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診療報酬改定セミナー2024 2024年度版ぽんすけリリース

病院の消費税問題を抜本解決し、2020年度に「新型コロナ等対応のための税制支援」を―日病

2020.9.14.(月)

病院の消費税問題について、診療報酬による個別完全補填や課税化転換などの抜本的措置を税制改正等で行うべきである―。

また、新型コロナウイルス感染症により病院経営は逼迫しており、2021年度を待たずに、2020年度中の「税制支援」を行ってほしい—。

日本病院会は9月8日に、こうした内容を盛り込んだ2021年度税制改正要望を加藤勝信厚生労働大臣に宛てて提出しました(日病のサイトはこちら)。

2019年度診療報酬プラス改定では、個別病院の消費税負担の不公平等は解消していない

日病の税制改正要望は次の8項目(国税5項目、地方税2項目、災害医療拠点としての役割と税制1項目)で、このうち▼新型コロナウイルス感染症が病院に与える影響を緩和するための税制上の手当ての総動員(▽控除対象外消費税の抜本解決(国税の(1))▽上記以外(国税の(3)(4)、その他)▼診療報酬の事業税非課税(地方税の(1))▼固定資産関連(地方税の(2))―の3点を「優先」的に措置すべき項目として強調しています。

2020年度税制改正要望と項目自体に目立った変更はありませんが、新型コロナウイルス感染症により、病院経営が極めて逼迫している状況に鑑みて、「税制上の手当てを総動員し、病院経営を支援すべき」との考えを強調したものとなっています。

【国税】
(1)控除対象外消費税について、個別病院ごとの解消状況に不公平や不足などが生じないよう、税制上の措置を含めた抜本的措置を講じる
(2)医療法人の出資評価で「類似業種比準方式」を採用する場合の参照株価は、「医療福祉」と「その他の産業」のいずれか低いほうとする
(3)医療機関の設備投資を促進するための税制を整備拡充する
(4)公的運営が担保された医療法人に対する寄附税制を整備する
(5)医療費控除制度を拡充する

【地方税】
(1)医療機関における社会保障診療報酬に係る事業税非課税措置を存続する
(2)病院運営に直接・間接に必要な固定資産について、▼固定資産税▼都市計画税▼不動産取得税▼登録免許税―を非課税あるいは減税とする

【地域医療拠点としての役割・税制に関する要望】
地域医療の重要な拠点としての役割を果たす病院が、指定感染症や検疫感染症、地震・台風などの自然災害により経営に甚大な影響を受けた場合、税制上の特段の手当てを早急に制定する



要望内容について。改めて少し詳しく見てみましょう。

まず国税(1)の「消費税」については、現在、保険診療(言わば診療報酬)については「非課税」となっています。したがって、医療機関等が物品購入等の際に支払った消費税は、患者・保険者負担に転嫁することはできず、医療機関等が最終負担しています(いわゆる控除対象外消費税)。この医療機関等負担を補填するために、特別の診療報酬プラス改定(消費税対応改定)が行われていますが、当然、「医療機関等ごとに診療報酬の算定内容は異なる」ことから、どうしても補填の過不足が生じます。2019年10月の消費税対応改定では、病院の種類別に補填を行うなどの「精緻な対応」が図られましたが、「病院の種類による不公平」是正にとどまり、個別病院の補填過不足を完全に解消することはできません。

この点、日本医師会では、なぜか「消費税対応改定で控除対象外消費税問題は解消した」としていますが、当然、個別病院の「補填過不足の解消」には至っていないことから、病院団体では、「控除対象外消費税問題の抜本的解消」を重点事項として継続要望しています(関連記事はこちら)。

病院では、▼物品購入量が多く(特に急性期病院)、補填不足が生じやすい▼クリニックと異なり、いわゆる四段階制(社会保険診療報酬の所得計算の特例措置で、概算経費率を診療報酬収入が2500万円以下の医療機関では72%、2500万円超3000万円以下では70%、3000万円超4000万円以下では62%、4000万円超5000万円以下では57%の4段階とする)などの優遇措置もない―という事情があります。

なお、日病では、▼個々の病院に生じる控除対象外消費税を完全に診療報酬で上乗せする仕組み▼診療報酬への消費税を「課税」方式に転換する仕組み(後に控除を認める)―とは実質的に差異はなく、公平性・中立性・簡便性の観点でいずれの仕組みとするかを決定すればよいと付言しています。



また国税(3)では、地域医療構想の実現や地域包括ケアシステムの構築を進めるとともに、新型コロナウイルス感染症対策を進めるためにも必要な設備投資を国全体で促す必要があるとし、具体的に次のような手当てを行うことを求めています。

▼新型コロナウイルス感染症に対応するための設備投資について基準金額を設けず、整備時点での「感染症対応」という効果が達成されることを踏まえて「即時損金算入」を認める
▼病院用建物・医療機器・医療情報システム等に関する法定耐用年数を短縮する
▼設備投資に係る控除対象外消費税等の即時損金算入を認める(現在は60か月の分割損金計上となっている)
▼病床転換改修費用の即時損金算入を認める
▼耐震基準を充足するための回収費用の即時損金算入を認める
▼2019年度の税制改正で導入された「高額医療用機器等の特別償却制度」(共同利用等を行う場合の優遇)について、適用対象機器を「管理医療機器および高度管理医療機器」などの包括的記載とする(現在は「非中心循環系アフターローディング式ブラキセラピー装置」などの細かい規定があり、利用がしにくくなっている)



一方、国税(4)では、社会医療法人や特定医療法人などの「公的運営が担保された医療法人」について、多様な財源確保を可能とするために、「寄附」を▼所得税法上の寄付金控除の対象▼法人税法上の損金―とすべきなどと要望。あわせて、公的医療法人へ不動産を贈与する場合、「贈与税」という障害をなくすため、租税特別措置法第40条の「譲渡所得税非課税申請」を当然に受けられるようにすべきとも求めています。



また優先項目にも盛り込まれた地方税(2)では、一般の医療法人においても、国公立・公的病院や社会医療法人と同様に、病院運営に直接関係する不動産について「固定資産税・都市計画税を非課税」とすることなどを改めて提案しています。

新型コロナで病院経営は逼迫、2021年度を待たずに税制上の協力な支援を

さらに「地域医療拠点としての役割・税制に関する要望」に関しては、新型コロナウイルス感染症や地震・台風などの大規模災害等で「甚大な経営上の被害」を被った病院に対し、次のような制度を早急に整備して、経営の下支えを行ってほしいと強く求めています。

▼感染症対応の補助金・助成金などの公的支援金を益金には算入しない
▼自然災害復旧のための補助金・助成金などの公的支援金を益金には算入しない
▼激甚指定された自然災害を原因とする受け取り保険金を益金には算入しない
▼指定感染症、検疫感染症、激甚災害の発生による損害を補填するために病院が受け入れる寄付金を益金には算入せず、寄付者には税制上の控除を認める
▼欠損金の繰戻還付制度の適用要件を緩和し、すべての病院が適用できるようにし、遡及請求可能期間を5年程度に大幅に拡大する
▼欠損金の翌年度以降への繰越控除期間の制限を撤廃し、欠損金の適用期限切れが生じないように時間を無制限とする

なお、こうした仕組みについて、日病では「2021年度の税制改正を待たず、2020年度中の法改正も含めた検討」を強く要望しています。

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