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医療法人事業報告書のネット公開、四病協調査では8割が反対しており、厚労省調査と真逆—四病協

2022.4.28.(木)

医療法人の事業報告書について、73%の病院が「閲覧によって生じるリスクがある」と考えており、また80%の病院が「インターネットでの開示に反対である」と考えている—。

4月27日に開催された四病院団体協議会の総合部会に、こうした調査結果が報告されました。後述するように厚生労働省の調査結果と「真逆」となっており、総合部会終了後に記者会見に臨んだ日本精神科病院協会の山崎學会長は、厚労省に対しどうアクションしていくかを今後、検討していくとコメントとしています。

厚労省の外部委託調査では「医療法人の大多数」がネット公開に賛成しているが・・・

医療法人には、会計年度が終了するごとに次の書類を都道府県知事に届け出ることが義務付けられています。保険診療が公的性格を色濃く帯びていること(財源の7―9割は国民の税金、医療保険加入者の保険料・税で賄われている)、健全な経営を確保する必要性のあること(経営が不安定になれば地域医療に多大な影響が出てしまう)などを踏まえた義務と説明されています。
▼事業報告書
▼財産目録
▼貸借対照表
▼損益計算書
▼監査報告書
▼関係事業者との取り引きの状況に関する報告書
▼その他の書類

医療法人には事業報告書等などを都道府県に届け出る義務がある(医療部会(1)2 211102)



これらの書類提出は「紙」ベースで行われてきましたが、厚労省は(1)今年度(2022年度)からG-MISへの電子データアップロードによる届け出とする(2)来年度(2023年度)からは都道府県ホームページ等でデータを閲覧可能とする(3)将来には全国データベースを構築する(検討中)―という方針を昨年(2021年)11月2日の社会保障審議会・医療部会に提示しました。

この点、(1)のデジタルアップロードについては、事務負担軽減というメリットが都道府県にも医療機関にもあるため、特段の反対意見は出ていませんが、(2)(3)については医療機関サイドから▼閲覧者が匿名で、つまりどこの誰か明らかでない人間が情報にアクセス可能とするのは問題ではないか。行き過ぎた詮索や営業活動などに使われるのは遺憾ではないか▼今の未成熟なネット事情を見れば、誰でも閲覧できる状況とすれば想定外の問題が生じる可能性が高い。医療に専念しなければならない一方で、そうした想定外の問題への対応をしなければならないとなれば医療法人経営が立ち行かなくなる―といった懐疑的な意見・反対の意見が出ています。

全日本病院協会・日本病院会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会の4団体で構成される四病院団体協議会の総合部会(会長・副会長といった各団体幹部の集まり)でも、「医療法人の事業報告書についてネットで閲覧可能とする点には問題がある」との点で一致しています(関連記事はこちら)。

ところで、厚労省が外資系コンサルティング会社に委託した2021年度の「医療法人の事業報告書等に係るデータベース構築のための調査研究事業」では、▼約7割の医療法人が、インターネットでの事業報告書等閲覧を可能とする点に「リスクなし」と回答▼約6割の医療法人が、インターネットでの事業報告書閲覧に「賛成」と回答—しているようです(約3000の医療法人を対象にアンケート調査を行い、365病院が回答)(一般には非公開であり、日本精神科病院協会の野木渡副会長が記者会見で報告)。ここから厚労省は「医療法人の大多数がネット閲覧に賛成しており、問題はない」と考えていることが伺えます。

しかし、「医療現場の肌感覚と全く異なる」と調査結果に疑問を抱いた四病協では、独自に調査を実施(四病協構成団体(日病、全日病、医法協、日精協)の会員である4828の医療法人病院(複数団体に加盟する病院は重複カウント)を対象とし、うち729病院が回答)。そこからは次のような点が明らかになりました。

▽73の医療法人が、インターネットでの事業報告書等閲覧を可能とする点に「リスクあり」と回答

▽80%の医療法人が、インターネットでの事業報告書閲覧に「反対」と回答

医療法人に対する四病協調査では「事業報告書等のネット公開に反対する声が大多数」である(1)(四病協調査1 220427)



▽70%の医療法人が、誰でも事業報告書等を閲覧可能とすることに「反対」と回答

医療法人に対する四病協調査では「事業報告書等のネット公開に反対する声が大多数」である(2)(四病協調査2 220427)



▽67%の医療法人が、個人情報(医療法人の開設者名、住所など)を誰でも閲覧可能とすることに「反対」と回答

医療法人に対する四病協調査では「事業報告書等のネット公開に反対する声が大多数」である(3)(四病協調査3 220427)



また、現場からは▼個⼈情報等の情報漏洩を懸念▼M&A、経営譲渡など業者等の営業対象となることを懸念▼犯罪利⽤、悪⽤される恐れを懸念▼経営状況に対する悪影響を懸念—する声が多数出ていることも野木・日精協副会長から紹介されています。



この四病協調査結果と、上述の厚労省委託研究による調査結果とでは「まったく逆」であることが分かります。調査客体(つまり回答した医療法人)が異なる可能性などが考えられますが、ここまで「真逆」の調査結果となっていることから、病院団体幹部は「厚労省の調査結果」にさらに疑念を強くし、「今後、厚労省にどのようなアクション(例えば抗議など)をしていくのかを検討し、実行に移す」点で一致したことが山崎・日精協会長から報告されました。

また山崎・日精協会長は「もし医療保険財政の健全化・透明化などのために事業・財務等の公開が必要なのであれば、医療法人だけでなく、国公立病院や調剤薬局(株式会社も多い)、さらに介護事業所などでも同様に公開がなされるべきであるが、そちらには『公開・公表』の動きはなく不公平である」ともコメントしています。



なお、山崎・日精協会長は▼オンライン診療の安易な拡大は問題である▼「かかりつけ医」について日本医師会が提言を行っているが、四病協と共同で検討すべきであった—といった点についてもコメントしており、これらは別稿で報じます。



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