難治性潰瘍、訪問看護の【特別管理加算】【特別訪問看護指示書】の対象とし、手厚い看護を可能とせよ―訪問看護推進会議
2019.6.14.(金)
訪問看護のさらなる推進、質の向上に向けて、入院前における訪問看護と医療機関等との連携強化を進め、利用者のニーズを踏まえた手厚い訪問看護の実施、ICT活用の推進などを行う必要がある。例えば「難治性潰瘍」については、特別管理加算の算定を可能とするとともに、特別訪問看護指示書を月2回示し、手厚い訪問看護を実施できることとしてはどうか―。
日本看護協会・日本訪問看護財団・全国訪問看護事業財団の3団体で構成される「訪問看護推進連携会議」は6月11日に、厚生労働省保険局の樽見英樹局長に宛て、こういった内容を盛り込んだ2020年度診療報酬改定に関する「要望書」を提出しました(日本看護協会のサイトはこちら)。
入院前からの「訪問看護と入院医療機関との連携」をさらに強化せよ
訪問看護推進連携会議の要望は、次の3項目です。
(1)入院時における訪問看護と医療機関等の連携強化
(2)利用者の医療ニーズに応じた訪問看護の提供体制強化
(3)労働力人口減少を見据えたICT活用による訪問看護の体制整備
まず(1)では、【訪問看護情報提供療養費3】の算定要件見直しを求めています。
【訪問看護情報提供療養費3】は、訪問看護利用者が医療機関等に入院等する場合に、利用者の同意を得て、訪問看護ステーションから主治医に訪問看護に係る情報提供を行い、入院医療機関等に情報共有することを評価しています。「入院前」に▼既往歴や経過といった医学的情報▼家族構成や要介護認定の状況(退院支援時に極めて重要)▼疾病の受け止めや不安、認知症症状の有無(医療・看護提供時に極めて重要)―などの情報を事前に入手することで、入院中の管理が円滑になると期待でき、また早期の在宅復帰も期待できます(関連記事はこちら)。
この点、訪問看護推進連携会議では、主治医から入院等先へ情報提供が行われない場合でも、緊急入院等で入院等先に利用者情報・訪問看護情報を速やかに提供する必要があることなどを踏まえ、「主治医から入院医療機関等への情報提供の有無にかかわらず、訪問看護ステーションから入院医療機関等へ情報提供した場合には、同療養費3を算定できるようにすべき」と要望しています。主治医が入院等先に情報提供するか否かは、訪問看護ステーション側にはコントロールできないという点も考慮すべきと言え、訪問看護事業所と入院医療機関との「入院前からの連携強化」を一層図ることが狙いと考えられます。
また(2)では、具体的に▼特別訪問看護指示書を月2回交付可能な利用者の拡大▼特別管理加算の算定対拡大―の2点を求めています。難治性潰瘍患者等に手厚い訪問看護の実施を可能とすることなどを狙っています。
医療保険の訪問看護は、原則として「週1-3回」「1回90分まで」という制限があります。ただし、厚生労働大臣が定める疾病等(末期がんや多発性硬化症など)の患者には「週4回以上」の訪問が可能です。また、医師が「特別訪問看護指示書」を出している患者では、1か月に1回または2回に限り「指示があった日から起算して14日までの連続訪問」が可能となります。
1か月に2回の連続訪問看護が可能となるのは、▼気管カニューレ使用▼真皮を越える褥瘡―の患者に限定されていますが、訪問看護事業所の意向等を踏まえ、訪問看護推進連携会議は「非がん疾患によるターミナル期の状態」と「難治性潰瘍」を加えてはどうかと提案しています。いずれも頻回な訪問看護が必要とされる疾患と言えます。
また後者の【特別管理加算】は、名称どおり「特別な管理が必要な患者」への訪問看護において、1か月に1回、2500円または5000円を上乗せするものです。特別な管理にかかるコストを補填するものと言えるでしょう。
具体的には、▼在宅悪性腫瘍等患者指導管理もしくは在宅気管切開患者指導管理を受けている状態にある者、または気管カニューレもしくは留置カテーテルを使用している状態にある者▼在宅自己腹膜灌流指導管理、在宅血液透析指導管理、在宅酸素療法指導管理、在宅中心静脈栄養法指導管理、在宅成分栄養経管栄養法指導管理、在宅自己導尿指導管理、在宅人工呼吸指導管理、在宅持続陽圧呼吸療法指導管理、在宅自己疼痛管理指導管理または在宅肺高血圧症患者指導管理を受けている状態にある者▼人工肛門または人工膀胱を設置している状態にある者▼真皮を越える褥瘡の状態にある者▼在宅患者訪問点滴注射管理指導料を算定している者―が対象です。
このうち「真皮を越える褥瘡の状態にある者」に関連して、訪問看護推進連携会議は、▼糖尿病▼膠原病▼放射線照射▼下肢の血行障害―などに起因する「難治性潰瘍」も状態は類似しているとし、特別管理加算の対象に加えるべきと要望しています。
さらに(3)では、▼退院時共同指導等の要件見直し▼死亡診断における看護師による情報提供の評価―の2項目を求めています。多忙な訪問看護師の負担軽減等を図ることが狙いと言えそうです。
医療機関の入院患者等が退院等するにあたり、訪問看護ステーションの看護師等が入院医療機関等の主治医・職員と共同して在宅で必要となる療養上の指導を行い、その内容を文書で提供した場合には、【退院時共同指導加算】が算定可能です。入院中に得られた情報を、退院後の訪問看護に生かすことが狙いですが、担当者に直接の対面を求めることは、多忙な医療スタッフにとっては酷であり、また非効率でもあります。
このため2018年度の診療報酬改定では、ICTを活用したカンファレンスを一部可能としています(関連記事はこちら)。しかし訪問看護推進連携会議では、「3者のうち2者以上の対面参加が必要」などの要件もあり、「ほとんどの訪問看護ステーションにとって実効性のある業務効率化支援とはなっていない」と指摘。2020年度の次期改定においては、▼カンファレンスに参加できない「やむを得ない事情」として長距離・長時間の移動を勘案する▼「3者のうち2者以上の対面参加」「医療資源の少ない地域」等の要件を緩和する―ことを要望しています。
また後者は、ICTを活用した死亡診断において、訪問看護師が医師への情報提供に係る所定の業務を行った場合、【死亡時情報提供料】として【訪問看護ターミナルケア療養費】への上乗せ評価を行うよう求めるものです。
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