2023年4月分医療費、医科トップは「鼻アレルギー」、コロナ感染症は入院外では4位に、全体でも2位に後退―健保連
2023.10.17.(火)
今年(2023年)4月分医療費の上位疾患を見ると、医科全体では「新型コロナウイルス感染症」がトップを譲り、また医科入院外ではトップ3から陥落した―。
健康保険組合連合会(健保連)が10月12日に公表した「健保組合医療費上位30疾病に関する動向調査」(2023年4月診療分)結果から、こうした状況が明らかになりました(健保連のサイトはこちら)。
新型コロナウイルス感染症が医療費面でも「落ち着いてきている」いることを確認できるとともに、「乳がん」医療費が極めて大きなシェアを占めていることに改めて驚かされます。乳がん検診の早期受診をより強く勧奨し、早期治療を促すことが、医療費の適正化にとっても、女性自身のQOL向上にとっても、社会にとっても非常に重要です。
医療費全体のトップ疾患、コロナ感染症から鼻アレルギーに交代
健康保険組合(健保組合)は、主に大企業に勤める会社員とその家族が加入する公的医療保険です。健保組合の連合組織である健康保険組合連合会(健保連)は、さまざまな角度からレセプトを分析し各種提言を行うなど、従前より「データヘルス」に積極的に取り組んでいます。
今般、今年(2023年)4月診療分のレセプトをもとに、「健保組合加入者はどのような疾患に多くかかり、医療費はどの程度なのか」を分析しました。調査対象は1265組合の加入者::2641万6682人のデータです。
まず医科全体で見ると、医療費シェアトップ3は、(1)血管運動性鼻炎およびアレルギー性鼻炎(鼻アレルギー):医科医療費全体の3.95(1月に比べて1.03ポイント増)(2)covid-19:同3.30%(同6.96ポイント減)(2)((3)本態性(原発性<一次性>)高血圧(症):同2.95%(同0.11ポイント増)—となりました。上位3疾患で医療費の10.20%(同5.8ポイント減)を消費しています。コロナ感染症の医療費シェアが縮小している点が注目されます。健保連の別調査では「医療現場が通常に戻りつつある」状況も明らかにされており、今後も状況を注視していくことが重要でしょう。
医科入院、コロナ感染症が医療費第1位だが、シェアは大きく減少
次に医科の「入院」に限定して医療費シェアを見てみましょう。
トップ3は、(1)covid-19:医科入院医療費全体の4.06%(1月に比べて1.62ポイント減)(2)心房細動および粗動:同2.90%(同0.17ポイント増)(3)脳梗塞:同2.04%(同0.06ポイント減)—となり、上位3疾患で医科入院医療費の9.00%(同1.51ポイント減)を占めています。やはりコロナ感染症が大きく減少していることが伺えます。
なお、ほぼ女性のみの疾患である「乳房の悪性新生物」は依然として「男女計の医科入院医療費第4位」となりました(シェア1.92%)。「乳がん患者が依然として多い」状況を再確認できます。早期の治療が生存率向上にとって重要なことから、検診の適正受診、自己点検などをさらに啓発していく必要があります。
コロナ感染症が入院外医療費の第4位に後退、トップは鼻アレルギー
医科の「入院外」に目を移すと、医療費シェアトップ3は、(1)血管運動性鼻炎およびアレルギー性鼻炎(鼻アレルギー):医科入院外医療費全体の5.07%(1月に比べて1.41ポイント増)(2)本態性(原発性〈一次性〉)高血圧(症):同3.65%(同0.20ポイント減)(3)喘息:同3.37%(同0.66ポイント減)—となりました。上位3疾患で医科入院医療費の12.09%(同6.55ポイント減)を占めています。コロナ感染症は第4位(3.06%、1月から8.47ポイント減)となり、コロナ収束の状況が伺えます。
なお外来においても、「乳がん」が医療費シェアの上位疾患(第11位:シェア1.81%)に入っていることに改めて驚かされます。医療保険者も、こうした点を重く受け止めた対策(検診受診勧奨の強化など)を検討・実施する必要があるでしょう。
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