一般病床の利用率、昨年12月から15ポイント以上上がり、従前水準に回復―病院報告、16年1月分
2016.5.10.(火)
今年(2016年)1月には、一般病床の利用率が前月に比べて15.1ポイントと大幅に増加し、2015年11月の水準に回復した―。こうした状況が、10日に厚生労働省が発表した2016年1月分の病院報告から明らかになりました。
もっとも、例年「12月には病床利用率が大幅に減少し、1月に回復する」ことが分かっており、こうした点を織り込んで考える必要があります。
一般病床の平均在院日数は17.3日、病床利用率は74.6%に
厚労省は毎月、(1)1日平均患者数(2)平均在院日数(3)月末病床利用率―を集計し、「病院報告」として公表しており、2016年1月の状況は次のようになりました。
(1)の1日平均患者数は、病院全体では入院125万3378人(前月比1万185人、0.8%増)、外来125万6341人(同11慢3207人、8.3%減)で、入院は増加、外来は大幅減となりました。
診療所の療養病床については、入院6162人(同6人、0.1%増)と横ばいになっています。
病院の一般病床に注目すると、入院患者数は67万2460人で、前月に比べて9475人・1.4%増加しました。また病院の療養病床では、入院患者数は29万794人で、前月に比べて882人・0.3%の増加となっています。
(2)の平均在院日数については、病院全体では30.3日で、前月から2.3日延伸しました。
病床種別に見ると、▽一般病床17.3日(前月比1.4日増)▽療養病床164.3日(同14.6日増)▽介護療養病床338.7日(同21.1日増)▽精神病床301.2日(同24.8日増)▽結核病床73.3日(同8.8日増)―となっており、すべてで延伸しています。
有床診療所の療養病床は108.0日で、こちらも前月に比べて6.4日延伸しました。
メディ・ウォッチでもお伝えしているとおり、在院日数の不必要な延伸には、ADLの低下、院内感染リスクの高まり、医療費の増加などの弊害があります。例年、12月から翌年の1月にかけて平均在院日数は延伸する傾向があるため、今回の動きが「平均在院日数の短縮」傾向にストップをかけているとは考えにくいですが、長期的にウォッチしていく必要があります(関連記事はこちら)。
(3)の月末病床利用率を見ると、病院全体では79.6%で、前月に比べて8.8ポイントの大幅増になりました。これも、例年の「12月から翌年の1月にかけて利用率が大きく跳ね上がる」傾向と同様です。
病院の病床種別に見ると、▽一般病床74.6%(前月から15.1ポイント増加)▽療養病床88.5%(同0.7ポイント増加)▽介護療養病床91.0%(同0.2ポイント減少)▽精神病床85.5%(同増減なし)▽結核病床32.0%(同1.3ポイント減少)―となっています。
数字だけを見ると「一般病床の利用率が著しく上がっている」ので、良い事象であることには間違いありませんが、前述のように「12月に病床利用率が著しく落ち、それが1月に回復する」のは例年のことですので、手放しに歓迎するのは危険です(関連記事はこちら)。
平均在院日数の短縮は、延べ患者数の減少、つまり病床利用率の低下=減収に繋がります。このため「平均在院日数の短縮」と「病床利用率の向上」の両立を目指すことが医療機関、とくに病院においては極めて重要です。利用率向上に向けて、地域のクリニックや中小規模病院との連携(重症患者の紹介を受けられるような関係の構築)や、救急患者の積極的な受け入れがなどを進める必要があります。
ただし、GHCの湯原淳平アソシエイトマネジャーは、「300床の病院で、平均在院日数を1日減少させながら、病床利用率を維持する」ためには、1か月当たり36人の新規入院患者を獲得する必要があると分析しており(関連記事はこちら)、人口減少が進む中では物理的に稼働率向上が不可能なケースも出てくると予想されます。
このため、自院の機能や地域の患者動向を的確に見極めた上で、最終的には「病床数の削減」という選択肢の考慮も必要になってくるでしょう。
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