都道府県・市町村で作成する「認知症施策推進計画」、国の支援事業や専門家の作成した手引きなど十分に活用を—厚労省
2025.5.9.(金)
都道府県・市町村には「認知症施策推進計画」を策定・運用していく努力義務が課されている。この計画策定・運用にあたっては、国の支援事業や専門家の作成した手引きなど十分に活用してほしい—。
厚生労働省は4月30日に通知「認知症施策推進計画の策定促進について」を発出し、こうした考えを示しました(厚労省サイトはこちら)。
認知症基本法、都道府県・市町村に対し認知症施策を推進する計画作成の努力義務
認知症患者数は、高齢化の進行に伴って増加していきます。2018年には500万人を超え、65歳以上高齢者の「7人に1人が認知症」となり、2025年には675万人、2040年には802万人になると推計されています。
このため、2019年には認知症施策推進大綱が、2023年には認知症基本法が制定(2024年1月施行)され、認知症患者の意向を十分に踏まえた総合的な対策(認知症との共生、認知症予防など)を進めることとされています。

認知症高齢者数の推移(介護保険部会3 220516)
認知症基本法では、国(政府)に対し「認知症施策推進基本計画」の策定(認知症の人・家族等により構成される関係者会議の意見を十分に聴くことが要件)を義務付け、都道府県・市町村に対し「都道府県計画・市町村計画」を策定(認知症の人・家族等の意見を十分に聴くことが要件)する努力義務を課しています。

認知症基本法の概要1

認知症基本法の概要2
今般の通知では、都道府県・市町村が計画を策定するにあたっての留意点が整理されています。
▽都道府県・市町村が、地域住民に対して「新しい認知症観」や法の普及啓発を図るとともに、認知症の人や家族等の意見を丁寧に聴いて「新しい認知症観」に立った施策を推進するために、推進計画を策定する際の準備に係る経費を補助する「認知症施策推進計画に係る策定準備支援事業」が設けられている
→推進計画の策定に当たって、本事業の活用を検討してほしい
▽推進計画を策定、今後の認知症施策を展開する上で参考となる「手引き」が作成されており、活用を検討してほしい
▼2024年度の老人保健健康増進等事業「共生社会の実現を推進するための認知症基本法に基づく認知症施策のあり方に関する調査研究事業」による、「都道府県・市町村向け認知症施策推進計画策定の手引き」
▼同事業「共生社会の実現を図るための施策への認知症本人参画のあり方の調査研究事業」による、「都道府県・市町村向け認知症施策を本人参画でともに進めるための手引き」
▽厚労省では「都道府県・市町村における認知症施策推進計画の策定に当たっての考え方に関する座談会」(推進計画の策定に携わる都道府県・市町村の担当者向けに、計画策定の意義や留意点を、認知症の人・家族、自治体、専門職それぞれの立場で考えた座談会)を開催し、その模様を厚生労働省「YouTube」公式チャンネルに掲載している(動画サイトはこちら
→上記「手引き」と併せて活用してほしい
▽推進計画の策定に向けた準備や検討にあたり、都道府県・市町村の担当者からの個別相談を受け付ける相談窓口を設けており、積極的に活用してほしい
▽例年5月に厚労省が自治体に対して「認知症施策の取組状況」を調査しており、今年度(2025年度)は「認知症基本法に係る実施状況調べ」の調査項目として、「各自治体における推進計画の策定に向けた検討状況や計画策定時期等」も調べる予定である
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