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救急外来の「看護配置基準の設定」は見送り、まず看護職員から多職種へのタスク・シフティング進めよ—救急外来医療職種在り方検討会

2023.3.1.(水)

救急外来において「看護配置基準の設定」を求める声もあるが、慎重に検討していく。まず「看護職員から多職種へのタスク・シフティング」を進める必要がある—。

救急救命士の院外業務について「心肺停止に対するアドレナリンの投与等の包括指示化」「アナフィラキシーに対するアドレナリンの筋肉内投与」などを追加できないか、今後、体制整備を進めたうえで、特区において実証実験を行う—。

2月27日に開催された「救急医療の現場における医療関係職種の在り方に関する検討会」(以下、検討会)で、こういった内容のとりまとめが、遠藤久夫座長(学習院大学教授)一任で行われました。取りまとめの方向に沿って、今後、さらなる調査・議論が進められます。

救急外来における「看護職員配置基準」を求める声も強いが・・・

救急医療現場における「医師や看護師など医療従事者の負担軽減」が大きな課題となっています。改正救急救命士法では「救急救命士が医療機関の『中』で一定の救急業務を行う」(医師等から救急救命士へのタスク・シフティング)ことが認められるなど、負担軽減に向けた動きも進んでいますが、「さらなる取り組みが必要」との声が現場から出ています。

このため検討会では次の3点について議論を重ねてきており、今般、考え方をまとめました。
(1) 救急外来において「看護師の配置基準」を設定すべきか
(2) 改正救急救命士法の効果をどう把握していくべきか
(3) 救急救命士の業務拡大について具体的にどう考えるか

まず(1)については、救急現場の看護職員から「極めて多忙であり、医師働き方改革などでさらに看護職員が多忙になる。そうした中では、救急外来の看護配置基準を定めるべき。基準を定めなければ、例えば『病棟の応援』(病棟には配置基準が定められており、満たせない場合には、基準の定められていない救急外来などから応援がなされるケースが多い)などで救急外来が手薄になり、さらに逼迫してしまう」との声が出ています。

こうした声を受け、任和子参考人(京都大学大学院医学研究科人間健康科学系専攻教授)から「救急外来における医師・看護師等の勤務実態把握のための調査研究」結果が報告されました。

そこでは▼救急外来の看護師は、すべての勤務帯において「連絡・調整等」に多くの時間を割いている(業務時間の2割強から5割強)▼連絡・調整等の中身は「患者情報の共有・申し送り」「看護職員間の報告・連絡・相談」「記録(コンピュータ入力)」「記録(手書き入力)」「電話応対(職員間)」「患者やその家族からの電話対応(受診相談を含む)」などである—ことなどが示されました(関連記事はこちらこちら)。

この調査研究結果を踏まえた議論は、看護職を代表する委員らの「救急外来においては、看護配置の手厚い基準を設定する必要がある」との声と、医療機関経営者や他職種を代表する委員らの「看護職員でなければ実施できない業務はそれほど多くなく、救急救命士や事務スタッフなどへ相当の業務をタスク・シフティングできる。基準制定論議の前にタスク・シフティングを行うべき」との声とに大きく分かれました(関連記事はこちらこちら)。

議論を踏まえ、検討会では「専門性の高い看護師等の配置と救急患者受け入れとの間に相関は見られるが、因果関係が明らかではないことから、基準設定は慎重に検討する」「救急外来の機能向上のため、多職種へのタスク・シフト/シェアを含め、救急外来に携わる多職種の業務分担や効率化を進める」との取りまとめを行いました。

もっとも構成員の間で「救急外来の現場が極めて多忙である」という認識は共通しています。今後に向けて「検査技師や救急救命士など、多職種の活用をうまく進めていくべきである」との意見が多数の構成員から出ており、今後、例えば「多職種連携が進んでいる好事例を分析した横展開」などが進んでいくことに期待が集まります。



また(2)は「救急救命士の院内業務解禁の効果」を把握するための調査をどのように行うべきかという論点です。改正法の施行は2021年秋であり、すでに「救急救命士を配置している医療機関」では、その有用性をより強く認識していることなどが分かっています。ただし、改正法施行から日が浅く「医療現場に救急救命士が定着して間もなく、配置されていない医療機関も少なくない」ことから、「調査が早すぎれば、効果は芳しくない」という誤った結果が導かれかねない点を心配する声が構成員から出ていました(関連記事はこちら)。

この点については、▼今後も引き続き、救急救命士の雇用状況と医師等の負担軽減、救急医療に係る実績について調査していく▼2022年度の調査研究では、救命救急センターに限らず、全国の2次救急医療機関も対象に「法改正によって実施可能となった救急救命処置による効果」と「専門性を有しない業務による効果」を両面から調査・分析する▼調査結果を踏まえ、医療機関に所属する救急救命士の効率的な業務のあり方について検討を行う—方針が確認されました。

今後の検討に向けて、植田広樹構成員(日本臨床救急医学会評議員)は「救急救命士、とりわけ消防機関で働く救命士の声も拾ってほしい」と要望しています。



他方、(3)は、救急救命士による「医療機関の『外』での業務範囲」拡大に関する議論です。

救急救命士の業務範囲拡大にあたっては、安全性を確保するために、▼専門家の参画する検討会での検討→▼専門研究班での安全性・有効性に関する研究→▼一部地域での実証研究→▼専門家による最終検討→▼全国展開—という慎重な手続きを経て行われてきています。

救急救命士の業務範囲拡大経緯1(救急外来医療職種在り方検討会(2)2 221214)

救急救命士の業務範囲拡大経緯2(救急外来医療職種在り方検討会(2)3 221214)

現在の救急救命士の業務範囲(救急外来医療職種在り方検討会(2)1 221214)



現在、4つの行為について「業務範囲の拡大対象とするか」という議論が行われており、検討会では次のような方向を固めました(関連記事はこちら)。

(a)心肺停止に対するアドレナリンの投与等の包括指示化
→厚生労働科学研究班において「救急救命士の講習プログラム、事後検証体制の強化を含め必要なMC体制」を引き続き検討し、体制が整備された地域で実証実験を実施する(十分な症例数を確保できる地域を選択)

(b)アナフィラキシーに対するアドレナリンの筋肉内投与
→厚生労働科学研究班において「救急救命士の講習プログラム、必要なMC体制、アナフィラキシーの判断の精緻化、投与方法」を引き続き検討し、臨床研究から「救急救命士が一定程度、アドレナリンの適応を適切に判断できる」という結果を得た上で、体制が整備された地域で実証実験を実施する(十分な症例数を確保できる地域を選択)

(c)気管切開チューブの事故抜去時にチューブの再挿入
→実証実験は実施しない(極めて稀であり、症例数確保が困難である)
→安全性を確保する観点から、厚生労働科学研究班において「救急救命士の講習プログラム、必要なMC体制」を引き続き検討の上、「在宅療法継続中の傷病者の処置の維持」として救急救命処置への追加に向けて引き続き議論する

(d)自動式人工呼吸器による人工呼吸
→実証実験は実施しない(すでに救急隊が実施可能な業務であり、上位職種と言える救急救命士には速やかな解禁が求められる)
→総務省消防庁での整理等を踏まえて、安全性を確保する観点から、厚生労働科学研究班において「救急救命士の講習プログラム、必要なMC体制」を引き続き検討の上、救急救命処置への追加に向け引き続き議論する



このうち(a)(b)の行為について、実証実験は行われますが、その前段階として「体制整備」などを十分に整えることが明示されています。救急救命士の業務範囲が拡大されれば「生命の危機に瀕している患者」により迅速に処置を行うことができ、「命を救える」可能性が高まると期待されます。一方、安易に業務範囲を拡大すれば「不適切な処置、誤った処置」を誘発し、逆に「生命の危機」を招く危険性もあるため「体制整備」を十分に図ったうえで実証実験(実際に救命士が患者に医行為を行う)に進むという点には留意が必要です。一部構成員からは「安易な拡大」と懸念の声も出ましたが、「極めて慎重に検討、議論、調査が進んでいる」ことを認識しなければなりません(リスクや、その回避法なども研究班で研究・検討されてきている)。

なお、加納繁照構成員(日本医療法人協会会長)は「重要なのは、最終の救命率である。行為の拡大などが救命率向上に結び付いているのかなども検証していく必要がある」とコメントしています。



今後、細部の文言調整などを遠藤座長と厚労省で進めていきます。なお、(3)の救急救命士の業務拡大に関しては、2023年度以降も「検討会や下部組織において、医師の指示の下に救急救命士が実施する救急救命処置に関する事項について検討を行う」方針が確認されています。慎重にではあるものの「救命率向上に向けて、救急救命士の業務拡大を進めていく」方向が見えていると考えられそうです。

また、上述のように「今後も調査研究や議論を継続する」ことが確認されており、救急現場における「医療従事者の負担軽減」がさらに進み、結果、我々国民が「より質の高い救急医療を受けられる」環境が整うことに期待が集まります。



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