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指定難病患者等データ、オンライン登録で患者・指定医双方の負担軽減を図れないか—難病対策委員会

2020.2.3.(月)

指定難病や小児慢性特定疾患の病態解明や治療法開発に向けて、まず「軽症者から重症者まで網羅的なデータベース」を構築し、これとNDBや介護DBと連結し、解析を進めていくことが重要である。

軽症者のデータ登録を進めるために、オンラインによって指定医がデータ登録を行う仕組みを構築し、指定医・患者双方の負担軽減を図れないか。まず先行する「がん登録」制度を参考に検討を進めるべきである―。

1月31日に開催された厚生科学審議会・疾病対策部会「難病対策委員会」と、社会保障審議会・児童部会「小児慢性特定疾患児への支援の在り方に関する専門委員会」との合同会議で、こういった議論が行われました。

1月31日に開催された、「第64回 厚生科学審議会 疾病対策部会 難病対策委員会」と「第40回 社会保障審議会 児童部会 小児慢性特定疾患児への支援の在り方に関する専門委員会」の合同開催

患者データの収集・利用目的・第三者提供などの規定を難病法等に整備する方向

「指定難病への医療費助成」や「難病医療体制の構築」などの難病対策は、2015年1月に施行された難病法(難病の患者に対する医療等に関する法律)に基づいて実施されています。難病法の附則では、「施行後5年以内を目途に、施行状況を勘案して必要があれば見直しに向けた検討を行う」旨が規定されており、また小児の難病である「小児慢性特定疾患」対策を規定する改正児童福祉法でも、同様の見直し規定があることから、厚労省は施行から5年を迎える今年(2020年)1月を1つの目標に据え、難病等の制度見直しに向けた検討を行っています。

これまでに合同会議で「論点整理」を行い(2019年6月)、個別論点について▼医療費助成の在り方、治療研究の推進、医療提供体制の整備に向けた技術的事項などを検討する「難病・小児慢性特定疾病研究・医療ワーキンググループ」▼療養生活の環境整備、就労支援、福祉支援、小児の自立支援の在り方などに関する技術的事項などを検討する「難病・小児慢性特定疾病地域共生ワーキンググループ」―で専門的な検討を行ってきました(2019年末・2020年初めにそれぞれ報告書を取りまとめ)。

例えば前者の「研究・医療ワーキング」では、▼医療費助成の対象とならない「指定難病に罹患する軽症者」について、臨床調査個人票の作成頻度や内容を簡素化するなどしてデータベースへ登録しやすい環境をさらに整え、登録者に「指定難病登録者証」(仮称)を発行し、福祉サービスの円滑利用を可能にしたり、重症化した場合には速やかに医療費助成が行われるようにするなどの制度を整える▼「重症者から軽症者まで悉皆性のある指定難病のデータベース」を構築し、NDB(National Data Base)などの他の公的データベースとの連結解析を行い、病態解明や治療法開発などにつなげる―といった見直し方向を打ち出しています。

また後者の「地域共生ワーキング」では、軽症者の登録を促すために「福祉サービスを充実させる」方針などを強調しています。

もっとも、両ワーキングで方向が必ずしも明確になりきらなかった部分もあり、合同会議では▼医療費助成の対象とならない患者のデータ登録▼調査・研究▼療養生活支援が行き届くようにするための方策▼難病相談支援センターや地域協議会等の地方自治体の取り組みを促す方策―の4つの論点について、さらに詰めの議論を行い、今春(2020年春)に合同会議としての意見取りまとめを行う方針を明確にしています。

ところで、「研究・医療ワーキング」の議論・報告にあるとおり、「より多くの(可能であれば全員)軽症者が登録する」ことを目指していきますが、現在でも「軽症者のデータを登録する」仕組みは存在します。

一方、「データベース関連」についての規定は法律上(難病法など)存在しません。法律に規定しなければならない事項として「データベース」関連項目があります。難病の病態解明や治療法開発などのためには、難病に関するデータベースとNDB(特定健診・医療レセプトデータを格納)との連結解析が期待されますが、そのためには難病等のデータベースについて▼収集の範囲▼利用目的▼第三者提供―などを法律で一定程度明確に定める必要があるのです(こうした規定がないデータベースとNDBとを連結すれば、重要な個人情報が漏出しかねない)。

そこで合同委員会では、「軽症者のどこまでをデータ登録の対象に含めるべきか」「データ登録は誰が行うべきか」という点について議論を行いました。非常に細かく、法律上の規定には関係が薄いようにも思われますが、技術的な細部の実現可能性も含めた議論をしなければ法規定が「画餅に帰してしまう」恐れもあるため、厚生労働省健康局難病対策課の担当者は「制度設計に関する大きな議論と、細部の技術的事項とを並行して進めてもらう」考えを示しました。

まず軽症者のどこまでをデータ登録対象に含めるかについては、▼医療費助成を申請するかどうかにかかわらず、データの登録を受け付ける▼医療費助成の申請を行った患者について、認定結果にかかわらずデータの登録を受け付ける―という2つの考え方があります。

また前者(医療費助成申請者以外のデータ登録も受け付ける)の考え方に立って、誰がデータ登録を行うかを考えると、▼指定医が登録する▼自治体職員が登録する―の2つの手法が考えられます。

オンライン登録のイメージ・医療費助成申請を行う場合(難病対策委員会2 200131)

オンライン登録のイメージ・医療費助成申請を行わない場合(難病対策委員会3 200131)



指定医が登録することとなれば、患者側の負担は小さくなりますが、医師側の負担は非常に大きくなります。一方、自治体による登録では、指定医の負担は小さく済みますが、患者側の負担が大きくなってしまうというデメリットがあります。

難病患者データを指定医が登録する場合、自治体が登録する場合のメリット・デメリット(難病対策委員会4 200131)



この点、患者視点に立つことが重要ですが、多忙な指定医の負担軽減も非常に大事な視点となります。そこで、指定医が登録することによって患者の負担を軽減するとともに、「オンラインでの登録の仕組み」を整備し、指定医の負担軽減も実現することが重要な検討テーマとなるのです。

オンライン登録スケジュールイメージ(難病対策委員会3 200131)



ただし、▼院内のネット接続可能な業務系システム(オンライン登録を行う場合にはこちらを使用することになる)とネット接続不可能な電子カルテ等システムとのデータ連携をどう確保するのか▼顕名データである難病等のデータベースについて、セキュリティをどう確保していくのか―など、さまざまな論点があり、議論は一筋縄では進みません。この点、委員からは「顕名のデータベースとして先行している『がん登録』制度に倣ってはどうか」との指摘が出され、厚労省で詳しい資料を基にさらに議論を進めることになっています。

全国がん登録のイメージ(難病対策委員会5 200131)



こうしたオンライン登録の仕組みが整備されれば、登録負担が減少し、軽症者のデータも集まりやすくなると考えられます。こうした悉皆性の高いデータをもとに病態解明や治療法開発などが進むこと、さらに、軽症者への福祉サービス提供の充実などを進めることで、軽症者自身が「データ登録に積極的になる」という相乗効果が生じることに期待が集まっています。



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