紹介状なし外来患者の特別負担、「大病院とは何か、その機能と規模は」という点から議論せよ―四病協
2020.1.23.(木)
全世代型社会保障検討会議が「紹介状なし外来受診患者に対する特別負担の徴収義務対象を200床以上の一般病院へ拡大する」考えを打ち出したが、病院団体の見解も聞かずに、病院の機能等に関する議論もなされていない。まず、外来機能分化の在り方やかかりつけ医機能などについて十分を議論を尽くさなければならない―。
日本病院会・全日本病院協会・日本医療法人協会・日本精神科病院協会の4団体で構成される四病院団体協議会(四病協)の総合部会が1月22日に開催され、こういった点で一致したことが加納繁照・医法協会長と相澤孝夫・日病会長から報告されました。
全世代型社会保障検討会議、病院論議にもかかわらず病院団体からの意見聴取もない
安倍晋三内閣総理大臣が議長を務める全世代型社会保障検討会議の中間報告(12月19日)において、「大病院における「紹介状なし外来受診患者」に対する特別負担の金額について、現在の初診時5000円・再診時2500円を増額するとともに、徴収義務対象を『200床以上の一般病院』に拡大し、外来医療の機能分化を促す」方向が示されました。今後、詳細を詰めて今夏に最終報告および制度設計を行うことになっていますが、この方針に対しては医療界、とくに病院団体が「極めて遺憾である」と強い反対姿勢を示しています。
また15の病院団体で構成される日本病院団体協議会では「病協代表者会議では「大病院の定義も含めてきちんと夏までかけて議論する必要がある。拙速に決めることではない」との見解で一致。
1月22日の四病協・総合部会では、この点について改めて協議。そこでは全世代型社会保障検討会議の中間報告には、大きく次の2つの問題点のあることが確認されました。
1点目は、中間報告に示されたような「外来医療の機能分化」「紹介状なし外来患者の特別負担」について、これまでに議論がなされずコンセンサスが得られていないままに、具体的な制度方針が示されているという問題です。
2点目は、「機能分化」論議が、いつの間にか「病床規模」論議にすり替わってしまっているという問題です。
両者からさまざまな論点が含まれ、例えば▼200床以上の病院は「大病院」なのか▼地域によっては200床、300床規模の病院が「かかりつけ医」機能を担っているところもある▼「200床以上の一般病院」の中には、例えば「一般病床50床・療養病床150床」の病院なども含まれるが、ここにも「大病院」として定額負担を課すのか▼例えば初診時5000円は、地域によっては極めて高額であるが、患者負担が大きすぎないか▼かかりつけ医機能については四病協と日本医師会とで定義や役割の議論を重ねているが、さらに議論するべき論点が多々ある▼全世代型社会保障検討会議には、四病協には意見陳述の要請もないが、病院現場の意見を聞かずに制度を設計して良いのだろうか―などと、相澤・加納両会長は指摘。まさに論点について「枚挙に暇がない」状況です。
こうした議論を、当事者である病院代表者を交えて十分に議論することが大前提であるとも相澤・加納両会長は強調します。
また、上述のとおり、厚労省の社会保障審議会では▼医療部会で、ベースとなる「外来医療の機能分化」「かかりつけ医機能の推進」に関する議論を行う▼医療保険部会や中央社会保険医療協議会で「対象病院」や「金額」「医療保険の負担を軽減する仕組み」などを議論する―という2つのレールが敷かれる見通しですが、加納医法協会長はこの点についても「医療保険部会には四病協代表委員が参画していない。適切な結論が得られるのだろうか」と強く疑問を呈しました。
さらに相澤・加納両会長は「必要があれば政治家にも、病院団体の考えを十分に説明し理解を求めていく」考えも明らかにし、「十分な議論がなされないままに制度が導入・拡大されることには強く反対する」との姿勢を明確にしています。
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