えます。
「概算請求」方法を行う医療機関では、原則として7月14日までに審査支払機関(社会保険診療報酬支払基金または国民健康保険団体連合会)に届け出ることとなっており、既に届け出は完了していると考えられます。
なお、介護事業所における概算請求についても、新型コロナウイルス感染症の影響が出る前の「今年(2020年)1-3月の請求額をベースにする」考えが、7月14日付の事務連絡「【令和2年7月3日からの大雨による災害に係る介護報酬等の請求等の取扱いについて』の一部改訂について」で明確にされています。
【関連記事】
九州地方の豪雨被害にあった医療機関等、概算請求や診療報酬上の臨時特例を認める—厚労省
7月の九州地方中心とする大雨の被災者、保険証持たずとも保険診療を受けられる―厚労省
九州地方の豪雨で被災した介護事業所・施設など、介護報酬の基準等で臨時特例を認める—厚労省
九州地方の豪雨被害にあった介護保険施設・事業所、直近データに基づく「介護報酬の概算請求」を認める—厚労省