原則として「すべての医療法人」がG-MIS用いて毎年度の経営情報等を都道府県に報告する義務を再確認—厚労省
2024.8.26.(月)
昨年(2023年)8月より「原則として、すべての医療法人にG-MIS用いて毎年度の経営情報を報告する義務が課され」ており、この点を忘れないよう留意してほしい—。
厚生労働省は8月21日に「医療法人の経営情報等の報告に関するリーフレット」を公表し、こうした点への留意を強く求めました(関連記事はこちらとこちらとこちら)。
原則、毎会計年度の終了から3か月以内に経営情報等を都道府県に報告する義務
2022年11月の「医療法人の経営情報のデータベースの在り方に関する検討会」(以下、検討会)で、医療法を改正し▼「医療法人の経営情報データベース」を構築する▼一部の小規模法人を除き、原則、すべての医療法人に経営情報の提出を義務付ける▼データベースを活用し、医療政策の企画・立案、医療従事者の処遇改善、医療機関の経営支援などを行う▼医療法人の経営状況に関する情報を広く国民に提供するとともに、医療経済研究に向けたデータの第三者提供を行う—方針が固められ、その後、「医療部会での審議」→「国会での改正法案の審議」を経て、改正法が成立しました(関連記事はこちら)。
厚労省は「2023年8月からの経営情報報告義務化」に向けて、▼「原則として、全ての医療法人」に経営状況等のネット報告が義務付けられるが、いわゆる「四段階税制」(小規模クリニック)が適用される場合は除外される▼経営情報等の報告方法は、医療機関等情報支援システム(G-MIS)による、あるいは書面で提出する、のいずれかとなる▼医療法人の報告期限は「当該医療法人の会計年度終了後3か月以内」だが、外部監査が適用される医療法人では「当該医療法人の毎会計年度終了後4か月以内」とする—などの詳細を明確化しています。
さらに今般、厚労省は「報告の失念、遺漏などが生じない」ように、次のような点への留意・確認を求めるリーフレットを公表しました。
▽経営情報等の報告は、「原則、全ての医療法人」が対象となる
→ただし、上述のように四段階制が適用される場合には、当該会計年度はネット報告義務が除外される
→四段階税制とは、小規模なクリニックについて、概算経費率を▼診療報酬収入2500万円以下の医療機関では72%▼2500万円超3000万円以下では70%▼3000万円超4000万円以下では62%▼4000万円超5000万円以下では57%—の4段階とする仕組み。2020年度には61法人に適用
▽経営情報等の報告は医療法により義務付けられている
→医療法(抜粋し、Gem Med編集部で一部改変)条 第52条 医療法人は、厚生労働省令で定めるところにより、毎会計年度終了後3か月以内に、次に掲げる書類を都道府県知事に届け出なければならない
1 事業報告書等
2 監事の監査報告書
3 法第51第2項の医療法人にあっては公認会計士等の監査報告書
▽経営情報等の報告は、「毎会計年度終了後3月以内」に所管の都道府県へ行う
→ただし外部監査の対象となる医療法人は「毎会計年度終了後4月以内」に所管の都道府県へ行う
→外部監査の対象となる医療法人とは、医療法第51条第2項(医療法施行規則第33条の2)で定める▼負債合計額50億円以上、または事業収益合計が70億円以上の医療法人▼負債合計額20億円以上、または事業収益合計が10億円以上の社会医療法人▼社会医療法人債発行法人である社会医療法人—である
▽事業報告書等は法人単位の活動状況等を届け出るものであるが、「経営情報等」は病院・診療所単位で当該病院等の「収益および費用」や「職員の職種別人数、およびその給与総額(任意)」を報告するものである
▽医療法人は、日本の医療機関の開設主体として最も大きな割合を占めており、「経営情報等」は、医療の現状と実態を把握するための非常に重要な情報として活用される
→報告された「経営情報等」に関しては、個人や法人を特定できる形で公表されることはない
なお、報告すべき内容は次のとおりとなっています(どの科目にどのような事項が含まれるのかなどの詳細は▼通知▼事務連絡—で解説されている)。
【病院等(病院・クリニック)の基本情報】
▼医療法人整理番号(医療法人マスタで確認可能)、法人番号(は国税庁法人番号公表サイトで確認可能)
▼医療機関を表す番号(病床・外来管理番号:病床機能報告対象病院等・外来機能報告対象病院等に付された番号)、医療機関コード(保険医療機関として指定された病院等に付された番号、保険指定されていない場合には記載不要)
▼法人の正式名称、医療機関の正式名称、役員の人数(7月1日時点)、職員の人数(7月1日時点)、医療機関の所在地、会計期間、消費税の経理方式、診療所では主たる診療科(7月1日時点)
【病院等の収益・費用の内容】
▼医業収益
・入院診療収益(内訳である保険診療収益・公害等診療収益・その他の診療収益は任意報告)
・室料差額収益
・外来診療収益(内訳である保険診療収益・公害等診療収益・その他の診療収益は任意報告)
・その他の医業収益(保健予防活動収益(任意)、運営費補助金収益)
▼医業費用
・材料費(医薬品費、診療材料費・医療消耗器具備品費、給食用材料費)
・給与費(役員報酬、給料、賞与、賞与引当金繰入額、退職給付費用、法定福利費)
・委託費(給食委託費)
・設備関係費(減価償却費、器機賃借料)
・研究研修費
・経費(水道光熱費)
・控除対象外消費税等負担額
・本部費配賦額
▼医業利益(または医業損失)
▼医業外収益(受取利息および配当金(任意)、運営費補助金収益、施設設備補助金収益)
▼医業外費用(支払利息(任意))
▼経常利益(または経常損失)
▼臨時収益(運営費補助金収益、施設設備補助金収益)
▼臨時費用
▼税引前当期純利益(または税引前当期純損失)
▼法人税、住民税および事業税負担額(任意)
▼当期純利益または当期純損失
【クリニックの収益および費用の科目】
▼医業収益
・入院診療収益(内訳である保険診療収益・公害等診療収益・その他の診療収益は任意報告)
・外来診療収益(内訳である保険診療収益・公害等診療収益・その他の診療収益は任意報告)
・その他の医業収益(保健予防活動収益(任意)、運営費補助金収益)
▼医業費用
・材料費(医薬品費、診療材料費・医療消耗器具備品費、給食用材料費)
・給与費(役員報酬、給料、賞与、賞与引当金繰入額、退職給付費用、法定福利費)
・委託費(給食委託費(任意))
・減価償却費
・器機賃借料
・その他の医業費用(水道光熱費、控除対象外消費税等負担額、本部費配賦額(任意))
▼医業利益(または医業損失)
▼医業外収益(受取利息および配当金(任意)、運営費補助金収益、施設設備補助金収益)
▼医業外費用(支払利息(任意))
▼経常利益(または経常損失)
▼臨時収益(任意)(運営費補助金収益、施設設備補助金収益)
▼臨時費用(任意)
▼税引前当期純利益または税引前当期純損失
▼法人税、住民税および事業税負担額(任意)
▼当期純利益(または当期純損失)
【病院等の職員の職種別人員数、その他の人員に関する事項】
▼職種別の給与総額、およびその人数に係る職種(任意、1月1日から12月31日までの1年間(医療法人の会計年度内の12月31日を末日とする1年間)、これによりがたい場合は会計年度)
<職種>医師、歯科医師、薬剤師、看護職員(保健師、助産師、看護師、准看護師)、その他の医療技術者等(診療放射線技師、臨床工学技士、臨床 検査技師、リハビリスタッフ(理学療法士、作業療法士、視能訓練士、言語聴覚士)、歯科衛生士、歯科技工士、栄養士等(管理栄養士、栄養士、調理師)、社会福祉士、精神保健福祉士、保育士、看護補助者、事務職員(事務(総務、人事、財務、医事等)担当職員、医師事務作業 補助者、診療情報管理士)、その他の職員)
▼上記の報告に係る対象期間
医療現場の負担を考慮し「職種別給与」については「任意報告」となっています(小規模医療法人では「薬剤師は1人配置のみ」ということもあり、職種別給与=当該個人の給与費であり、個人情報保護の意味もある)。
各医療法人においては、適切に「経営情報等」の報告を行うことが求められます。
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