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大学病院の院長、「選考会議」の議を経るなど選考過程を透明化―大学病院ガバナンス検討会

2016.7.21.(木)

 大学附属病院の院長(管理者)選考プロセスについて、(1)資質・能力の基準(医療安全管理経験+α)の設定と公表(2)選考会議や理事会などの『合議体の議』を経た選考(3)選考結果・理由・プロセスの公表―という透明化を進める―。

 こういった方針が20日に開催された、「大学附属病院等のガバナンスに関する検討会」で確認されました(関連記事はこちらこちら)。

 検討会では夏頃を目途に結論を得たい考えですが、透明化を前提とした上で、選考にあたって「意向投票」(選挙)を行うことをどう考えるかについて構成員の間に若干の意見の隔たりがあり、結論を出すまでにはもうしばらく時間がかかりそうです。

7月20日に開催された、「第4回 大学附属病院等のガバナンスに関する検討会」

7月20日に開催された、「第4回 大学附属病院等のガバナンスに関する検討会」

外部有識者を交えた「選考会議」などを設置、資質・能力基準の公表も必要

 東京女子医大や群馬大学附属病院で生じた医療事故を重視し、厚生労働省は特定機能病院に医療安全管理部門」や「外部監査組織」の設置を義務づけるなど、承認要件の見直しを行っています(関連記事はこちらこちらこちら)。塩崎恭久厚生労働大臣は、さらに「病院管理者(以下、病院長)の権限や選考過程」に問題があるのではないかとし、本検討会で具体的な議論を行うよう指示しました。

 これまでに、▽病院長に医療安全管理を含めた一定の権限を確保する▽病院長が開設者(理事会)にものを言えるような体制・権限を確保する▽病院長を補佐する体制を確保する▽病院の運営状況を第三者がチェックする―といった点について意見が固まってきています。

 また、病院長の選考プロセスについては「透明化」の確保が不可欠であるという点についても合意が得られており、20日の会合では具体的には次の3点を各大学附属病院に求めることで一致しました。

(1)資質・能力の基準(医療安全管理経験+α)の設定と公表

(2)選考会議や理事会などの『合議体の議』を経た選考

(3)選考結果・理由・プロセスの公表

 (2)の選考会議とは、大学の学長が指名した少数メンバー(外部有識者を必ず入れる)で構成される組織を意味し、例えば「教授会」などとは異なります。また選考会議メンバーのメンバー・選考理由なども公にすることが必要と考えられます。

 特定機能病院の承認要件などに、こうした考え方が盛り込まれていく見込みです。

選挙の実施については、「弊害が大きい」「各大学に任せるべき」などさまざまな見解

 病院長選考過程の透明化については異論のないところですが、具体的に「病院長をどう選考するか」という手法については構成員間で意見に相違があります。選考手法としては、大きく「意向投票(選挙)」と「指名」の2つがあります(もちろん、2手法を両極として、その間に両者を組み合わせたさまざまな手法が考えられます)。

厚労省は、「意向投票(選挙)」と「指定」のメリット・デメリットを次のように整理。その上で、「透明化を図り、さらに意向投票(選挙)を行う必要性・適切性をどう考えるか」との問題提起を行いました。通常、選挙結果には一定の拘束力があるため、選挙のデメリットによって透明化の効果が薄れてしまうことを危惧したものと言えそうです。

【意向投票(選挙)】

▽メリット:職員の支持を得て病院の管理運営を円滑に行える、長期の人間関係があるため、資質能力のスクリーニングがなされる場合がある

▽デメリット:職員の利害・力関係に左右され、必ずしも適任者が選ばれるとは限らない、職員の利害関係に配慮せざるを得ず、必ずしも指導力を発揮でない場合がある

【指名】

▽メリット:職員の利害・力関係に左右されず、院内外を問わず優れた者を選任できる、開設者の信任の下で指導力を発揮できる

▽デメリット:職員の支持が得られず病院の管理運営が円滑に行えない場合がある、人材の流動性が低い我が国では候補者探しが容易でない

 この点、山口育子構成員(ささえあい医療人権センターCOML理事長)や森山寛オブザーバー(東京慈恵会医科大学名誉教授)らは「透明化が維持されれば、選考手法は意向投票(選挙)でも指名でもよいのではないか」とコメント。特に森山オブザーバーは、「各大学の考え方があり、意向投票(選挙)を否定する必要まではないのではないか」と訴えました。

 これに対し野村修也構成員(中央大学法科大学院教授)は、「かつて企業のコンプラインス(法令遵守)が問題となったが、要は『トップの選び方』が重要で、他の対策ではこれを補うことはできないことが明らかになった。大学附属病院であってもトップの選任方法が最重要テーマである」と主張。さらに意向投票(選挙)には▽優れた人が選ばれるとは限らない▽八方美人が選ばれやすく適切な管理運営が行えない―といった大きな弊害があることを強調し、意向投票(選挙)は行うべきではないと強く訴えています。

国立大学附属病院長会議が病院長選考などについて提言

 なお、20日の会合では山本修一オブザーバー(千葉大学医学部附属病院長)から、国立大学附属病院長会議の提言「国立大学附属病院のガバナンス強化に向けて」(今年6月)が報告されました。

 そこでは、▽大学附属病院の病院長として求められる必要な資質・能力を明文化する▽病院長の予算・人事関連権限を明確にし、適切な任期を設定する(短期ではリーダーシップが発揮できない)▽「病院長選考会議」を設置し、学外有識者の意見も聴取して、学長が複数の候補者の中から病院長を選考する―ことが提言されています。もちろん、各大学では独自の取り組みを行っており、この提言の「趣旨」を踏まえた柔軟な対応がなされることになるでしょう。

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